2017.07.18相続

<相続税対策>相続財産は親の土地だけ。複数の相続人で分割できない

Text : 黒木 達也

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親が亡くなったが、相続財産は狭い土地が中心で、金融資産など他の資産はごくわずか。こうした場合は、相続財産の分割方法が難しくなります。とくに、親の住んでいた土地と家屋などに限られると、相続財産が分割しにくいうえに、相続人の数が多い場合は、解決方法を見出すのが大変です。

相続財産を容易に3等分できない

相続財産が、実際に住んでいる家とその土地だけの場合、遺産の分割は結構苦労します。

相続人が複数おり、分割しにくい財産だけの場合が問題です。例えば、3人兄弟がおり、長男が親の土地に長男名義の家を建て親と同居、次男・長女は独立して住んでいる、こうしたケースの相続は厄介です。

長男は親の土地に自分の家を建て、親と同居していたため、自分が「すべて土地を相続したい」と考えます。他の2人は、それでは長男の取り分が多過ぎるとして、これには異議を唱えます。評価額を調べてみると、親の所有していた土地の評価額は約7千万円、そのほかに預金通帳があり、預金は約2千万円ありました。他に財産はほとんどないため、合計の相続財産は9千万円です。「土地は長男へ」と親と約束したと長男は主張しますが、他の2人は聞いておらず、正式な遺言状もありません。

遺言があっても遺留分以上の相続は不可

この場合、土地と預金を合計すると、相続財産は9千万円です。これを3等分して、1人3千万円が法定相続分となります。長男の主張どおり、長男が7千万円の土地を相続、他の2人が1千万円ずつの預金を相続するのでは不平等になります。「長男に土地を相続させる」という親との口約束をもとに、長男は土地の相続を主張し、他の2人は土地売却により現金化し3等分を主張しました。

こうした場合の解決法が最も大変です。かりに正式な遺言状があったとしても、長男が土地をすべて相続はできない理由があります。それは、次男と長女の取り分が、法定相続の「遺留分」(最低限相続できる権利で法定相続額の半額)を下回ってしまうためです。2人には、少なくともそれぞれの遺留分、1500万円を相続する権利があるからです。

多く相続した人が金銭的な保障を

すでに自宅を建てている長男は、土地の売却には賛成できない事情があります。すでに自分名義の建物があり、土地だけは長男が相続するのが最善です。これが無理なときは、別の方法で相続するかを決めなければなりません。同時に、親の意志を尊重し、長男が他の2人より多く相続するか、法定相続通りに3等分するか決める必要があります。

正式な遺言がなく、土地を長男が相続する場合は、次男と長女に対して相続額分の差額を長男が支払うのが最も合理的です。長男に経済的余裕があれば、この方法は最も有効です。もしすぐに支払いが出来ない場合は、協議のうえ年間の支払い額を決め、期間をかけて後払いする方法もあります。
とくに複数の相続人がおり、相続財産の中で土地・家屋の割合が高い場合、前もって話し合いをして、どのように相続するかを決めておく必要があります。とくに相続人のうち1人が不動産を全部相続する場合は、前もって他の相続人に支払う現金を準備しておくことが賢明です。こうした準備があれば、土地の売却という望まない解決策を取る必要はなくなり、相続がスムーズに進むはずです。

図表13

 

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黒木 達也

Text:黒木 達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職