2017.08.13相続

<相続税対策>生前から出来ることは準備しましょう

Text : 黒木 達也

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相続財産をめぐって親族間のトラブルも多く、事態を未然に防ぐためにも、関係者が事前に相談し「イザというとき」に対応したいものです。そのためは、①相続財産の評価を下げる、②生前贈与で若い世代への所得移転を進める、③トラブル防止のために「遺言状」を作成する、などの対策が必要です。

 
 

不動産所有で評価額を下げる


 

現金・有価証券などの金融資産は時価で評価されますが、不動産は2割程度は減額評価されるため、金融資産より不動産で保有したほうが有利とされています。ただし不動産の場合、すぐに売却できるかが不透明、将来評価額が下がる可能性がある、などといった不安もあり、慎重に検討する必要があります。売却が困難な土地をもつことは、金融資産で保有するより、条件が悪くなることも考えられます。

また相続する立場にある子に持ち家がない場合、親の家に同居することで相続税が80%減額される「小規模宅地の特例」の適用が受けられます。子が自宅を保有している場合は利用できませんが、相続税額を減らすために非常に有効な方法です。

もし空き不動産を所有していれば、それを貸すことでその不動産評価を下げられます。空き家や空室を貸すなどは有効な手段となります。空いた土地がある場合、アパートなどの賃貸住宅を建てる方法もあります。ただアパート建設は収入が確約されているわけではなく、よほどの好立地でない限り、空室対策に追われることになります。多額の借金をしてまでの建設は危険が伴い、相続税対策として賢明とは言えません。
 
 

生前贈与を上手く活用する

 

これは現実的な考えで、子供や孫に現金や不動産を贈与していく方法です。贈与税は基礎控除額が1人当たり年間110万円で、相続税に比べると低くなっています。しかし毎年続けることもでき、結果として多くの金額を、子や孫の世代への移転ができます。毎年贈与し続けることで、相続発生時の財産を大幅に減額することも可能です。さらに相続と違い、親族以外の誰にでも、贈与できるメリットもあります。

贈与税は、相続税とは逆に多少減税されており、とくに子供や孫(直系卑属)への贈与には、一般の贈与とは異なる特例税率(2015年分から実施)が適用され、課税価格が300万円を超える場合は有利になります。

 

贈与税の速算

そのため、出来れば契約書をつくり、多少の金額の贈与税を支払ってでも、次世代への移転を進めておくことは、相続税対策としても賢明です。

土地についても、贈与の方法により評価を下げることが可能です。例えば、道路に面した部分を一部贈与した後に、分筆して旗竿地など地形の悪い土地をつくることで、土地の評価を大きく下げることが出来ます。何もしない形の良い土地とでは、土地の評価額は大きく変わってきます。

教育資金については、孫への多額な贈与が非課税で移転できます。入学金や授業料は増加傾向にありますが、教育資金の贈与は1000万円以上でも非課税です。この背景には、現在高齢世代が保有する金融資産が非常に多く積み上がっており、教育資金などの名目で、若い世代への金融資産の移転を促そうとする国の政策の一旦を読み取ることもできます。
 
 

遺言状の作成を準備する


 
仲の良い家族だから財産配分で揉めない、財産自体が少ないので揉めることはない、と考えるのは早計です。イザとなると、少しでも多く欲しいという欲求が出たり、相続人の配偶者が口を出したりして、話がまとまらなくなるからです。

高齢の親を前にして、家族間で相続の話をするのをためらう方もいるかも知れません。しかし、親を交え親族で相続の件を話合うことは大切です。親の立場からみても、自分の意向を反映させるためには、話し合いと同時に、それを確認する意味での遺言状が有効になります。とくに相続人が多く、遺産の基本が親の住んでいた家と土地だけで分割しにくい場合は、前もっての話し合いは不可欠です。

遺言状がない場合は、法定相続となり法律通りに相続がなされます。かりに親の立場で、兄弟姉妹間で遺産額に差をつけたい、世話をかけた嫁にも財産を分けたい、といった自分の意志を反映させたいケースでは、正式な「遺言状」は必要になります。

相続人が複数いる場合に、「1人に全額贈る」という極端な遺言状は作成できませんが、多少なりとも自分の意志を反映した遺言状は作成出来ます。本人の手書きの遺言状は不備があると無効になるおそれがあります。多少経費はかかりますが、公正証書遺言をつくり公的機関で保管してもらいましょう。

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黒木 達也

Text:黒木 達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職