2016.12.23スペシャルインタビュー

エキスパートに聞く「仕事とお金の話」②

〈ジャズピアニスト〉アルバム制作費も節約の時代。プラハでは日本の1/4でした

Interview Guest : 木住野 佳子

Text : 杉田 宏樹

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Interview Guest

木住野 佳子

木住野 佳子(きしの よしこ)

東京生まれ。桐朋学園大学音楽学部でクラシックを学び、卒業後、新たな方向性をジャズに求め、1995年名門レーベルGRPよりアルバム『フェアリー・テイル』で日本人初のインターナショナル・アーチストとして世界デビューを飾り、以降、毎年アルバムをリリースする。2015年8月にはCDデビュー20周年を迎えユニバーサルミュージックより、通算19枚目のアルバム「Anthology -20 th anniversary-」をリリース。過去、スイングジャーナル誌ゴールド・ディスクを4回受賞している。
演奏活動は、日本以外にもニューヨーク、台湾、韓国、 インドネシアなどで 演奏活動を行い、人気、実力ともトップアーティストとしての地位を築く。
ソロ、ジャズ・トリオ、withストリングスなど自身のグループの他、noon、akiko、青木カレン、鈴木重子、藤原道山、白鳥英美子、上松美香、千住真理子とのコラボレーションなどの演奏、 映画音楽、TV-CMの作曲・演奏など多様な音楽性で活動を展開している。
優美で端正なそのピアノとサウンドはジャズの域を超え、独自の音楽性を確立し、人気、実力派ピアニストとして不動の地位を得ている。
Official site: http://www.kishino.net

2015年にデビュー20周年を迎えたジャズ・ピアニストの木住野佳子さん。節目を記念したアルバム『アンソロジー』は、初期の人気曲のセルフ・カヴァーで、ファンには嬉しいプレゼントになったのは、記憶に新しいところです。個人事務所の代表取締役も務める彼女に、仕事と暮らしのお金にまつわるお話をうかがいました。

95年のデビュー作『フェアリー・テイル』から2002年の『シエスタ』まで、アメリカでのアルバム制作が続きました。制作費など当時の“経済事情”について教えてください。

95年はまだ景気のいい時代の名残りがあって、私もGRP(アメリカの名門ジャズ・フュージョン・レーベル)から、初の日本人女性アーティストとして派手にデビューすることができました(笑)。ニューヨークで最初に入ったスタジオのピアノの状態が良くなくて、せっかく来てくれたミュージシャンに一度帰ってもらって、自分で好きなピアノを選んだ上で、改めて別のスタジオで録音。そんなやり方は今では考えられません。レコード会社からも数名のスタッフと評論家の方も取材のために同行されました。レコード会社に予算が十分にあって、経費を気にしないで制作できた時代でしたね。97年の『ランデヴー』はNYに3週間滞在して、プロデューサーのフィリップ・セスと打ち合わせをしながら、プリプロダクションにたっぷり時間をかけることができました。

2000年の『テンダーネス』はロサンゼルス録音でしたね。

有名なキャピトル・スタジオで、デヴィッド・キャンベル編曲・指揮のオーケストラと録音。ハリウッドの超一流の環境で、ゴージャス極まりない制作となりました。今では、これほど時間とお金をかけた制作は難しいでしょうね。

2004年の『プラハ』はチェコの首都で制作されました。

チェコからアメリカに亡命して、世界的な名声を得たベーシストのジョージ・ムラーツが、ストリングスを録音するならプラハがいい、と提案してくれました。レコーディングのセッティングもすべて彼が手配して実現。今はユーロですが、当時の通貨はクラウンで、日本よりも物価が安かった。すべて現地のミュージシャンを使っても、日本の1/4の制作費で済みました。スタジオ代が安価な割りに、ミュージシャンはもちろんのこと、エンジニアのクオリティも高かったです。プラハには有名なチェコ・フィルハーモニー管弦楽団があって、人々の日常生活と同じ場所に音楽がある環境だと感じました。

2008年に個人事務所、ヨシヨシ・ミュージックを設立されました。

それ以前に所属していたシエスタ・パブリッシャーズの時代から、TV-CMの作曲仕事を継続的に手掛けてきました。パナソニック総合セキュリティシステム、Let’s Note、ビエラ、カネボウ、JR西日本など。ジャズはCMのタイアップを取りにくいのですが、私はジャズ・ピアニストとしてはタイアップCM音楽をやっている方だと思います。

趣味などのお金の使い方はいかがですか。

私はあまりお金や物に執着がなくて、ブランド品や貴金属にも興味がありません。コレクションの趣味もないのです。趣味にお金を使うよりも、お金に余裕があれば海外旅行をしたいですね。デビュー20周年を区切りとして、これからは海外での活動にも力を入れていきたい気持ちがあります。

今、お金に関係した興味のあることは?

ポイントを集めるのが好きです。深川生まれの母親の血をひいたせいか、私にも庶民気質があるんですよ。今はiPhoneなので変わりましたが、以前のガラケーの時はお財布携帯を使っていました。Edyで支払ってポイントを貯める、というポイント・カードの使い方を学びました。日常生活でゲーム的に楽しむ感覚ですね。セゾンカードの永久不滅ポイントのようなシステムは、今では一般的になりました。楽天カードはすごくポイントが貯まります。1ヵ月で5~6000円くらい。事務所のスタッフに教わったことがあって、ポイント10倍デーや送料無料などを上手に利用しています。小さなお得感が得られるのがいいですね。今一番よく使うカードがSuicaですが、なかなかポイントが貯まらないんですよ。乗れば乗るほど安くなるようなシステムがあればいいのですが。SuicaがANA(全日空)と提携しているので、それからポイントを上手に利用できればと思っています。

航空機といえば、マイレージについてはいかがですか。

仕事の移動でANAを利用することが多い時期がありました。知らないうちに結構ポイントが貯まっていたので、自転車と交換。今もその丈夫な自転車に乗っています。

ステージではエレガントでパワフルなパフォーマンスを見せてくれる木住野さん。日常生活では電気をマメに消したり、旬のリーズナブルで美味しい食材を調理したり、カードとポイントを楽しみながら利用する、普通の女性と同じ感覚の持ち主でした。10月には単身スウェーデンに渡って、現地のビッグバンドとの共演コンサートが成功。世界を舞台にした活躍に期待が寄せられます。

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杉田 宏樹

Text:杉田 宏樹(すぎた ひろき)

音楽評論家。上智大学文学部英文学科卒業。現在「JAZZ JAPAN」「JAZZ LIFE」「JAZZ PERSPECTIVE」のレギュラー執筆、トーク・イヴェント等、ジャズ関係の仕事を多角的に展開。著書は「ヨーロッパのJAZZレーベル」「ジャズと言えばピアノトリオ」など。ヨーロッパ各地のジャズ・フェスティヴァルを毎年取材している。