2017.01.24スペシャルインタビュー

達人が教える「家庭でできる節約術」②

〈缶詰料理研究家〉缶詰に一手間かけることで、さらに美味しく手軽に楽しめるのです

Interview Guest : 黒瀬 佐紀子

Text : 澤登 彗 / Photo : 岡村 大輔

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黒瀬 佐紀子

黒瀬 佐紀子(くろせ さきこ)

フードスタイリスト、野菜ソムリエ、缶詰料理研究家。フードスタイリング、フードコンサルティング、食をテーマにした作品制作などを行っている、1997武蔵野美術大学工芸工業デザイン科卒業。2000年にイギリスのMiddlesex University BA Jewellery卒業。帰国後、デザイン事務所、和食・フレンチ店でのサービス業務、スタイリスト・料理研究家のアシスタントを経てフードスタイリストとして活動中。『缶つま』(世界文化社)、『さば缶ダイエット』(主婦と生活社)、『缶詰食堂』(文化出版社)など、缶詰料理研究家としての著書も多数。

安価で買えて日持ちがする上に、調理の手間もかからない。節約ライフの強い味方が缶詰です。最近は開けるだけでご飯のおかずやお酒のおつまみになるような、調理済みの商品も次々と開発されています。その火付け役となった、缶詰料理本『缶つま』の著者・黒瀬佐紀子さんに、家庭料理への取り入れ方や意外と知られていない製造工程までを伺いました。

『缶つま』を出されたのが2009年のことですよね。

はい。ちょうど、節約という観点から「家呑み」が流行りだしていた頃でした。食費がかさむ外食よりも、家でくつろぎながらひと息入れるというスタイルが見直され始めていたんです。缶詰というのはそもそも、開ければそのまま食べられる完成された状態の食材です。そこに一手間かけることでさらに美味しく楽しもうというのが、缶詰料理のコンセプトです。料理というよりは、缶詰と何か他の食材の組み合わせと言った方が適切かかもしれません。

どんな食材と組み合わせるのが良いのでしょうか。

缶詰には旨味や味がしっかりついているものが多いので、野菜や、淡白な豆腐などの食材がよく合います。例えば鯖味噌缶とお豆腐の組み合わせ。鯖味噌缶には、お味噌である程度味のベースができているので、豆板醤を加えてみるだけで間に麻婆風にもなります。普通に作ろうとしたら、何種類もの調味料を使わなければいけないところを、鯖味噌缶を使えば辛味を加えるだけで完成です。

調理時間としては、どのくらいですか?

数分あればできてしまいます。缶の汁に豆板醤を加えたものをベースにしてお豆腐となじませ、最後に鯖の身を入れて温めるだけですから。味が完成されているため、逆に手間をかけないほういいんです。グラグラと煮てしまうとお魚の中の味がどんどん抜けていってしまうので逆に美味しくなくなってしまいます。私が紹介している缶詰料理はどれも基本的に10分以内で出来るもので、材料を切って載せるだけのものだと、たった1分でできます。

自炊の時間が取れない人がキッチンに立つきっかけになりますね。

特に、魚類はぐっと取り入れやすくなりますね。一から捌くとなると大変ですし、なま物を買ってしまうと早く使わないといけない。缶詰であればそのプレッシャーからも解放されます。それから、和え物などの「あと一品」を作るのにも便利です。食材の組み合わせに全くルールはないので、「そういえば白菜があった。シャケと白菜で昆布和えにしよう」みたいに、家にあるもので好きにアレンジが可能です。

ひと手間でも加えるだけで豊かな気持ちになりますね。

お皿に移して、ちょっとたまねぎを刻んでのせてみたりだとか、ポン酢をかけてみるだけで、きちんとした気分になります。缶詰には独特の臭みがあることがあるので、ネギや大葉、生姜などの香味野菜と相性がよいのですが、そういった食材には日持ちするものが多くいちいち買いに行く必要がありません。調味料はカレー粉、七味や豆板醤など、冷蔵庫にあるもので十分です。味の濃い缶詰と組み合わせるには、卵やトマトが万能選手です。大和煮なんかのお肉系の缶詰は、卵焼きに入れると、かなり食べ応えのある豪華な一品になります。イワシの醤油煮は、トマトとさっと煮るととてもおいしいです。

捨ててしまいがちな缶詰の残り汁も料理に活用されています。

先ほど例に挙げた鯖味噌のように、あらかじめ調味料が入っているものはそのまま調味料になります。鯖や鮭などの水煮の缶汁も活かせますよ。魚からでた旨みなので、臭みを取り除くようなスパイスをつかって上手に料理に活用すると、いい出汁になるんです。しかも青魚の脂分であるEPAなどはすごく体にいい。あくまで出汁なので、他の出汁を加えないというのがポイントです。ツナ缶などによくある油漬けの油にも、旨みがよく滲み出ているのでおすすめですが、油なので適度な使い方をしたようがよいかもしれませんね。

防腐剤や保存料などの添加物の心配はないのでしょうか。

実は、缶詰の多くには保存料が使われていません。例えば魚の水煮の場合は、頭や内臓を取り除いた生の_魚を缶に詰めて塩を加えて蓋で密封し、大きな釜に何千個と並べて加圧して作ります。この過程で、中の菌がすべて死滅するため、保存料を加えなくても何年も日持ちするんです。つまり、鯖の水煮であれば、原料は鯖と塩だけ。缶の汁は魚からきた油分や水分なので、あとから加えたものでありません。しかも旬も時期に大量生産するので、魚の状態もよく、生産者の方いわく栄養価も高いそうです。生の魚のように値動きすることもありません。気軽に1缶、2缶ストックしておくだけで、すごく気が楽になりますよ。

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澤登 彗

Text:澤登 彗(さわのぼり けい)

フリーランス・エディター&ライター

経済、日本文化関係などを中心に活躍中。

 

 

岡村 大輔

Photo:岡村 大輔(おかむら だいすけ)

フリーランス・フォトグラファー