2017.08.18スペシャルインタビュー

エキスパートに聞く「仕事とお金の話」⑬

消費者の選択が省エネにつながる時代が到来。知識を身につけ、賢く電気とつきあいましょう

Interview Guest : 藤森 禮一郎

Text : 村田 保子 / Photo : 岩田 えり

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Interview Guest

藤森 禮一郎

藤森 禮一郎

中央大学法学部卒業後、電気新聞入社。電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。『電力系統をやさしく科学する』『知ってナットク原子力』『データ通信をやさしく科学する』『身近な電気のクエスション』『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など著書多数。

電力問題のコメンテーターとして、テレビや雑誌などで活躍しているフリージャーナリストの藤森 禮一郎さん。「ファイナンシャルフィールド」でも〈身近な電気の話〉をテーマに記事を執筆しています。そんな藤森さんに、電力自由化や再生可能エネルギーなど、最近気になる電気の話題についてお聞きしました。

 

電気技術のことをわかりやすくお伝えする

 

——現在の活動と、そこに至るまでの経緯をお聞かせください。

長年にわたり電気新聞の記者として活動してきましたが、東日本大震災の前年に退職しました。震災で大停電が起こったことをきっかけに、テレビや新聞、雑誌などで電力系統の解説をするコメンテーターとして活動するようになり、現在に至っています。在職中から何冊か本を執筆しており、一貫して電気技術のことを一般の方にわかりやすくお伝えすることを活動のベースにしています。なぜなら、日々起こるニュースを理解していただくためには、電気の知識も必要だからです。たとえば、ヒートポンプという技術は、冷蔵庫やエアコンに使われていてとても身近なものですが、その原理を知っている人は少ないでしょう。ヒートポンプとは、低温から高温へ、高温から低温へ熱をくみ上げて移動させる技術のことです。空気中や水中など身の回りに散在する熱を汲み上げて、大きな熱エネルギーとして建物や部屋を効率的に冷やしたり、温めたりすることができます。ヒートポンプは、空気熱、地中熱、河川水熱など様々な再生可能エネルギーを効率的に利用でき省エネルギー技術としても注目されています。そんなことを少しずつ知ってもらえればという思いで活動しています。

 

——電気の問題で多くの人が気になっているのが電力自由化です。全面自由化から1年以上経ちましたが、どう選べばいいのか分からないという声も少なくありません。スイッチング(契約変更)する場合の選び方のコツを教えてください。

現在、電力の小売市場には300社以上が名乗りを上げており、消費者にとっては選択肢の幅が広がりましたが、安くなりますと言われても、どの会社のどのプランを選べばいいか分からないというのが消費者の受け止め方だと思います。というのも、消費者は今まで自分が電気をどこにどのように使っているか意識していなかったと思います。家族構成や生活スタイルにより、電気の使い方は変わってきますから、まずは現状を把握することが重要。現在自分がどういう契約をしているか、そしてどんな使い方をしてきたかなどをチェックします。昼はあまり電気を使わないが、受験生がいるから夜は使用量が多いなど、家庭ごとの特徴が見えてくると思います。

スイッチングを検討する方法として一番簡単なのは「料金比較サイト」などで、価格を優先的に検討して一番安いところを探し、次にセット割引を選択します。ガス料金、インターネットやスマホの通信料金、ガソリン代、航空券代など自分の生活スタイルに最も適した組み合わせの割引サービスメニューを検討します。よく利用するポイントサービスが使えるかなどもチェックしてセット割引を選ぶのが良いでしょう。そうすると自分のライフスタイル、自分にとって最適な料金プランが見えてくると思います。

もう一つのポイントは、既存の電気会社も新しいプランをたくさん出していますから、そこをまず検討することで、スイッチングするよりも月々の料金が安くなることもあります。子どもが独立して家を出るなどのタイミングで、「契約電力(アンペア契約)」を50アンペアから30アンペアに変えてみるなど、ご家族の状況に合わせて見直してみてください。

 

新しい家電を選択することが節約につながる

 

——家庭の電気料金を節約するために、効果的な方法や考え方などがあれば教えてください。

基本は無駄を省くことです。照明をこまめに切るなどのちょっとした努力や心がけです。しかし、努力型の節約は限界がありますし、ストレスもたまります。そこで、家電を選択することによる節電がおすすめです。例えば、白熱灯をLEDに変えると電気料金は5分の1くらいになります。日本の家電製品には、「トップランナー方式」という省エネ制度が導入され、その年に一番成績がよかった製品の性能に基づいて目標値を定める方式が採用されました。これは素晴らしい制度で、それ以来企業間の競争が促され、継続して省エネ化が進められています。例えば10年前の冷蔵庫を使っている方なら、最新の製品に買い替えれば数年で元が取れてランニングコストの節約ができます。買い替え時期がきているなら、修理するよりも買い替えることをおすすめします。

また、エアコンなどは起動するときに多くのエネルギーを使いますが、設定温度になった後はそれほど電気料金もかかりませんから、付けたり消したりするよりも、つけっ放しのほうが、電気料金が安くなる場合もあります。

 

——日中はずっと外出している場合も、付けっ放しのほうが良いのでしょうか?

そこまで使わないなら消したほうがいいと思います。しかし、これからはAI技術が進歩し、家電にも組み込まれてきますから、人間が電源のオン・オフをしなくても、家人が帰宅するときに室内がちょうど良い温度になっていることが当たり前になるかもしれません。「HEMS(ヘムス)」という技術が広がりつつあります。「ホーム エネルギー マネージメント システム」の略ですが、家庭で使うエネルギーをトータルにコントロールして節約するためのシステムのことで、現在、開発と普及が進められています。電気メーターもデジタル化したスマートメーターに代わりつつあります。HEMSとつながると家電機器の自動制御が実現し、必要なエネルギーを使いながら省エネすることが可能になりますね。

新しい省エネシステムを選ぶことが省エネにつながる時代になると思います。賢い選択をして、電気と上手に付き合ってほしいですね。

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村田 保子

Text:村田 保子(むらた やすこ)

Financial Field エディター

 

 

岩田 えり

Photo:岩田 えり(いわた えり)

フリーランス・フォトグラファー

日本舞台写真家協会・会員。タレント・舞台俳優など人物写真を得意とする。