更新日: 2019.01.10 生命保険

まだまだ知らない生命保険の機能のナゾ

執筆者 : 新美昌也

まだまだ知らない生命保険の機能のナゾ
生命保険には、保険料自動振替貸付、払済(はらいずみ)など、さまざまな機能があります。これら機能を知らないために保障を失ってしまうことがあります。こういう事態にならないように「契約者貸付」制度と「介入権」について紹介します。
新美昌也

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

解約する前に「契約者貸付」制度を検討する

 
夫が、がんで余命1年と医師から妻が宣告を受けたとします。すでに、がんの治療費で貯金も底をつきそうな状態。夫が契約者・被保険者の終身保険(死亡保険金1,000万円)の解約返戻金が500万円溜っているとします。このようなケースでは、早まって保険を解約してはダメです。解約すると500万円は受け取れますが、死亡保険金1,000万円を受け取ることができなくなってしまいます。このようなときに役立つのが「契約者貸付」制度です。
 
<契約者貸付とは>
契約者貸付は、加入している生命保険の解約返戻金の一定範囲内(解約返戻金の80%など)で、保険会社から貸し付けを受けることができるしくみです。
 
<メリット>

契約者貸付を受けている間も、契約時の保障は変わりなく継続し、配当金を受け取る権利も継続します。自分のお金を担保にお金を借りるので、所定の書類を出すだけで簡単に借りることができます。また、生命保険会社によっては、自社や提携先のATM・CDから生命保険会社が発行するカードを使って貸付を受けることも可能です。通常の借入れと違い、借入金は、その全部または一部をいつでも返済できます。返済しないことも可能です。
 
<デメリット>

借入利率は契約の時期などにより異なりますが、一般的に予定利率が高い契約は貸付利率も高くなります。利率がいくらか、借りる前に確認しましょう。利息は毎年元金に繰り入れられ、元利金は年々膨らみます。返済しないことも可能ですが、元利金が解約返戻金を超えた場合、失効する可能性があります。
 
失効期間中に死亡しても保険金を受け取ることはできません。なお、未返済のまま、被保険者が死亡したときは、死亡保険金から、その元金と利息が差し引かれて支払われます。
 
上記のケースで余命6か月以内と判断された場合、死亡保険金の全部又は一部が受け取れるリビングニーズ特約(保険料不要)があります。受け取った生前給付金は非課税です。
 
ただし、保険の対象の方(被保険者)が亡くなった時点で、受け取った給付金が残っていた場合は、相続財産として相続税の課税対象になります。また、本人ががん告知をうけていないなど意思表示ができない特別な事情があるときに、あらかじめ指定した代理人(妻など)が本人に代わって保険金を請求できる「指定代理請求特約」(保険料不要)があります。これら特約はぜひ付加しておきましょう。
 

保険を差し押さえられたら「介入権」を行使する手も

 
解約返戻金の高い生命保険はこれ自体、財産価値があります。保険契約者にお金を貸している人(債権者)は、契約者が保険会社にもっている解約返戻金請求権を差し押さえ、保険契約を解約して、保険会社から解約返戻金を取り立てることができます。
 
<契約者のデメリット>

保険が解約されると、保険が消滅しますので、保障がなくなります。あとで、再加入しようとしても、健康状態によっては加入できない場合があります。また、年齢が上がっていますので、保険料も高くなります。
 
<介入権とは>

このような不都合を回避するため、差押債権者等が、保険契約を解除しようとしたときに、一定の条件のもと、保険金受取人が保険契約を存続できるようにしています。差押債権者等の解除に介入する権利ということで「介入権」といわれています。
 
<介入権者の要件>

 (1)保険金受取人であること
 (2)保険契約者でないこと
 (3)保険契約者や被保険者の親族または被保険者であること
 
<介入権行使のしくみ>

差押債権者等の保険契約の解除は、保険会社が、解除の通知を受けてから1ヵ月を経過した時に効力を生じます。
この1か月の猶予期間内に、介入権を行使する人は、保険契約者の同意を得て、解約返戻金相当額を差押債権者等に支払い、保険会社にその旨通知することにより、保険契約を存続することができます。
 
なお、猶予期間中に保険契約者・被保険者が死亡した場合、死亡保険金のうち解約返戻金相当額は差押債権者等へ、残りが保険金受取人に支払われます。
 
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。
http://fp-trc.com/

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