2017.11.24暮らし

失敗しない介護施設選び! 苦境が続く介護業界の実情は

Text : 黒木 達也

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介護業界は、現在かなり苦しい環境におかれています。最近では介護を希望する人の弱みに付け込んだ悪徳商法や、入居者に対する虐待事件なども目立ってきました。入居を考える場合の施設の選択は非常に大切です。現在、介護業事業者が苦しいのは、人手不足と介護報酬の引下げというダブルパンチを受けているからにほかなりません。

ますます深刻化する人手不足

 
介護を希望する人が増え続けている半面、介護を担う人材はかなり不足しています。「募集をかけても人材が集まらない!」「離職する人があとを絶たない!」といった事態が日常化しています。景気回復とともに社会全体の求人数が増え、その一方で若年労働人口が減少していることが大きく影響しているためです。
 
実際、公営の特別養護老人ホームでも、空きベッドがあるにもかかわらず、入居者に対応した介護職員が不足しているため、入居希望者を受け入れられない事態すら起こっています。職員が離職する最大の理由は、仕事の割には賃金が低いことにあるといえます。
 
人材不足は、地方に比べとくに都市部が深刻です。都市部では他の職業・業種の求人数が増え、就職する選択肢が広がっているためです。今後さらに介護を担う人材への需要は増加する一方で、供給が追い付かないという事態が進行することは間違いありません。介護現場の担い手として重要な資格である「介護福祉士」への受験者も、半数近くに減少しています。
 
今後は人材不足解消のために、AIを応用した介護技術の導入を進める、東南アジアなどからの外国人労働者への門戸をさらに拡大し就業しやすい条件整備をする、といった施策が不可欠になるといえます。
 

収益を圧迫する介護報酬の引下げ

 
2015年4月から介護報酬の引下げが実施されました。重度の要介護者の介護単価は若干引き上げられていますが、通常の介護サービス単価は約4・5%引下げになりました。これだけ引き下げられたのは珍しいことです。
 
ただし一方で、介護職員向けの待遇改善費は、約1・7%引き上げられました。介護職員の給与改善は緊急の課題であることが、これを見てもわかります。介護職員の数は、介護保険創設時55万人ほどだったものが、現在では190万人ほどに増加しています。しかし今後はニーズに追い付かず、2025年には40万人近くが不足する、とする厚労省の調査もあります。
 
介護報酬の引下げは、経営面では即利益率の低下につながり、経営感覚の乏しい介護事業所ほど苦境に立たされます。介護保険の創設時に、小規模で始めた施設ほど運営は非常に厳しくなっています。介護保険制度の定着に伴い、介護ニーズの急速な拡大を見込んで、異業種参入が活発となり、介護報酬の手厚さにも支えられ業界の規模も拡大、さまざまなタイプの会社が共存してきました。
 
しかし、そうした中でもしだいに競争は激化し、介護報酬の引上もなくなり、経営体力の乏しい会社は淘汰されるか、または他に吸収されるといった現象が起こってきました。2015年の介護報酬の引下げは、これを一層顕著にすることになりました。
 

進む介護業界の再編・統合

 
現在の介護関連の市場規模は約10兆円と想定されていますが、そのうち16年度の売上げが1千億円を超える企業は、わずかに3社(ニチイ学館、SOMPOケアグループ、ベネッセHD)に過ぎません。
 
それ以外の会社は、この3社より経営規模の小さい会社になります。3社を合わせた売上げシェアでも、業界全体の1割にも達しません。2018年には、さらに介護報酬が引き下げられることも予想され、十分なサービスを提供できない会社が淘汰されることは必至です。業界の再編と統合はさらに進むと思われます。
 
介護保険制度が発足した当初は、介護事業を専門に展開する大きな会社は以外と少なく、小規模で始めた個人企業などが多くありました。その後、成長分野と見込まれると、建設、警備、外食、保険、教育などの異業種からの参入が相次ぎ、乱立状態になってきました。
 
それぞれ強みを持つことが不可欠となり、在宅サービスか、通所介護サービスか、高齢者向け施設か、それぞれ特徴を生かした会社がシェアを伸ばしてきました。
 
とくに、有料老人ホームに代表される高齢者向け施設と、デイサービスに代表される通所介護は、ここ数年で市場規模が大きく拡大したことも業界に寄与しました。
 
2015年以降、高齢者向けの施設を手掛ける会社の再編が相次いでいます。

例えば業界大手となったSOMPOケアグループは、2015年に居酒屋チェーン「ワタミ」が経営していた介護施設を一括買収し、その後16年に同業のメッセージを買収、企業規模で業界第2位となりました。他社についても統合・買収は進んでいます。その意味では多くの会社が乱立していたものが業界として再編成され、企業規模やノウハウで優位性を持つ会社に、しだいに集約される傾向が強まっています。
 

施設入居はよく調べてからにする

 
本人または家族が介護施設への入所が必要になったとき、できる限り事前に調査し、できれば体験入居をお勧めします。在宅介護や通所介護では、都合により変更が可能ですが、施設入所はそう簡単ではありません。弱みに付け込んだ悪質な商法との遭遇や、職員による虐待行為などは、絶対に避けたいからです。
 
例えば親が急病で倒れ施設介護が必要になった際、公営の特別養護老人ホームは無理なので、センターで「すぐに入居可能な民間施設を探して!」と依頼して入居した結果、それが劣悪な施設だったことはよく聞きます。紹介センターが空き室の多い劣悪な施設と提携していたことも想像できます。明らかに介護サービスの劣化が、利用者にしわ寄せされている典型です。
 
これを防ぐには、自分の足で施設に出向き、居住スペース、医療スタッフの配置数、介護職員数や介護現場の実情などを、しっかりと確認してから入所したいものです。
 
悪質な業者に騙されないことも大切ですが、その会社の経営状態も最低限知っておくことも大切です。職員に親切で丁寧な介護をしてもらっていたが、経営がずさんだったために、入居後1年で会社が倒産し退去を迫られては大変です。
 
また買収などにあい経営母体が変わることで、追加の利用料金が発生したりすることも避けたい事象です。現在では倒産という事態になっても、入居一時金の一定額は返還されますが、その額にも限度があり、新しく次の施設探しは大変です。

まず入居を希望する施設が、公営の特別養護老人ホームなのか、民間の有料老人ホームなのか、サービス付き高齢者住宅なのか、予算や身体状況に合わせて決める必要があります。
 
最近増加の目立つサービス付き高齢者住宅は、比較的安価ですが介護面での多大な期待は出来ません。こうした事情を前提に、募集のパンフレットなどを鵜呑みにしないで、可能な限り入居を予定している施設の経営状態を、口コミを含め把握に努めたいものです。
 
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職

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黒木 達也

Text:黒木 達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職