更新日: 2019.01.07 年末調整

いまさら聞けない年末調整。いったい何を『調整』しているの?

執筆者 : 塚越菜々子

いまさら聞けない年末調整。いったい何を『調整』しているの?
所得税についてちょっと詳しい人なら、年末調整で何が行われているのかは聞くまでもありませんね。ですが、学校で学ぶことはほぼ無く、入社したからと言って説明を受ける機会はそうありません。言われるがままになんとなく出している。言われたものを出すと年末にちょっと多くお金がもらえる・・・と思っている方も多いようです。

とはいえ、いまさら「年末調整って何ですか?」と聞く機会はないもの。
知っている人にとっては当たり前ですが、意外に知られていない「年末調整」の基本をおさらいしましょう。
塚越菜々子

Text:塚越菜々子(つかごし ななこ)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士
お金の不安を賢く手放す!/働くママのお金の教養講座/『ママスマ・マネープログラム』主催
お金を貯める努力をするのではなく『お金が貯まる仕組み』づくりのサポート。保険や金融商品の販売を一切せず、働くママの家計に特化した相談業務を行っている。「お金だけを理由に、ママが自分の夢をあきらめることのない社会」の実現に向け、難しい知識ではなく、身近なお金のことをわかりやすく解説。税理士事務所出身の経験を活かし、ママ起業家の税務や経理についても支援している。
https://mamasuma.com

給与から引かれている税金は「所得税」

会社と雇用契約を結んで「給与」をもらっている場合、会社はその支払いごとに支払額に応じた税額を給与から差し引いて、国に治めることになっています。この、給与から差し引く所得税のことを「源泉所得税」と言います。差し引かれる金額はもらう給料の金額や、扶養している家族の数、他にどこかで働いているか、などによって変わりますが、『源泉徴収税額表』(※)に基づいて計算されています。
 
国税庁:平成29年分 源泉徴収税額表
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/zeigakuhyo2016/01.htm
 

源泉徴収額はあくまで「概算」

所得税の計算期間は1月1日~12月31日です。この期間の給与や賞与を全部合わせて計算してみて、本来納めるべき所得税が決まります。ということは、年の途中では本来いくら税金を払うべきかは確定していません。そのため給与から引かれている源泉所得税は給与が払われた時点での「概算の税額」なのです。
 
給与をもらっている方としては、給与から「仮払いしている」というイメージですね。
 
1月~12月の税金の計算の中で、その年の最後の給与(または賞与)が支払われると、その年の合計金額が出ます。
そこから、扶養家族の有無、生命保険や地震保険を払っているか、(給与天引き以外の)社会保険料を負担しているか、など個々の事情を年末に申告します。それらの個々の事情から税金を負担する能力をみて、納めるべき所得税が決まります。
 

毎月仮払いしている金額との過不足調整が「年末調整」

毎月の給与から「仮払い」している源泉徴収税額の合計と、本来納めるべき税金には差が出ることがあります。その差を調整することを「年末調整」と言います。
 
払いすぎていれば還付を受けることができ、支払いが足りなければ追加で払うことになります。一般的には年末調整の時に、特に何も控除の申告しない場合でも、わずかに「還付」を受ける方が多いので、「年末調整=お金がもらえる」と思っている方も多いですが、実は払いすぎていた自分の税金が返ってきただけなのですね。
 

年末調整で申告できない「個々の事情」もあります

年末調整は「サラリーマンの確定申告」ともよばれ、多くの給与所得者の方の税金の精算は年末調整で済んでしまうことがほとんどです。しかし、全ての従業員の個々の事情を加味して税金を計算するようでは会社の事務作業がパンクしてしまいます。そのため年末調整で申告できる項目は限られているのです。
 
年末調整でできない「雑損控除」「医療費控除」などを申告したい場合は、会社から発行された源泉徴収票を持参し、確定申告するとよいでしょう。
 
日本の所得税は「申告納税方式」です。
自らが責任をもって自己申告し・納税する決まりになっています。税金について学ぶ機会はなかなかありませんが、「知らなかった」という理由で損することの無いように、身近なお給料に関係するものから、知るきっかけにしていただきたいと思います。
 
Text:塚越菜々子(つかごし ななこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
https://mamasuma.com/

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