2017.05.23年金

60歳過ぎの退職。老齢年金と失業保険、どちらを選択するか

Text : 中嶋 正広

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会社などに勤務している場合は、通常は雇用保険に加入しています。職を失ったときに、失業中の生活扶助と就職活動支援の二つが、その主たる目的です。若い世代の人と同様、60歳以上の人が退職した場合も、いわゆる失業保険(正式には「基本手当」)を受け取ることができます。老齢厚生年金も60歳を過ぎると受給資格が生まれますが、年齢により受け取る金額が異なります。退職時にどちらを優先するか、判断を求められます。

老齢年金と基本手当は同時に受け取れない

雇用保険に加入できるのは、雇用期間が31日以上あり、1週間の勤務時間が20時間以上の人です。雇用保険料を支払います。60歳以上の人でも、この条件をクリアしていることが必要です。雇用保険に加入している人は、失職した場合に基本手当(いわゆる失業保険)を受け取ることができます。退職日の年齢や勤続年数により、受け取れる金額も変わります。

この「基本手当」(失業保険)を受け取れるのは、60歳以上65歳未満の人です。65歳以上の人は、基本手当ではなく「高年齢求職者給付金」を受け取ります。65歳の誕生日がボーダーとなり、それ以前であれば「基本手当」、それ以降であれば「高年齢求職者給付金」となります。老齢厚生年金は60歳以降受け取れますが、基本手当などを受け取ると、老齢厚生年金は受け取ることが出来なくなります。年金と保険とでは、制度自体の趣旨が異なるためです。
ハローワークで、受け取るために求職申し込みを行うと、その時点で、老齢厚生年金は全額支給停止になります。支給停止の期間は、求職の申し込みの翌月から、最後の失業認定日の月までです。以前は老齢年金と基本手当を、同時に受け取れた時期もありましたが、現在では、どちらかを選択する必要があります。

基本手当の受取額は

基本手当の計算は次のようになります。計算の基礎は、月当たりの賃金ではなく1日当たりの賃金です。最初に、退職直前6カ月の賃金を平均して1日当たりの賃金額(「賃金日額」)を計算します。退職日の年齢が60歳から64歳までの人は、計算された「賃金日額」の多寡により、45%から80%の率を掛けて、受け取る1日当たりの金額(「基本手当日額」)を出します。賃金金額が低い人ほど80%の高い掛け率になります。この基本手当日額に、被保険者であった期間に応じた給付日数(90日から240日)を掛けたものが、受け取る基本手当の金額になります。

図表1

65歳以上が対象となる「高齢求職者給付金」についても仕組みは同じです。「賃金日額」の基準がやや上がり、掛け率も50%から80%になります。給付日数が50日分と30日分だけと短くなることです。給付日数が最大で50日ですので、65歳未満の人が受け取る基本手当と比較すると、受取金額は少ない仕組みです。
65歳未満の人は、老齢年金の基礎年金部分は受給できないケースが多いと思います。とくに長い間雇用保険の加入歴のあり、新たな就職を希望しない人は、手続きなどに多少手間がかかりますが、最大240日間分の基本手当を受け取り、それが終了した後に、老齢厚生年金を受け取る方法が、有力な選択肢になると思います。
65歳以上の人は、老齢年金は基礎年金部分、厚生年金部分とも受け取れますので、65歳未満の人に比べ、老齢年金の受給額は多くなります。2ヵ月分の老齢厚生年金は受け取らずに最大50日分の手当を受け取るか、すぐに老齢厚生年金を受け取るかの判断は難しいところです。

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中嶋 正広

Text:中嶋 正広(なかじま まさひろ)

社会保険労務士