2017.09.08年金

在職老齢年金。60歳以上で仕事を続けると年金が減額されます

Text : 中嶋 正広

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 年金は早い人は60歳から受給できますが、最近では60歳以上の人の多くが、仕事に就いています。その場合、年金は全額受け取れるのでしょうか。あるいは、より多く受け取るために働き方を工夫することが必要なのでしょうか。
 

在職老齢年金の仕組み


 
 60歳以上の人で、仕事を続けながら受け取る年金を「在職老齢年金」といいます。その人が、何歳なのか、勤務形態はどうか、実際の給与収入はどのくらいか、などの条件によって、受け取る年金額が減額されることや、場合によっては、全く受け取れないこともあります。60歳以上の人が継続的に仕事するとき、正社員であれ嘱託社員であれ、厚生年金の加入職場で働くと、給与額に多寡によって、年金の一部もしくは全額支給停止となることがあります。基本は、賞与などを含めた年間の総給与額の12分の1(総報酬月額相当額=平均月収の意味)の金額と、受給できる老齢年金総額の12分の1(年金月額)の合計額がどのくらいの金額になるか、によって決まります。

 

 この二つの合計額がいくらになるかで、支給停止となるかどうかの基準になります。65歳未満の人の場合、このボーダーとなる金額は28万円です。しかし65歳以上になると、この基準が46万円に緩和されます。ですから総報酬月額相当額と年金月額をプラスした額が、65歳未満の人は28万円、65歳以上の人は46万円を超えると、老齢年金が一部支給停止になります。65歳未満の人は、定年延長などで現役並みの仕事をしている人も多く、給与水準が高ければ、28万円のラインを超えてしまう人は、かなり多いと思います。

 

年金の支給停止額はどのくらいか

 

 65歳未満の人は、総報酬月額相当額と年金月額の合計が、28万円以内であれば、老齢年金の支給停止はありません。年金は全額受け取れます。この二つの合計が28万円を超えると(総報酬月額相当額が46万円以下で、年金月額が28万円以下の場合)、その超えた金額の2分の1が、支給停止の対象になります(図表参照)。

中嶋元図表.xls

 総報酬月額相当額が46万円を超えたり、年金月額が28万円を超えたりすると、別の計算式が適用されますが、場合によっては、老齢年金が全額支給停止になるケースも多くなります。収入が多ければ年金に依存しない生活も可能で、年金の受給を遠慮してもらおう、というのが制度の趣旨だからです。65歳以上の人については、基準額が46万円に上がります。総報酬月額相当額と年金月額の合計が46万円以下の場合は、老齢年金の支給停止はありません。二つの合計が46万円を超えると、超えた金額の2分の1が支給停止になります。この仕組みは65歳未満の人と同じです。これまでは、70歳以上の人は、この対象ではなく年金の支給停止は受けませんでしたが、2015年から在職老齢年金の対象となりました。65歳以上の人と同じ仕組みが適用されます。

在職老齢年金が適用されない勤務

 

以上のように、厚生年金に加入していると在職老齢年金の対象になりますが、それを避ける働き方はあるでしょうか。その働く方としては、次のようなものがあります。

 

  • 独立して自営業者として働く。システム開発、ライターなど、主として個人で作業し、仕事の完成度により報酬を得る仕事を選ぶ。
  • 厚生年金未加入職場で働く。社員数5人程度の小企業は、厚生年金に加入しなくてもよいため、こうした職場で仕事をする。
  • パートやアルバイトなど、厚生年金に加入しなくて済む勤務形態を選択する。一定金額

 

以下の場合は、厚生年金に加入しなくてよい。

 

  • 役員であっても非常勤の役員に就く。非常勤のため、厚生年金に加入しなくてもよい。

 

 役所や私立大学は、これまで「共済年金」の仕組みがあり、在職老齢年金の制度はありませんでした。そのため、共済年金職場で働くことで、年金の減額や停止を防ぐこともできましたが、2015年から厚生年金と合体したため、この選択肢はなくなりました。役所などで働く場合も、在職老齢年金の対象になります。

 

 現在の在職老齢年金の仕組みになったのは、2005年からです。それまでは、65歳未満の人について総報酬月額相当額(平均月収)の2割が、一律に支給停止になっていました。必ずしも公平でなかったため、現在のような制度に改められました。今後も定年延長などの労働環境が変化すれば、制度の改変もあるかもしれません。

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中嶋 正広

Text:中嶋 正広(なかじま まさひろ)

社会保険労務士