更新日: 2020.12.23 株・株式・FX投資

持株制度ってどういう仕組み?どんなメリットや注意点があるの?

執筆者 : 岩永真理

持株制度ってどういう仕組み?どんなメリットや注意点があるの?
お勤めの会社に持株制度(持株会)があり、実際にその制度を利用している方もいらっしゃると思います。しかし、会社に勧められるままに加入しているだけで、その仕組みなどについて意外と知らないことも多いのではないでしょうか。
 
持株制度について、どのようなメリットや注意点があるのかを解説します。

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岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

そもそも持株制度とは?

「誰が」「どんな会社の株式」を取得するのかにより、いくつか種類がありますが、ここでは上場会社の従業員が自社の株式を取得する「従業員持株会」について解説します。
 
従業員が、給与天引きで一定額を拠出することで、単元株未満の自社株式でも取得できる制度です。さらに会社が奨励金などを付与することで、従業員の財産形成を助成します。
 
会社側のメリットは、自社の社員が株式を取得してくれることで、自社にとっては好意的と考えられる株主を一定数集めることができること等があります。
 
では、どのくらいの上場企業が従業員持株会制度を導入しているのでしょうか。
 
2019年11月の東京証券取引所の調査によると、2019年3月末現在で東京証券取引所へ上場している国内企業が3658社あるうち、大手証券会社5社のいずれかと従業員持株制度の事務委託契約を締結している上場企業は3206社にのぼり、東京証券取引所の上場企業の87.6%が従業員持株制度を導入していることがわかります。
 
同調査によると、従業員持株会の加入者1人当たりの平均保有金額は197万7000円、平均保有単元数は10.46単元となっています。
 

従業員のメリットとは?

一般の株式市場で自社株を買うことと比較すると、
 
1.単元株未満でも自社株に投資することができ、配当金も受け取れる
2.奨励金がある場合が多い
3.給与天引きなので、無理のない金額の範囲内で買うことができ、ドルコスト平均法(注)による投資ができる
 
(注)ドルコスト平均法とは、価格変動がある金融商品を、一定の期間内に一定額を投資する方法です。結果的に価格が高いときの購入量は少なく、価格が低いときの購入量は多くなるため、一定期間内を通して平均購入価格を見たときに、比較的割安な価格で買い付ける可能性が高いと考えられます。
 
ただし、3.の給与天引きの一定金額を一定期間投資する方法については、自社株に限れば持株会を利用しなければできませんが、金融商品という観点から見れば、投資信託などほかの商品で代替することは可能でしょう。
 
では、最大のメリットともいえる2.の奨励金はどのくらいもらえるのでしょうか。
 
前述の東京証券取引所の調査によると、奨励金は調査対象会社全体の96.6%にあたる3097社で支給されていて、出資金に対して4~6%未満を支給している企業が最も多く(38%・1217社)なっています。その中でも5%を支給する会社が1195社と大半を占めています。
 
次に多いのは、出資金に対して10~15%未満を支給している企業で、全体の35.7%・1145社です。
 

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従業員にとっての注意点とは?

自社株とはいえ、貯蓄とは違い株式投資なので、当然ながら価格変動があるため、いくら奨励金がついても株価によっては自社株を売却(持株会を退会)した際に、出資額を下回る金額になる(元本割れする)可能性があります。
 
また、持株会独自の注意点として日本証券業協会の「持株制度に関するガイドライン」によると、
●一度退会すると原則として再入会はできない
●退会時に保有している単元株未満の株式は会社に時価で買い取ってもらうか、追加で出資して単元株として受け取る
などの規定があります。
 
最も注意しなければいけない点は「リスク分散ができない」ことです。
 
自社の業績が良いときは、生活の糧である給与や賞与なども順調に支給されるでしょう。しかし、逆に業績が悪くなれば、減給や賃金カットなどの憂き目にあう可能性もあります。その際には、業績不振により自社株が無配になるだけでなく、現金化(売却)する必要性が生じても、株価が下落している可能性が高く、売却すれば損失を被ることが予想されます。
 
つまり、生活の基盤となる収入源と、その収入源に異変が起こったときに支えとなるべき資産が同じ方向性を持つことになり、自社の業績によるリスクが分散できないことが最大の欠点といえます。
 

まとめ

上場企業の多くは、従業員持株制度を導入しています。しかし、従業員にとっては、あくまでも株式投資の一環というドライな認識を持つことが大切です。
 
東証一部上場企業で2019年末に、1年で最も株価が下落した企業の下落率は−74.6%でした。株式投資とはそれだけ値動きの幅が大きく、預金金利と比べれば有利な奨励金(5%など)も、株価の下落によってあっという間に吹き飛ぶ性質のものであることがわかります。
 
また、現役時代に自社株を資産に加えることは、自社の業績リスクを増やすことになることも理解した上で持株制度を利用するようにしたいものです。
 

執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士