更新日: 2021.02.04 その他資産運用

金利が上がるっていわれてるけど、日本の場合はどうなの?

執筆者 : 重定賢治

金利が上がるっていわれてるけど、日本の場合はどうなの?
年が明けて、2021年1月、金利が上昇していくといわれています。そんなことをいわれても、コロナ禍による緊急事態宣言下においては、私たちにとってはあまりピンとこないかもしれません。
 
このようにいわれている理由をひもときながら、私たちに身近な生活の中で金利が上がるかどうかについて考えてみます。

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重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

金利はどうやって決まるの?

金利というと、私たちにとっては預金や住宅ローンの金利が身近な存在として挙げられるかもしれません。とすると、「金利が上がる!」といわれると、「預金金利や住宅ローン金利が上がるの?」と思ってしまいがちですが、その前に前提として、金利が上がる仕組みを理解しておかなければ、上がるかどうかの判断すらつきません。
 
まず「金利とは何か」ですが、いくつもある金利の概念を私たちは大ざっぱにひとくくりにして金利といっています。日常生活を営む分にはそれで構いませんが、金利の動向を探るという意味では預金や住宅ローンの金利を中心に金利の動向を探ろうとしても見えてこないのが実情です。
 
では、何を軸に考えていけばいいかというと、「10年物国債の利回り」です。10年物国債は、例えば国債の1つですが、償還期間が10年の国債です。
 
国債は、いわゆる政府の発行する借用証書のようなものですが国が国民や金融機関などにお金を借りる際に発行するものです。国としては、お金を借りて10年後に返しますという約束をします。
 
このとき、金利を付けなければ誰もお金を貸してくれません。この金利、つまりこの場合は10年間お金を貸してくれる代わりに付ける金利を10年物国債の利回りといいます。この利回りを中心にして、金利が上がるかどうかを予測するわけですが、国債と利回りの関係は次のようになっています。
 
国債価格が下がると、利回りは上がる。
国債価格が上がると、利回りは下がる。
 
国がお金をいっぱい貸してくださいという場合、国債をたくさん発行しますよね。国債の量が増えるわけですから、必然的に国債の価格は下がります。これは裏を返すと、国債の価格を下げなければ誰も国債を買ってくれない、つまり国債を買ってもらうために利回りを上げざるを得ないから利回りが上がるという意味です。
 
このようなことから、国債価格が下がると国債の利回りは上がるわけですが、逆もしかりです。
 

日本の場合、金利はなぜ上がらないのか

それでは日本の場合、10年物国債の利回りは何%ぐらいになっているでしょうか。2021年1月15日時点ではわずか0.03%/年です。ほぼゼロパーセントですが、これが日本の実情です。
 
問題は、「金利が上がるの?」ということですが、10年物国債の利回りを見ただけでも、日本の場合低すぎる状況が続いているため、上がるとは到底思えません。通常、金融緩和政策により市中に資金を大量に供給しているため、金利は下がっていきます。
 
コロナショックにおいて、それまでの金融緩和政策をさらに拡大し、資金供給量をさらに増やしているため、国債の利回りは低い水準を維持しています。
 
これが景気の下支えや景気の回復を企図している金融政策の狙いなので当然の結果といえますが、結論をいうと、まだしばらくの間金融緩和政策を維持するため、国債の利回りはそうそう上がらない、つまり金利は上がらない可能性が高いといえるでしょう。
 
日本の場合の問題点は実をいうと、コロナショックによる景気の冷え込みというよりも、それ以前から続いている、例えば、消費税増税による景気の落ち込みや将来増税されるだろうという先行き不安、公的年金制度に対する不信感に根差した老後不安など、税や社会保障制度の不透明性からくる需要不足にあります。
 
時系列的にいうと、アベノミクスによる大規模金融緩和の後、2016年にマイナス金利政策を実施し、事実上金融緩和政策を拡大し、その間消費税率を5%から8%に引き上げ景気が悪化、そして2019年10月に再び消費税率を8%から10%に引き上げたため、再び景気が悪くなり、その矢先のコロナショックです。
 
すでに大規模な金融緩和政策を実施している最中に、さらにコロナショックで金融緩和の規模を拡大させているため、今いわれていることは、日本の場合金融緩和政策だけでは必要な効果は得られず、財政出動をする必要があるという点です。
 
コロナショックの下支えとして財政出動を実行している最中ですが、報道されているような事業規模でなく、真水部分に着目すると、必ずしも多いとはいえないため、財政出動の効果はそれほど期待できず、金融緩和でエンジンをふかしながら、財政出動による景気下支え効果を狙っていると想定すると、金利はなかなか上がらないと考えるのが妥当ではないでしょうか。
 

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まとめ

金利は上がるの?
 
日本の場合は、税・社会保障制度の問題が国民の将来に対し、長期的に暗雲を立ち込めさせているため、デフレから脱却し実体経済の回復が家計に実感として及ばない限り、よくいっても、ほとんど金利は上がらないかもしれません。
 
「金利が上がる!」、「どうしよう」と拙速に捉えるのではなく、金融政策を踏まえ、日本の構造的な問題に着目してみると、そんなに慌てる必要はないように思います。失われた30年がさらに40年になるかどうかが、コロナショック後の令和の時代です。
 
しっかりと見定めながら家計運営を行っていきましょう。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)