2018.05.25 家計

「○○万円の壁」が女性の働き方にどう影響する? 知っておきたい税金と社会保険の話

Text : 石倉 博子

103万円の壁、106万円の壁、130万円の壁、150万円の壁、201万円の壁と制度が改正される度に様々な壁が出現していますが、それぞれの壁をどのくらい理解しているでしょうか?
 
ここで確認してみましょう。また、これらの壁を意識して、働き方に制限をかけることが、果たして良いことなのかどうかについても考えてみたいと思います。

○○万円の壁ってどんなものがある?

会社員の夫とパートで働く妻(その逆もあり)というケースを考えた場合、妻のパート収入によって、税金や社会保険料の支払いに違いが出てきます。その変わる金額の境を壁と表現したものが「○○万円の壁」です。
 
103万円の壁は150万円の壁に変わる
 
今までよく言われてきた103万円の壁ですが、税制改正により2018年の1月から150万円の壁に変わっています。
 
これまでは妻のパート収入が103万円以下であれば、配偶者控除が受けられましたが、これが2018年1月から150万円以下に変更となりました。
 
つまり、妻の収入が150万円以下であれば、夫の収入金額から配偶者控除として38万円引くことができ、結果、支払う税金が減るわけです。
 
しかし、実際はこの壁はあまり気にする必要はないと思います。なぜなら収入が103万超201万6千円未満なら「配偶者特別控除」というものがあり、150万円を超えても、段階的に少なくはなりますが、201万6千円までは控除があるからです。
 
この配偶者控除と配偶者特別控除には、夫の所得が1,000万円を超えると控除が受けられなくなる規定が加わりました。また900万円を超えると金額に違いが出てきます。
 
夫の収入と妻の収入による控除額を表にしてみました。
 


 
103万円の壁は所得税の壁として残る
 
配偶者控除が150万円に変わったことで103万円の壁はなくなるかと思いきや、所得税の壁として残ります。
 
給与収入の場合は、給与所得控除というものがあり、収入から65万円が控除されます。
 
103万円から65万円を引くと38万円となり、全ての納税者が無条件に控除される基礎控除38万円を引くと0円となるため、103万円までは所得税がかかりません。
 

社会保険の壁は意外と大きい

ここまでは、所得税に関係した壁でしたが、他に社会保険についての壁があります。
 
130万円の壁と106万円の壁
 
夫が会社員であれば、専業主婦の妻は夫の扶養に入ることができ、健康保険や年金の保険料を自分で納める必要はありませんでした。
 
しかし年収が130万円を超えると、扶養から外れるため、勤務先の社会保険に加入しなければなりません。これが「130万円の壁」です。
 
また、次の要件に当てはまる場合は、106万円以上で社会保険に加入しなければなりません。これが「106万円の壁」です。
 
・週の労働時間が20時間以上
・賃金月額が8.8万円(年106万円)以上
・勤務期間が1年以上(見込み)
・勤務先の従業員数が501人以上
※学生は対象外
 
1万円の差でこれだけ違う。パートで129万円を得た場合と、130万円を得た場合の税金と社会保険料をみてみましょう。
 


 
参考として、東京都を想定し、数値は概算として出しています。
 
年収の1万円の差が、手取りにすると153,000円もの差となりました。
 
社会保険料を支払うと、その分、所得から控除ができるため、所得税と住民税は減りますが、年間の社会保険料の金額が大きく、これだけの差になってしまいます。
 
ここだけを見ると、必死にお給料の調整をしたくなる気持ちもわかりますね。
 

扶養内で働くことのメリット、デメリット

ここまで見て、130万円の壁(一部の人は106万円の壁)が一番大きく立ちはだかっていることが理解できたと思いますが、女性が社会で活躍するという視点からすると少々この壁の存在は厄介に思えます。
 
メリット
子育て中の女性などは、扶養内で融通をきかせて働くことは、大きなメリットです。
 
週3日だけ働く、時短勤務をするなど働き方を選べたり、代わりを確保できるような簡単な業務につくことで、急なお休みや早退に対応できることなども重要です。
 
また、子育てを終え、社会復帰をしたいといった場合にも、いきなりフルタイムで働くよりは、まずはパートで体を慣らしてからと考えている人もいるでしょう。
 
デメリット
扶養内で働いた場合、将来の年金は基礎年金のみとなり、社会保険に入っている人に比べて、年金額は少なくなります。
 
たとえば年収130万円ほどで、厚生年金保険に1年加入していれば、ざっくりと7,500円ほど年金額が増えます。10年勤務すれば7万5千円、20年勤務すれば15万円と年金額は増えていきます。
 
勤続年数が増えれば、年収も上がってくると思われるので、実際はこれ以上に大きな差となってくるでしょう。
 
また、やりがいのある仕事に就きたいと思っても扶養内では難しいことも多く、どうしても補助的な仕事に限られてしまう傾向があります。
 
130万円超えて稼がないように、賃金を調整したり、時間を制限したりすることは、政府が掲げている女性の働き方改革にも逆行しているように思えます。
 

壁を超えたらもう意識しない

年収が増えることは誰にとっても喜ばしいことであるのに、こうした税金や社会保険と絡めると働き損が生じるために、あえて抑えてしまうのは、一時的には得に思えても、長い目で見ると損をしているかもしれません。
 
仕事をいうものは、長く続ければ続けるほどスキルが上がり、本来、賃金もそれに伴って上がっていくものです。一旦壁を超えたら、もう意識はせずに、将来の年金額を増やすためにも、どんどん収入を増やしていくのがいいのではないでしょうか。
 
もちろん、少しだけ働きたいというニーズもあるので、そこは否定するつもりはありません。
 
制度に振り回されず、自分にあったスタイルで働けることが一番だと思います。
 
TEXT:FPwoman 貯金美人になれるお金の習慣
石倉 博子(いしくら ひろこ)
FPwoman Money Writer’s Bank 所属ライター

石倉 博子

Text:石倉 博子(いしくら ひろこ)

FPwoman Money Writer’s Bank 所属ライター

1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®認定者
“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。
 
《 FPwoman 貯金美人になれるお金の習慣》
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