更新日: 2019.05.17 その他家計

【相談実例】奥さんが感じていた不安感が的中 夫の隠された借金が発覚。どうすればいいのか

執筆者 : 塚越菜々子

【相談実例】奥さんが感じていた不安感が的中 夫の隠された借金が発覚。どうすればいいのか
共働きの場合、夫婦それぞれが決められた費目の支払いを負担している、ということも多いのではないでしょうか。
 
基本的な固定費の引き落としは夫が、妻は学校関係と日常の生活費、など分担している家計もよく見かけます。それでうまく回っているうちは問題ありません。
 
ですが、うまくいっていない場合には一度すべてを明らかにして、全体像の把握をすることを勧めています。
 
今回は、いくら貯金ができているのかはっきりせず、不安感を感じていた共働きの奥様からの相談で、夫の借金が発覚した事例を紹介します。
 
塚越菜々子

Text:塚越菜々子(つかごし ななこ)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士
お金の不安を賢く手放す!/働くママのお金の教養講座/『ママスマ・マネープログラム』主催
お金を貯める努力をするのではなく『お金が貯まる仕組み』づくりのサポート。保険や金融商品の販売を一切せず、働くママの家計に特化した相談業務を行っている。「お金だけを理由に、ママが自分の夢をあきらめることのない社会」の実現に向け、難しい知識ではなく、身近なお金のことをわかりやすく解説。税理士事務所出身の経験を活かし、ママ起業家の税務や経理についても支援している。
https://mamasuma.com

夫婦別会計で借金があることには気付かなかった

今回紹介するのは正社員同士の夫婦です。小学生のお子さんが2人います。住宅ローンを組み、夫婦でスマートフォンを持ち、車を所有し、外食や旅行もし、子どもには複数の習い事もさせている。
 
外から見たら一見普通のどこにでもいる家庭のように見受けられます。
 
共働きで、ともに正社員である世帯年収は700万円程度。何でもできるわけではありませんが、暮らしていくのに困ることはないぐらいの収入はあります。
 
5年ほど前にご主人が転職してからは、奥様の収入が多かったので、家計の固定費の多くを奥様が負担していました。当時は特に問題もなく支払うことができていたとのことです。
 
ところが2年ほど前に奥様の仕事の勤務体系が変わり、収入が減ることになりました。そこで奥様が負担していた家計費の一部をご主人が負担するように変えたのです。
 
そのときにも特に問題は起きていませんでした。ところが、子どもが大きくなり支出が増えてきたので貯蓄が思うようにいかないと、相談に来たのです。
 
この時点では「貯金できない」ということに不安を感じていただけで、大きな問題を感じていなかったのです。
 

貯めているはずの児童手当がないことがきっかけで収支合算へ

貯金できないという悩みを解決するために、家計の全体像の把握に入りました。児童手当の話になったときに、児童手当はご主人の口座に振り込まれて貯めているという話でした。
 
生まれたときから貯めているわけではないとのことだったため、現在の残高を確認してもらうことになったのです。
 
そして、その確認の過程で「貯めてくれているはずの児童手当がない」ということが判明しました。貯めて使ってしまったということではなく、貯まっていなかったそうです。
 
貯めてくれている約束だったため、そこで夫婦の話し合いがもたれ、収支を合算してまずはどのくらいのお金がかかっているかを調べることになったのです。
 
給与明細、通帳、ご主人の保険。一つひとつ夫婦で話し合いながらお互いに開示し、家計の支出のうち多くの部分がわかってきました。
 

最後まで見せるのを渋っていたクレジットカードの明細で借り入れが判明

家計の支出の中身は、それほど派手なものはありませんでした。習い事が少し多めだったり、通信費を見直す余地はありましたが、客観的に見ても決して無理な暮らしではありません。
 
その割に、給与振込口座から毎月引き落とされるクレジットカードの引き落とし額が毎月10万円を超えているなど高額だったのです。
 
奥様からご主人に聞いてもらうと毎回「食費とか……」と答えが返ってくるとのことでした。確かにご主人がスーパーなどで食費に該当するものを購入したり、外食のときに支払ったりすることはあったそうですが、どう考えてもつじつまが合わない。
 
利用内容はWEBで閲覧するタイプのものだったため、ご主人が出してくれるまで見られませんでした。
 
細かい買い物の内容を聞かれるのは、疑われているようで誰だっていい思いはしないはず。そんな気持ちも理解を示したうえで、奥様は辛抱強く話し合いました。
 
無駄な買い物もしているようには思えない。職場と自宅を行ったり来たりで遊んでいる様子もない。
 
「何か困ったことがあるのなら、取り返しがつかなくなる前に一緒に考えさせて」と話した末に、3カ月かけて見せてもらった明細で、借り入れがあることがわかりました。
 

贅沢ではなく生活費の補填での借り入れがかさんでいった

一緒に暮らしている奥様が、贅沢品を買っているようには思えないと感じていたとおり、クレジットカードの利用の中身は食費や日用品などのちょっとしたものでした。
 
ネットでの買い物など少し多くは感じましたが、許容範囲です。
 
それよりも返済の金額がやはり大きく占めていたのです。借り入れの総額は80万円ほどでした。一度に大きく借りたわけではなく、贅沢なものを買ったわけでもなく、娯楽に使っていたわけではありませんでした。
 
ご主人は残業代などによって収入にムラがありました。そのため担当することになっていた固定費を払うと、生活費が足りないことがしばしばあったそうです。
 
そのときに数万円だけ借りたという、お金の積み重ねで残額が増えていったのです。
 
自分が担当することになった固定費が払えないとはいえなかった。妻の収入を増やすのが難しいことはわかっていたから自分が何とかしようと思っていた。とご主人は話していたそうです。
 

全体の暮らしを整えて「収支合算」で返済していく

80万円の借り入れは決して少ないものではありませんでしたが、もともと世帯全体で見た場合は借りる必要がなかったお金です。
 
幸いに奥様が少しずつ貯めていた貯金で返済することができる金額でした。一度に返すことはできませんが、支出をコントロールしていく見通しが立ったため、数カ月で完済できる運びになりました。
 
贅沢のためではなくとも、その場しのぎで本当はしなくてもよい借り入れをしてしまったことは問題があったかもしれません。
 
しかし、お金がないとは言い出しにくかったのではないか、コミュニケーションが足りていなかったと奥様も思うところはあったようです。
 
家計のお金はどちらかが背負うものではなく、家族全体で責任を持つ。そうすることでコミュニケーションも取りやすくなり、収入や支出の変化にも対応しやすくなるはずです。
 
ぜひこれからは支出も貯金も協力して進めていただきたいと思います。
 
Text:塚越 菜々子(つかごし ななこ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
お金の不安を賢く手放す!/働くママのお金の教養講座/『ママスマ・マネープログラム』主催