更新日: 2021.02.09 家計の見直し

うつ病で家計が苦しい! まずできることとは?

執筆者 : 前田菜緒

うつ病で家計が苦しい! まずできることとは?
筆者はファイナンシャルプランナーとして、さまざまなお金の相談を受けていますが、簡単に家計改善できないケースの1つが、病気を原因とする収入減のケースです。病気で働けず、収入が途絶えてしまった場合、苦しい家計状況からなかなか抜け出すことができません。
 
今回のご相談者(47歳女性)は、ご主人がうつ病で働けなくなってしまい、家計が苦しいとのご相談でした。とにかく病気を治すことが一番の解決策ですが、何も解決方法がないわけではありません。そこで、ご主人やお子さまをご相談者の扶養に入れましょうと提案しました。
前田菜緒

執筆者:前田菜緒(まえだ なお)

FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士

保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)

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扶養に入れて節税をする

ご相談者は共働き夫婦で、お互い扶養関係にありません。お子さまは中学生と高校生の2人。どちらもご主人の扶養に入っています。しかし、ご主人は会社を約10ヶ月休んで収入が少ない状況です。そのため、ご主人とお子さまをご相談者の扶養に入れれば、ご相談者は節税ができます。なお、ここでいう扶養とは、税法上の扶養を指します。
 
ここで、税法上の扶養について少し整理をすると、まず、配偶者を扶養に入れるにはいくつか条件があります。今回のご相談者の場合、ご相談者の所得が900万円以下、ご主人の所得が48万円以下(給与収入のみの場合、給与収入が103万円以下)という条件に当てはまります。そして、この条件をクリアするとご相談者は配偶者控除として38万円を所得から差し引くことができます。
 
所得税は、収入から経費を差し引いた儲けに対して課税されますが、配偶者控除38万円は経費にあたります。そのため、配偶者控除を適用することによって、経費が増え税金を減らせるというわけです。
 
同じように、お子さまを扶養に入れることでも節税できます。お子さまが16歳以上、合計所得が48万円以下(給与収入の場合は103万円以下)等の条件をクリアすれば扶養親族にできます。
 
ご相談者の場合、高校生のお子さまが扶養親族に該当します。控除額は38万円で配偶者控除と合わせると合計76万円です。この金額をご相談者の収入から経費として差し引けるということです。もちろん、この仕組みは住民税にも当てはまります。控除額は少し異なりますが、大きくは変わりません。
 

傷病手当金は所得になるの? いつまでもらえるの?

病気やけがで働けなくなり4日以上仕事を休んだ場合、健康保険から傷病手当金が支給されます。金額はおよそ月収の3分の2です。ご相談者のご主人も傷病手当金をもらっていました。
 
そのため、ご相談者は、傷病手当金は所得になるのか疑問に思ったようです。しかし、傷病手当金は非課税なので所得にはなりません。したがって、配偶者控除の条件である所得には該当せず、ご主人を扶養に入れられます。
 
次に、いつまで傷病手当金をもらえるか、についてですが、支給期間は支給開始日から1年6ヶ月です。ご相談者のご主人はすでに10ヶ月支給されており、今後も復帰時期が不透明なため、もし1年6ヶ月を過ぎてしまったらと心配されていました。
 
しかし1年6ヶ月を過ぎても、延長して独自給付をしている健康保険組合もあります。ご主人が加入している健康保険組合にそのような制度があるのか、一度調べてみることをおすすめします。
 

障害年金も視野に

初診日から1年6ヶ月を過ぎて、一定の障害状態にある場合、障害年金を受給できます。この障害認定については、1級と2級は日常生活において介護が必要な状態、3級は働くのが困難な場合に認定されます。
 
うつ病の場合、良い状態と悪い状態の波があり、悪い状態が頻繁に続いて日常生活や労働が制限されると認定されます。ご主人の場合、今後症状がどのようになるか分かりませんが、障害年金というセーフティーネットが用意されていることも覚えておきましょう。
 

その他検討できること

現在、ご相談者は住宅ローンを払っていますが、もし今後も収入減少の状態が続くようであれば、住宅売却も考えなければ、とおっしゃっていました。住宅ローンについては、まずは金融機関に相談されることをおすすめします。住宅ローンを滞納してからでは遅いので、その前に相談に行くようにしましょう。
 
一家の大黒柱がうつ病になってしまうと、一気に生活は苦しくなります。しかし、助けてくれる制度はありますから、まずはその道の専門家に相談することが大切です。あきらめずに最善策を見つけていきましょう。
 
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ