更新日: 2021.04.22 貯金

家庭の貯蓄額は昨年より増加って本当?消費行動の変化はどうなる?

執筆者 : 宮﨑真紀子

家庭の貯蓄額は昨年より増加って本当?消費行動の変化はどうなる?
総務省の家計調査によると、家庭の貯蓄額は昨年に比べて増えています。「コロナの影響で先行きが不安」との思いから、消費を抑えている家庭は多いですが、理由はそれだけではなさそうです。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

身近になった投資デビューも影響?

総務省が発表した家計調査によると、2人以上の勤労者世帯の金融資産は、前年から平均17.8万円増えたそうです(※)。そんなに増えたの? と疑問に感じます。一般的に貯蓄が増える要因は、「収入が増えた」または「支出が減った」が考えられます。今回の場合の“増えた理由”について、考えたいと思います。
 
まず「収入が増えた」要因として、1人一律10万円の特別定額給付金による臨時収入がありました。4人家族だと40万円です。コロナの先行き不安から、多くの人が使わずに貯金にまわしたと考えられます。
 
また、株価が上昇したことも要因の1つです。コロナショックで一時急落しましたが、その後じりじりと上昇を続け、今年2月には3万円の大台に乗せました。コロナショックで株価が急落した際に「買い時」と判断して、相応の利益を得た投資家の存在を思い浮かべますが、それだけではありません。
 
ここ数年、長期分散投資により老後資金を積み立てることが推奨されてきました。確実にiDeCoやNISAの利用者が増えています。
 
これらの制度をきっかけに投資について興味を持ち、投資デビューをした例も多いです。株式投資を少額から始められるツールが増えたことで、若年層の関心も高まっています。巣ごもり生活の中、PCやスマホで気軽に始めた結果として資産が増えたケースもあると思います。
 

今後、消費行動の変化はどうなる?

一方で支出はどうなったかというと、昨年の1月の消費支出28万7173円に比べ、今年の1月は26万7760円と約2万円減っています。
 
まず、外出自粛により、旅行などのレジャーや外食費が抑えられている点が大きく影響していると考えられます。それに加えて、出かける機会が減ったことで、被服費などのファッション関連の費用も激減。
 
飲食店だけではなく、アパレル関連の店舗が撤退した話も多々耳にするようになりました。ウインドーショッピングでブラブラしていて思わず衝動買い、この楽しい機会も薄れています。買い物時間の短縮により、購入する日用品や食料品にも変化が見られます。
 
SDGs(持続可能な開発目標)という言葉を頻繁に聞くようになりました。企業はこれを意識した経営を進めています。例えば、商品の種類を絞ることにより、廃棄ロスを削減しています。
 
消費者サイドが、たくさんの種類から時間をかけて選ぶことが難しくなったこともあり、定番商品が目立つラインアップに移行されています。この傾向を踏まえて、例えば食料品でも「定番商品を少しアレンジして楽しむ」レシピサイトをメーカーも提供しています。
 
個人的には消費に変化が生じている要因として、巣ごもり中にはやった「お片付け」の影響も大きいと考えています。昭和の時代は、たくさんのモノを持つことが豊かな生活の象徴でした。
 
令和の現在、書店やネットには、#シンプルな生活、#持たない暮らし、というキーワードの本が並びます。モノを片付けて整理することにより、これまで所有することによるストレスと向き合ってきた自分に気づいた人も多かったのではないでしょうか。モノを持つと維持管理が必要です。今後は、「少ないモノでアレンジを楽しむ」ような生活にシフトしていくと思います。
 
コロナの影響で「新しい生活様式」を強いられました。約1年がたち、環境の変化だけでなく、価値観の変化を実感されている方も多いのではないでしょうか。
 
(※)総務省統計局「家計調査報告書(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要/図Ⅰ-2-7」
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士