更新日: 2021.06.10 その他家計

家計に占める住宅費の割合、どれくらいが適切?

執筆者 : 菊原浩司

家計に占める住宅費の割合、どれくらいが適切?
マイホームの購入や賃貸住宅の利用で生じる「住宅費」は家計の中でも大きな支出額を占める費用です。住宅費は生活を送るのに欠かせない上、利用状況に関わらず一定額の支出が生じる固定費としての性質を持っています。
 
そのため、住宅費は、マイホームでも賃貸住宅でも一度金額を定めてしまうと後になって見直しを行うのが難しく、最初の設定が肝心です。
菊原浩司

執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

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住宅費の一般的な上限は年収の30%までは本当か?

住宅費の適正範囲は一般的には年収の30%といわれています。年収400万円の世帯ならば120万円までが適正となりますが、この指標に基づいて金額を決めてしまうと想定以上の負担となってしまう恐れがあります。
 
なぜなら、年収のうち、実際に使用できるのは年収から社会保険料や各種税金を差し引いた金額である「可処分所得」に限られる上に、この可処分所得は景気動向や社会保険料の値上げなどのさまざまな要因により変動するからです。
 
このため、現在の年収から固定的な費用である住宅費を決めてしまうと、可処分所得が減少した場合、住宅費が適正範囲を超えてしまいさらに家計を悪化させてしまう恐れがあります。
 
ですから、ボーナスや残業代などの変動する分を含めない手取り額の30%を適正範囲とすることをおすすめします。

マイホームと賃貸住宅。住宅費の範囲はどこまでか?

一口に住宅費といってもその具体的な内訳についてはさまざまな考え方があります。今回は住宅を持つ・借りることによって新たに生じる支出を住宅費として考えていきたいと思います。
 

【マイホームの場合】

マイホームにおける住宅費には、住宅ローンのほか固定資産税、水道光熱費、電話・インターネット代や火災・地震保険料などが含まれ、また、マンションなどの場合は管理費や修繕費なども住宅費として含まれます。
 
もっとも、住宅ローンは全額が費用となるわけではなく、一部は建物や土地に形を変えて残るため、将来的には資産活用によって老後資金などに転用できる可能性があります。

 

【賃貸住宅の場合】

賃貸住宅の場合は、マイホームと同じく水道光熱費や電話・インターネット代などが必要となるほか、月々の家賃や駐車場などの使用料、賃貸借契約の更新手数料、家賃保証会社を利用している場合はその保証料、入居時の礼金や退去時の原状回復費として使用される敷金などが住宅費となります。
 
マイホームの場合とは異なり、住宅ローン、固定資産税や修繕費は貸主の負担となるため、入居者が直接負担することはありませんが、家賃として間接的に負担することになります。
 
住宅費は家賃や住宅ローンの支払いだけでなく、広範な費用を含んでいます。適正な住宅費を見積もる場合はその影響を総合的に判断し、契約を進めることが重要です。

 

まとめ~単身者の場合はホテル利用も検討を~

住宅費の適正範囲は、手取り額の30%程度とすることをおすすめしますが、その際は住宅ローンや家賃だけでなく、住宅を持つ・借りることによって増加する支出を合算した上で住宅費を見積もるようにしましょう。
 
また、単身者で荷物が少ない場合などはビジネスホテルなどを利用してしまうのも検討してみてはいかがでしょうか。住宅費は利用の多寡にかかわらず一定の支出が生じる固定費としての性質を持っていますが、ホテルの場合は使った分だけの負担する「変動費」となり、倒産や失職などによる急な収入減少にも対応しやすくなります。
 
さらに、火災・地震保険や水道光熱費・インターネット代なども節約することができる上、清掃などの手間も省くことができるといったメリットがあります。住宅費を負担する際は、さまざまな条件を総合的に判断し、自身の生活スタイルに合った住居形態を賢く選択してみてはいかがでしょうか。
 
出典
※総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要」
 
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表