更新日: 2023.01.06 働き方

月45時間以上残業しちゃダメなの? よく聞く「36協定」とは?

執筆者 : 柘植輝

月45時間以上残業しちゃダメなの? よく聞く「36協定」とは?
「最近36協定という言葉をよく聞くけど、その意味についてはほとんど知らない」という方、いらっしゃいませんか? 中には36協定のことを、月45時間以上の残業が禁止される制度だと勘違いされている方もいるようです。そこで今回は、36協定とは一体何なのか、詳しく解説していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

36協定とは

36協定とは、雇用主が残業や休日労働を命じるために必要な労使間の取り決めのことです。本来、労働基準法においては1日8時間、週40時間を超える労働をさせてはならないとされていますが、36協定を結べば雇用主は労働者に残業や休日出勤を命じることができるようになります。
 
36協定を結んでいない残業や、36協定で定めた時間を超える残業は違法な残業となります。ちなみに、「36」協定といわれる理由は、これが労働基準法第36条に規定されている協定のためです。36時間しか残業できなくなるという意味ではありません。
 
なお、締結した36協定は労働基準監督署へ届け出ること、および従業員への周知を行うことが必要となります。
 
周知に関しては、従業員の見やすい場所への掲示の他、各個人へ書面で交付するなど、正しく周知されるようにしなければなりません。一部の従業員のみに周知したり、従業員が気付かないような方法で周知したりすることは労働基準法違反となり、30万円以下の罰金を科される可能性があります。
 

36協定は具体的に誰と誰が結ぶの?

36協定は労使間で締結しますが、実際に締結をするのは会社と従業員個人ではなく、会社と従業員の代表者になります。従業員の代表者と結ばれた36協定の効果は全従業員に適用されます。
 
従業員の代表とは、従業員の過半数の属する労働組合があればその労働組合が、そのような労働組合が存在しなければ、投票や立候補など民主的な方法で決定された方が該当します。
 

36協定があると45時間以上残業ができないのか

よく「36協定があると45時間以上残業ができない」と勘違いされることがありますが、実際にはそうではありません。
 
確かに、36協定を結んでも原則として残業は月45時間、年間で360時間までとされています。しかし、労使間でさらに特別な合意があれば、一定の要件の下、年720時間までの残業が可能になります。具体的には下記の要件を全て満たすことで、45時間を超える残業も可能であるとされています。
 

●時間外労働が年720時間以内
●時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
●時間外労働と休⽇労働の合計について、「2ヶ⽉平均」「3ヶ⽉平均」「4ヶ⽉平均」「5ヶ⽉平均」「6ヶ⽉平均」が全て⽉80時間以内
●36協定によって⽉45時間を超える時間外労働が、年6ヶ⽉まで

 
要は、年6ヶ月までであれば、36協定に基づいて月45時間を超える残業ができるということです。とはいえ、36協定を結んだからと従業員に月100時間を超えるような残業をさせてしまったり、月の残業時間が常に45時間を超えてしまったりしていると、事業主には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰則が科される可能性があります。
 
労使ともに、残業については注意を払い、36協定の範囲内で適正に就業できるよう業務効率化などを図る必要があります。
 

36協定は全ての雇用主と労働者が知っておくべき事項です

36協定を正しく締結し運用することは人材の定着につながり、労使ともに働きやすい環境を実現することに寄与します。36協定は45時間までしか残業できなくなるものではありませんが、青天井に残業が許されるという制度でもありません。
 
これを機に、労使ともに36協定について確認し、必要に応じて、法令の範囲内となるよう就労環境を改善していきましょう。
 

出典

厚生労働省 時間外労働の上限規制わかりやすい解説

 
執筆者:柘植輝
行政書士

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