更新日: 2023.01.30 働き方

「歩合給」も「固定給」も残業の計算方法は同じ? それとも異なる?

執筆者 : 柘植輝

「歩合給」も「固定給」も残業の計算方法は同じ? それとも異なる?
会社から支払われる給与の体系には歩合給や固定給があり、人によってはその両方が混在している方もいらっしゃいます。歩合給と固定給とが混在している場合、残業代はどのように計算されるのでしょうか。残業代の計算方法について、確認していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

歩合給と固定給


 
歩合給とは、自身の実績次第で変動する給与のことをいいます。歩合給は全ての会社・職種に規定されているわけではなく、営業に力を入れている会社や営業職によく見受けられます。
 
例えば、営業社員が月の販売件数によって上乗せ支給される部分などが該当します。それに対して固定給とは、月の売り上げなどに関係なく、一定時間の勤務に対して支給される一定額の給与のことをいいます。
 

残業の定義

残業代は、労働時間が1日8時間、週40時間を超えた場合に発生します。ここでいう労働時間に休憩時間は含まれません。そのため、よく見られる「9時から18時の勤務で1時間休憩」という場合は、労働時間が実働8時間となり残業代は発生しません。
 
なお、残業代には上記の1日8時間、週40時間を超えた部分に発生する法律上の残業代と、会社が定める定時を超えた部分に発生する労働の代価としての残業代とがあります。
 
例えば、所定労働時間が9時から17時で休憩が1時間という場合において、時給1000円の方が18時まで1時間残業したとしても、労働時間は8時間を超えていないため割増賃金が加えられた法律上の残業代は発生せず、単純に1時間分の労働の対価である時給1000円が残業代として支払われることとなります。
 

残業代の計算方法

残業代は固定給だけではなく歩合給についても発生します。ただし、両者の計算方法は異なっています。それぞれ、順に確認していきます。
 

固定給の残業代

固定給部分における残業代の金額は、手当などを除いた基本給となる部分に25%以上を上乗せした金額になります、つまり通常の固定給の125%(通常の時間当たりの給与部分が100%、割り増し部分が25%)以上となったものが固定給部分の残業代です。
 
例えば、時給1000円の人が1時間法律上の残業をした場合に支給される残業代は1250円以上となります。
固定給の残業代(1時間当たり)=時間給×125%
 

歩合給の残業代

歩合給も残業があった場合は残業代が発生し、時間当たり25%割り増しされます。ただし、歩合給は固定給と異なり成果によって変動する部分のため、通常の時間あたりの給与部分(固定給の残業代125%のうち100%に当たる部分)はすでに歩合給に含まれていると考え、割り増し部分の25%のみが歩合給の残業代となります。
 
具体的には、歩合給の額を総労働時間で割って1時間当たりの賃金を求め、それに割増率25%と残業時間をかけた額が残業代となります。
歩合給の残業代(1ヶ月当たり)=歩合給÷月の総労働時間×0.25×残業時間
 
例えば、歩合給5万円で月の所定労働時間が180時間の方が20時間残業したと仮定します。1時間当たりの歩合給の賃金は、5万円を総労働時間200時間(所定労働時間180時間+残業20時間)で割り250円となります。これに割増率25%と残業時間20時間をかけ、算出された1250円が歩合給部分の残業代となります。
 

実際に歩合給と固定給が含まれている場合の残業代を計算

では、具体例で歩合給と固定給を合わせた1ヶ月当たりの残業代を計算してみましょう。なお、今回は時間外労働のみを考え、休日労働や深夜労働に関しては考慮に入れないものとします。
条件は下記のとおりです。

●所定労働時間は180時間
●残業時間は20時間
●月給23万円(固定給18万円と歩合給5万円)

上記のうち、固定給部分の残業代は
18万円÷180時間×1.25×20時間=2万5000円
 
また、歩合給部分の残業代は
5万円÷200時間×2.5×20時間=1250円
 
よって、1ヶ月当たりの残業代の合計は2万6250円になります。
 

歩合給と固定給で残業代の計算方法は異なっている

歩合給も固定給も、残業した場合は時間当たりの給与と残業時間に応じて残業代が支給されます。しかし、歩合給部分と固定給部分とでは計算方法が異なっています。事業所を適切な労働環境とするためにも、労使ともに一度残業代が正しく計算されているか確認してみましょう。
 
執筆者:柘植輝
行政書士