更新日: 2023.02.28 働き方

「残業」が多い業界・少ない業界って?「月20時間」は平均と比べて少ない?

「残業」が多い業界・少ない業界って?「月20時間」は平均と比べて少ない?
働き方改革などにより、社会全体が残業を減らす傾向になってきていると感じる労働者も多いでしょう。しかし、自分の勤める企業の残業時間が業界内でどの程度多いのかについて把握している人はそれほどいないようです。残業が「月20時間」であった場合、これは、一般的には少ないのでしょうか。
 
今回は、統計データをみながら、一般的な残業時間や業種ごとの残業時間と年収との関係性について紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

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統計でみる残業時間

厚生労働省は「毎月勤労統計調査」を実施しています。この統計データをみると、産業別、就業形態別に労働者の残業時間の把握が可能です。
 

・月間の平均残業時間は?

令和4年12月分の同調査によると、調査対象となっている全産業の所定外労働時間、いわゆる残業時間は平均10.5時間となっています。
 
また、同様に11月分と10月分の所定外労働時間も10.5時間、同年9月分は10.2時間、8月分は9.4時間、7月分は10.2時間、6月分は10時間となっています。月ごとに差はあるものの、令和4年の下半期の月間平均残業時間は10時間前後です。「月20時間」の残業は平均と比較すると倍近くあり、多いといえます。
 

・就業形態によって異なる残業時間

同調査によると、一般労働者の月間の所定外労働時間の平均は14.3時間です。一方で、パートタイム労働者は2.4時間となっています。一般労働者は短時間労働者以外を指しているため、これを正社員とみなした場合、正規雇用の労働者は毎月14~15時間ほど残業していることになるでしょう。それでも、やはり「月20時間」の残業は多いといえそうです。
 

業種別にみる残業時間と年収との関係性

厚生労働省による「毎月勤労統計調査」では、業種ごとの所定外労働時間のデータも公表されています。それを基に、残業時間の多い業種と少ない業種、さらには年収との関係性についてもみていきましょう。
 

・残業時間の多い業種

令和4年12月分の同調査によると、所定外労働時間が最も多い業種は「運輸業、郵便業」で月間25.3時間です。次いで「情報通信業」の15.7時間が続きます。月間の所定外労働時間が14時間台の業種には「製造業(14.8時間)」「電気・ガス業(14.3時間)」「建設業(14.1時間)」があります。
 
ここで注目したいのが、「残業時間と年収の関係」です。国税庁が実施した「令和3年分 民間給与実態統計調査」によると、所定外労働時間が最も多かった「運輸業、郵便業」の年間平均給与は425万円でした。
 
「情報通信業」は624万円、「製造業」は516万円、「電気・ガス業(熱供給・水道業を含む)」は766万円です。また「建設業」の年間平均給与は511万円となっています。こうしたデータから、残業時間と年収は、必ずしも比例しないことがわかります。
 

・残業時間の少ない業種

月間の残業時間の少ない業種は「医療、福祉(5.3時間)」や「飲食サービス業等(5.5時間)」です。「生活関連サービス業」も6.9時間と少なく「卸売業、小売業」も7.5時間と平均を下回っています。その他「鉱業、採石業等(8.8時間)」や「教育、学習支援業(8.9時間)」も、残業時間の少ない業種といえるでしょう。
 
年間の平均給与をみると「医療、福祉」は407万円となっています。「宿泊業、飲食サービス業等」は260万円、そして「卸売業、小売業」は377万円です。サービス業の年間平均給与は369万円のため「生活関連サービス業」は、この程度の年収と捉えて問題ないでしょう。
 
また、調査機関が異なるため若干カテゴリーにも違いはありますが「鉱業、採石業等」と重なる「農林水産・鉱業」の年間平均給与は310万となっています。さらに「学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業」は521万円です。残業時間の少ない業種は年収も少ない傾向がみてとれるものの、明確な相関関係にあるとまではいえないでしょう。
 

平均残業時間は10時間前後で年収との強い相関性はない

統計データをみると、月間の平均残業時間は10時間前後となっており、短時間労働者以外の一般労働者でも14~15時間ほどとなっています。「月20時間」の残業は、平均と比較すると多いといえるでしょう。
 
また、一定の傾向はみられるものの、残業の多い業種が必ずしも年収が高いとも限りません。その逆もしかりです。就職先や転職先は、こうしたデータも参考にしつつ選択すると良いでしょう。
 

出典

厚生労働省 毎月勤労統計調査 結果の概要
国税庁 令和3年分 民間給与実態統計調査結果報告
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部