パート先で「106万円の壁が撤廃されるらしい」と言われました。扶養内か社会保険加入、どう選べばいいのでしょうか?

配信日: 2025.10.29
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パート先で「106万円の壁が撤廃されるらしい」と言われました。扶養内か社会保険加入、どう選べばいいのでしょうか?
2026年、「106万円の壁」が撤廃される予定です。いま扶養内で働いている方のなかには、「どの働き方がお得なの?」と迷ってしまう方もいるかもしれません。
 
今回は「106万円の壁」のおさらいと、働き方の選択肢を解説します。
三藤桂子

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFPを共同設立。

社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。

また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。

https://sr-enishiafp.com/

106万円の壁のおさらい

106万円の壁は、パートやアルバイトで働いている短時間労働者が、一定の要件を満たすと、社会保険(厚生年金保険・健康保険)に加入しなければならい収入の壁です。適用拡大により現在、下記5つのすべての要件に該当する人は社会保険に加入することになっています。
 

(1)給与が月額8万8000円以上
(2)週20時間以上勤務
(3)2ヶ月を超えて働く予定がある
(4)学生ではない
(5)従業員51人以上(2024年10月から)

 
8万8000円×12ヶ月=約106万円となるので、106万円の壁といわれます。106万円の壁を超えると、自身で社会保険に加入しなければなりません。すると手取り額が少なくなるほか、配偶者の収入等に影響をおよぼす可能性があります。
 
例えば、配偶者(夫)の会社では家族手当が月1万円支給されるとします。
 
妻が自身で社会保険に加入し、夫の扶養から外れると家族手当がつかなくなる場合、この例の夫婦では、夫の給与から家族手当の年額12万円と本人(妻)の給与から控除される社会保険料が年額約16万円(本人負担分)になるため、夫婦の手取りが年額28万円減少します(税金は考慮せず)。
 
上記の例から、扶養内を希望するのであれば、一定の要件(上記(1)~(5))に該当しない働き方、いわゆる「就労制限」し、社会保険に加入しない働き方を選びます。
 

年金制度の改正で106万円の壁が撤廃される

2025年6月に年金制度法が改正されました。法改正により、106万円の壁は最終的に撤廃されます。加入要件の見直しにより、「賃金要件(月額8万8000円以上)」と「企業規模要件(現在51人以上)」が撤廃されるからです。
 
賃金要件の撤廃は、2025年度の地域別最低賃金額が全国加重平均で1121円となりました。
 
これにより、週20時間働くと月額約9万7000円になります(52週/年×20時間/週÷12ヶ月×1121円/時で計算)。つまり、時給1016円以上の都道府県は月額8万8000円以上になるので、全都道府県が最低賃金の発行日を迎えると1016円以上になるため、要件(1)は撤廃となります。
 
次に企業規模要件は、現在51人以上から段階的に規模を拡大し、2035年10月には要件(5)が撤廃となる予定です。
 

扶養内か、社会保険に加入か

今後も扶養内で働きたいと考えているのであれば、前段のように就労制限等、働き方を考えなければなりません。働き方を検討する例として、以下の方法があります。
 

(1)雇用契約を週20時間未満にする
(2)従業員数が少ない会社(2025年度、従業員50人以下)に転職する
(3)業務委託契約、個人事業主になる

 
ただし上記を検討する場合、次のような注意点があります。
 

(1)最低賃金が引き上がったからもっと働きたい、収入を増やしたいと考えている人にはデメリットとなるでしょう。
 
(2)転職を検討している人にはメリットになるかもしれませんが、130万円の壁に注意が必要です。2035年10月までに、再度検討が必要になるでしょう。
 
(3)上記(2)と同様、130万円の壁があります。130万円の壁は130万円を超えると、自身で国民健康保険(介護保険を含む)と国民年金に加入します。一番避けたいと考える人が多いかもしれません。

 
社会保険に加入すると手取りが減るなどのデメリットがあるものの、傷病手当金や出産手当金が受けられる、将来の年金額が増えるなどメリットがあります。せっかく社会保険に加入するのであれば、さらに時間数を増やして働くことをおすすめします。
 

まとめ

現在、配偶者の扶養内で働いている人も近い将来、社会保険に加入する方向に法改正されています。いまは会社の規模要件に該当しない人も、いずれかは20時間の壁(扶養内)で働き方を検討することになるでしょう。
 
まずは、1日何時間、1週何日働ける(働きたい)のか家庭内で話し合ってみましょう。扶養から外れるのであれば、フルタイム(正社員)で思い切って収入を増やす働き方も視野に、またはパート等のままでも就労時間を長くすることで、扶養内の手取り額より多く収入を増やすことができます。
 
働きたいのに就労制限しているという人には、社会保険に加入する働き方をおすすめしたいです。時間数が増えれば当然ながら収入は増えます。就労時間を週20時間前後のボーダーラインで考えるのであれば、メリットとデメリットを参考に扶養内か扶養外か、専門家等に相談しながら検討してみてはいかがでしょうか。
 

出典

日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大
厚生労働省 年金制度改正法が成立しました
厚生労働省 令和7年度 地域別最低賃金 全国一覧
 
執筆者 : 三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

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