2018.03.18 相続

軽い気持ちでした口約束での贈与を撤回。その口約束は有効か?無効か?

Text : 柘植輝

日常の会話の中で「それ、欲しければ譲るよ」と軽い気持ちで言ってしまった時「やはり無かったことにして欲しい」と言えますか?それとも、渋々プレゼントしてしまいますか?

雑談中の口約束とはいえ、一度約束してしまった以上、契約として守らなければならないのでしょうか。

今回、あなたは知人であるAさんに対し骨董(こっとう)品を譲るという約束をしました。しかし、直前で譲ることをためらってしまったあなたは「あんな口約束は無効だ」と主張しました。

それに対し、Aさんは「口約束とはいえちゃんと約束したじゃないか!契約は成立しているはずだ!!」と反論してきたと仮定してご説明していきます。

果たして、あなたはAさんに対し、骨董(こっとう)品をプレゼントしなければならないのでしょうか。それとも、契約の無効を主張して贈与を免れることができるのでしょうか。

軽い気持ちで贈与の約束をしてしまったあなた

ある日、あなたの自宅へAさんが遊びに来ました。
 
その際、居間に置いてあった骨董(こっとう)品を見たAさんが「それをぜひ譲ってほしい」と言ってきました。
 
Aさんに言われるまでその骨董(こっとう)品の存在をすっかり忘れていたあなたは「その骨董(こっとう)品、欲しければあげるよ。ずっと放置していて汚れているし、来週の日曜に取りにおいで。きれいにしておくから」と言いました。
 
それに対してAさんは「本当!?譲ってくれてありがとう!来週の日曜日にまた来るよ!」と答えました。
 
ところが、後々考えてみると、その骨董(こっとう)品は10代の頃のあなたが購入したものでした。長年飾っていて、愛着のある一品でもありました。そして、やはりAさんに譲ることはできないと思うようになりました。
 
後日、Aさんは約束通り骨董(こっとう)品を取りにきました。そこで、あなたは「やっぱりあの話は無かったことにしてほしい。正式な契約として契約書を交わしたわけでもないし。」と言いました。
 
ところが、Aさんは「契約書を交わしてなかったとはいえ契約は有効だ。これはもらっていくから。」と、力ずくで持ち去ろうとしてきました。
 

書面によらない贈与は撤回することができる!

民法549条によると、贈与契約は、自己の財産を相手方に無償で譲り渡すことを約し、相手がそれを承諾することによって成立します。書面はもちろん、口頭であっても贈与契約は有効に成立します。
 
その一方、書面によらない贈与であれば、履行(約束の内容を実際に行うこと)前の部分について、各当事者が撤回することができると民法550条は定めています。
 
今回の場合、あなたは自己の財産である骨董(こっとう)品をAさんに譲ることを約束し、Aさんがそれを承諾しています。この時点で贈与契約は有効に成立していると言えます。(民法549条)
 
しかし、あなたとAさんとの間の贈与契約は口頭での契約であり、かつ、骨董(こっとう)品を引き渡していません。これは、履行がまだ終了していないということであり、民法550条に該当しています。
 
つまり、あなたは贈与の約束を撤回することができ、Aさんに骨董(こっとう)品を譲り渡すことを免れることができるのです。
 
また、契約の内容を一部でも履行してしまっていると、履行の終わった部分については撤回することができず、未履行の部分のみの撤回となります。
 
たとえ軽い気持ちでした口約束と言えど、贈与契約は有効なものとして成立します。日常生活の中でついうっかり「譲るよ」などと言ってしまわないように注意しておきましょう。
 
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー

柘植輝

Text:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士・2級ファイナンシャルプランナー

大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

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