最終更新日:2019.05.17 公開日:2019.02.27
相続

孫に渡る相続財産を、母親に管理させたくない

和男さん(81歳)には、一人息子の弘さんがいましたが、若くして病気で亡くなってしまいました。弘さんは、2年前に離婚しており、子ども(長男 光夫 3歳)の親権は元妻(雅子 35歳)にあります。
 
和男さんの、法定相続人は光夫君1人です。光夫君は、和男さんの血を引くただ1人の相続人であり、全財産を相続させたいと思っています。
 
ここで、問題は親権者の雅子さんです。
 
雅子さんには、浪費癖があり金銭的余裕がないのに高価なバッグを購入することなどがあり、それが離婚の原因にもなりました。和男さんは、離婚後も何かにつけて弘さんに金銭を要求している様子を苦々しく見ていました。雅子さんに相続財産を浪費させないようにしたいのですが・・・
 

 

未成年者の財産管理者

未成年者は、単独で法律行為ができない「制限行為能力者」に分類されます。未成年者の法律行為(契約など権利義務が発生する行為)は、法定代理人が代わって行います。
 
また、認知症患者の場合は、裁判所が法定代理人(成年後見人)を指定しますが、未成年者の場合は親が法定代理人です。
 
和男さんが死亡したとき、光夫君が未成年であれば、相続した財産は法定代理人である雅子さんが管理することになります。相続財産はあくまでも光夫君の財産ですから、雅子さんが勝手に使うことはNGなのですが、これを防ぐことは事実上困難です。
 
そこで、和男さんは、信頼する姪の芳子さん(39歳)に財産を遺贈し、光夫さんのために使うようにお願いしようと思い、専門家に相談しました。
 
ところが、専門家からは、「光夫さんには法定相続分の1/2の遺留分があり、遺言でもこれを侵すことはできません。雅子さんは、光夫さんの代理人として遺留分減殺請求を訴える可能性もあるので、芳子さんには大変な迷惑をかけることになります。」と言われました。
 

家族信託で親権者の財産管理を回避

 
そこで、和男さんは、信託契約を姪の芳子さんと締結し、受託者として財産を管理してもらうことにしました。
 
委託者-和男さん
受託者-芳子さん(和男さんが信頼する姪)
受益者-和男さん・光夫君
  
未成年者や認知症で判断能力がない人でも、家族信託の受益者になれます。ですから、芳子さんは教育費など光夫君のために必要なお金に限って給付することができます。雅子さんが使うことはできません。
 
・受益者
当初の受益者は、和男さんと光夫君です。和男さんも高齢で、財産管理が大変なので芳子さんにお任せします。万一、認知症になっても、信託財産の名義は芳子さんになっていますので、財産管理は全く支障ありません。和男さんは、心配ごとが解消されて一気に気持ちが軽くなり、残りの人生を楽しく過ごせそうです。
 
光夫君に対する給付は、和男さんの扶養義務の範囲内に限定しました。こうすることで、信託設定時に贈与税は非課税となります。和男さんが死亡した後は、受益権は全て光夫君のものになり、相続税が課税されることになります。
 
・信託の終了
信託の終了時期は、光夫君が24歳になるときとしました。信託終了時の残余財産帰属権利者は光夫君です。和男さんが残した財産は、この時点で光夫君が完全な所有者になります。
 
大学卒業して社会人としての生活も安定する頃と考えました。結婚や住宅取得などの資金として必要になれば、光夫君が自由に使うことができます。芳子さんは、残余財産を光夫君に引き渡した時点で、受託者としての役割が終了です。
 

 
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
AFP認定者、行政書士
 
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宿輪德幸

執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)

AFP認定者、行政書士

宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
相続専門の行政書士、FP事務所です。書類の作成だけでなく、FPの知識を生かしトータルなアドバイスをご提供。特に資産活用、相続トラブル予防のため積極的に「民事信託(家族信託)」を取り扱い、長崎県では先駆的存在となっている。
また、離れて住む親御さんの認知症対策、相続対策をご心配の方のために、Web会議室を設置。
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