相続発生から半年後、「税務署」から「相続税についてのお知らせ」が届きました。なにか不備があったのでしょうか?

配信日: 2025.04.28

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相続発生から半年後、「税務署」から「相続税についてのお知らせ」が届きました。なにか不備があったのでしょうか?
相続が発生すると、届け出や申告などやるべきことが多く、また期限もあるため、遺族にとっては、時間的にも精神的にも厳しい日々が続きます。
 
6ヶ月から8ヶ月経過し、やっと落ち着いた頃、税務署から「相続税についてのお知らせ」が届くことがあります。突然のことで驚きとともに不安になる方も多いようです。この「相続税についてのお知らせ」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
 
本記事で目的や対応方法、対応しなかった場合の影響についてお伝えします。
大竹麻佐子

執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)

CFP®認定者・相続診断士

 
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
 
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
 
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
 
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/

「相続についてのお尋ね」とは

税務署から届く書面には、「相続税についてのお知らせ」のほか「相続税申告等についてのご案内」と記載されている場合もあります。いずれも市区町村に提出した「死亡届」をもとに税務署が調査を行い、相続税の発生が見込まれる場合に送付されます。
 
相続税の申告の可能性がある相続人に送付されるのが「相続税についてのお知らせ」、より可能性の高い相続人に送付されるのが「相続税申告等についてのご案内」といわれています。ただし、選定基準など詳細は不明です。いずれも、「お知らせ(ご案内)」が届いたからといって、慌てる必要はありません。
 
なぜなら、送付の目的は「相続税申告を促すこと」にあるためです。また、一定の調査を経たうえで送付される「お知らせ(ご案内)」ですが、それが届いたからといって必ずしも相続税の申告が必要とはかぎりません。検討の結果、基礎控除内で相続税が発生しないケースも多くあります。
 
なお、なぜ税務署が被相続人の死亡を知ることができるのか疑問に思うかもしれません。これは、相続税法において、死亡届を受理した市区町村は、所管の税務署長に通知することが義務付けられているためです。
 

「お尋ね」を受け取ったらどうすればいい?

「相続税についてのお知らせ」が届くのは、前述の通り、税務署が死亡通知を受け取り、一定の調査を経た後であるため、相続開始から6ヶ月から8ヶ月後というケースが多いようです。
 
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヶ月以内に行うことになっています。すでに相続税申告の準備をしている場合には、申告期限までに相続税の申告と納付を行えば問題はなく、特に「相続税についてのお知らせ」に回答する必要はありません。
 
管轄税務署にもよりますが、送付される封筒には、(1)相続税の申告要否検討表、(2)相続税のあらまし、(3)相続税の申告のしかた、(4)相続税の申告のためのチェックシート等が同封されていることが多いようです。上記(1)の「相続税の申告要否検討表」は、評価額等を記載することで、相続税の申告の要否が判断できます。
 

相続税の申告が不要な場合には、同封されている「相続税の申告要否検討表」を提出

検討の結果、相続税の申告が不要な場合には、「相続税の申告要否検討表」の提出が求められます。「相続税の申告要否検討表」の項目は以下の通りです(※)。

(1)亡くなられた人の住所・氏名・亡くなられた日
(2)亡くなられた人の職業および勤め先の名称
(3)相続人の人数・氏名・続柄
(4)亡くなられた人や先代名義の不動産・評価額の概算
(5)亡くなられた人の株式・公社債・投資信託等
(6)亡くなられた人の預貯金・現金
(7)相続人が受け取る生命(損害)保険金や死亡退職金
(8)亡くなられた人の財産で(4)~(7)以外の財産(自動車・貸付金・骨とうなど)
(9)亡くなられた人から相続時精算課税を適用した財産の贈与を受けた人がいる場合、その財産
(10)亡くなられた人から亡くなる前3年以内に、上記(9)以外の財産の贈与を受けた人がいる場合、その財産
(11)亡くなられた人から「教育資金」または「結婚・子育て資金」の一括贈与の非課税の適用を受けた人がいる場合、その管理残額
(12)亡くなられた人の借入金や未納となっている税金など債務・葬式費用
(13)相続税の申告書の提出が必要かどうかについての検討

実際には、手書きではなく、国税庁Webサイト内の「相続税の申告要否判定コーナー」で必要事項を入力し印刷したうえで提出することも可能です。
 

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相続税が発生しない場合でも放置しない

税務署からの「お知らせ(ご案内)」に対しては、必ずしも対応する義務を負うものではありません。対応しないことで罰則もありません。とはいえ、相続税が発生しない場合でも、あらためて「相続税の申告要否検討表」をもとに確認し、申告不要である旨を返送することをおすすめします。
 
相続税の発生する可能性があることを把握したうえでの税務署からの「お知らせ(ご案内)」であるため、対応しないことで、後日税務調査の対象となる確率は高まることが推測されます。
 
税務調査の結果、相続税が発生することになった場合には、相続税だけでなく、遅れたことによる「延滞税」や「無申告加算税」のほか隠ぺいなどの悪意がある場合には「重加算税」が課されることもあります。
 

相続税が発生しないと思っていたけど、発生するかもと判明した場合

相続税は発生しないと思っていたものの、税務署からの「相続税についてのお知らせ」により相続税を支払う必要があると判明した場合、早急に相続税申告の準備を進める必要があります。
 
「お知らせ」が届く頃には、相続開始を知ったときから10ヶ月以内の相続税の申告期限が差し迫っている可能性が高いです。「お知らせ」には、こうした申告漏れ(忘れ)を回避する意図もあるのでしょう。
 

まとめ

税務署からの連絡は、問題ないと思っている人であっても不安や緊張を感じるものです。税務署において相続税が発生するだろうと把握している人に対して送付される「相続税についてのお知らせ」は、あくまでも、申告を促すことが目的です。相続財産を隠すなどの悪意がなければ、過敏になる必要はありません。
 
また、「相続税についてのお知らせ」は相続税がかからない人にも届く場合があります。
 
回答は義務ではありません(罰則はない)が、相続税は発生しないと思っていたものの、実は発生する場合もあるため、放置せず、慎重に対応することが大切です。いずれにしても、勝手な判断をせず、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
 

出典

(※)国税庁 相続税の申告要否検討表
国税庁 相続税の申告要否判定コーナー
 
執筆者:大竹麻佐子
CFP®認定者・相続診断士

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