最終更新日:2019.01.10 公開日:2017.12.14
保険

認知症の父がトラブルに 大切な家族のために備えておきたい保険とは

離れて暮らす認知症家族は悪徳商法の被害者になるだけではありません。突然、怒り出し、他人を傷つけたり、万引きなどの窃盗やものを壊したりして、加害者になる場合もあります。家族が損害賠償を請求されるケースもあります。このような賠償責任に備える保険があるのをご存じですか。

新型「個人賠償特約」登場

愛知県で認知症男性(当時91歳)が、徘徊中にJR東海の電車にひかれ死亡した事故を巡り、妻(当時85歳)と横浜市に居住する長男に対し、JR東海が振替輸送費や人件費などの損害を民法709条又は714条に基づき損害賠償金約720万円を求めた裁判が大きな関心を集めました。民法714条では、重い認知症患者のように責任能力がない人の賠償責任を「監督義務者」が負うと定めています。
 
最高裁は、2016年3月1日、今回のケースでは、妻と長男とも監督義務者でないとして賠償責任を否定しました。
一方で、監督義務者に当らなくても、監督義務者に準ずる立場であれば責任を負う場合もあると指摘しました。監督義務者に準ずる立場かどうかの基準として「認知症患者(精神障害者)との親族関係の有無・濃淡、同居の有無、日常的な接触の程度、認知症患者の財産管理への関与状況、心身の状況や日常における問題行動、監護や介護の実態など総合考慮して判断する」という考えが示されました。
 
つまり、状況によっては家族や認知症患者の財産管理を行う成年後見人等も責任を問われる可能性があります。
 
認知症の人が他人を傷つけたり、ものを壊したりしてしまったときなどに、法律上の損害賠償責任を負う場合に保険金が支払われるのが、個人賠償責任保険です。弁護士費用や訴訟費用なども保険金支払いの対象になります。自動車保険や火災保険などの特約で加入します。保険金額1億円で年間の保険料は1,000円~2,000円程度です。ひとつの保険で一定の家族が起こした事故も補償されます。
 
なお、保険会社の中には、約款で保険金を支払わない場合として、「被保険者の心身喪失に起因する賠償責任」を掲げ、認知症患者による加害事故を保険金支払いの対象にしていないものもあります。ご自身が加入している個人倍書責任保険を確認しましょう。
 
今回のケースのように認知症患者に責任がない場合、家族などが賠償責任を負うケースがあります。しかし、従来の個人賠償特約は、「本人、配偶者、同居している親族と生計を一にする別居の未婚の子」が対象でしたので、「監督義務を負う別居の親族等」は補償の対象外です。そこで、認知症事故訴訟の第二審判決後、損害保険会社数社が2015年10月から「監督義務を負う別居の親族等」も補償の対象に含めることにしました。
 
さらに、従来の個人賠償特約では、財物損壊を伴わない、電車の運行不能による賠償責任(振替輸送費用など)は補償されませんでしたが、2016年10月から、電車の運行不能による賠償責任も補償の対象としました。
認知症の親と離れて暮らしている家族は、新型「個人賠償特約」を検討するといいでしょう。
 
(参考)
平成26年(受)第1434号,第1435号 損害賠償請求事件
平成28年3月1日 第三小法廷判決
www.courts.go.jp/saikosai/vcms_lf/rinji_hanrei_280301.pdf
 

ミニ保険会社の「認知症保険」

上記の新型「個人賠償特約」は単独では加入できないので、この特約を扱っていない保険会社では加入できません。こうした中、2017年8月、某少額短期保険株式会社(ミニ保険会社)から、賠償責任に特化した認知症保険が販売されました。同保険は、年間約2万円の掛金で500万円まで損害賠償が保障されるプランと、年間約2万5千円の掛金で1000万円まで補償される2つのプランがあります。
 
保険期間は1年間です(更新あり)。損害賠償責任のほか、損害防止費用、請求権の保全・行使手続き費用、緊急措置費用、争訟費用、協力義務費用が支払われます。先の鉄道事故のように誤って線路に侵入し、電車を遅延させた場合の賠償責任も補償されます。子どもが契約者として加入し、親が被保険者として補償されます。
 
親の年齢に関係なく、加入できます。90歳でもOKです。また、親が認知症であっても、治療中でも加入できます。医師の認知症診断も必要ありません。別居でも構いません。
なお、ミニ保険会社は、破たん時、保険会社の契約者保護機構のような公的セーフティーネットがない点、掛け金が生命保険料控除の対象ではない点はご留意ください。
 
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。
http://fp-trc.com/

\ この記事を共有しよう!/

新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/



▲PAGETOP