最終更新日:2019.01.10 公開日:2018.12.13
保険

海外旅行保険をどうかけたらよい? ~海外旅行に行くなら注意したいこと その2

前回の記事では、海外における医療費は非常に高く、いざ海外で病気になったり、転倒して骨折したりすると、とんでもない費用がかかる可能性があることを説明しました。
 
それでは、海外旅行保険にはどんな形で加入すべきなのでしょうか?それについて、検討してみましょう。
 

入院・手術や家族駆けつけ費用は、海外旅行保険のどの項目でカバーされるか?

海外で入院・手術をしたり、家族が駆けつけたりした場合、海外旅行保険のどの項目でカバーされるでしょうか?
 
転倒・事故等による入院・手術費など……傷害治療
病気によるによる入院・手術費など……疾病治療
家族の駆けつけ、医師・看護師が付き添い医療搬送、遺体搬送費用など……救援費用
 
まず、これらのリスクをカバーするのに最も確実な方法は、治療・救援費用を無制限に近い金額(この場合は1億円)に設定して保険をかけることです。
 
この場合、それ以外の傷害死亡などを含め、クレジットカード付帯でないインターネット保険で購入した場合、保険料は以下の金額になります。(保険料については、大体のイメージを持っていただくための数字とご了解ください)
 
海外旅行保険の一例
期間10日間/行き先:北米
傷害死亡:3000万円
傷害後遺障害:3000万円上限
疾病死亡:1000万円
治療・救援費用※:1億円
賠償責任:1億円
携行品損害:30万円
保険料:6580円
(上記に加え、緊急歯科治療、旅行事故救急費用を担保)
※傷害治療、疾病治療、救援費用をひとまとめにして、治療・救援費用としたもの。
 
その1(前回の記事)で、アメリカやヨーロッパの主要都市で、盲腸で2~4日入院して手術すると70万円から300万円以上の費用がかかるとわかりました。
 
また、入院期間が15日から50日程度になり、かつ、家族駆けつけ、さらに医師・看護師が付き添ってチャーター機で医療搬送をすると、何千万円もの費用がかかった例もありました。
 
最悪の場合を想定しても、治療・救援費用が1億円あれば、かかった費用は何とかカバーできるでしょう。
 

持病や既往症のある人は?

ただし、ここで気をつけなければいけないことがあります。
 
上記の保険では、持病や既往症が海外旅行中に悪化した場合は対象にならないということです。
 
保険約款には次のような記載があります。
 
保険金をお支払いする場合、
―海外旅行開始後に発病した病気により、旅行終了後72時間を経過するまでに医師の治療を受けられた場合、
―海外旅行中に感染した特定の感染症により、旅行終了日からその日を含めて30日を経過するまでに医師の治療を受けられた場合、

とあり、持病や既往症が悪化した場合は保険の対象にならないのです。
 
それでは、どうしたらよいでしょう?持病や既往症がある方は心配ですよね。
 
金額は限定されますが、持病や既往症が急激に悪化した場合の入院費用、手術費用、救援費用などを補償する保険があります。
 
ただし、補償の上限は300万円程度のようです。これでも、2~3日の入院費用ならカバーできるということになります。
 
この保険の条件は次の通りです。
 
期間10日間/行き先:北米
傷害死亡:3000万円
傷害後遺障害:3000万円上限
疾病死亡:1000万円
治療・救援費用※:無制限(ただし、疾病応急治療・救援費用300万円限度)
賠償責任:1億円
携行品損害:30万円
保険料:1万1480円
(上記に加え、緊急歯科治療、旅行事故救急費用を担保)
※傷害治療、疾病治療、救援費用をひとまとめにして、治療・救援費用としたもの。
 
保険料は約2倍の1万1480円になっていますが、治療・救援費用が無制限になり、旅行期間中の持病・既往症の急激な悪化をカバーする「疾病応急治療・救援費用」が300万円を限度として、補償されています。
 
保険料は高くなりますが、持病・既往症のある方のリスクは、これである程度カバーされるということになります。
 

健康保険・国民健康保険で海外旅行中の傷害・疾病のリスクはどの程度補償されるか?

ここで、少し視点を変えて、健康保険・国民健康保険では、海外旅行中の急な傷害・疾病のリスクはどの程度補償されるかについて考えてみたいと思います。
 
健康保険・国民健康保険の海外療養費制度は、旅行期間中の病気やケガなどによりやむを得ず現地の医療機関で診療などを受けた場合に適用になります。
 
この制度を使えば、海外旅行中の持病・既往症の悪化による治療費用もカバーすることができますが、以下の注意点があります。
 
(1)保険求償の添付書類うち診断内容明細書、領収明細書などについては、日本語訳を要求され、翻訳者が署名する必要がある。
(2)日本国内で保険診療と認められている医療行為を受けた場合が対象となる。
(3)日本国内の医療機関などで同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額から自己負担相当額を差し引いた額が支給される。
 
上記の注意点を簡単に解説します。
 
(1)については、手間の問題です。
 
添付書類用の専用フォーマット(=様式)は、あるようですが、記述部分の「症状の概要」などについては、日本語訳が求められるようです。
 
場合によっては、翻訳を依頼する必要があるので、費用もかかります。
 
(2)については、日本国内で認められる保険診療以外の部分については求償不能です。
 
(3)について、その1(前回の記事)であったように、海外の医療費は一般的に日本より高いので、求償金額がかなり低くなる可能性があります。
 
例えば、海外で持病が悪化して2~3日入院して治療を受けたとします。
 
海外の医療機関への支払い額が100万円だったとしても、日本で同じことを行った場合の費用は50万円だと査定された場合、海外療養費制度から支給される金額は次の通りになります。
 
50万円×0.7=35万円(50万円のうち30%は自己負担額なので、支給されない)
 
よって、100万円-35万円=65万円が、支給されないことになります。
 
持病や既往症について補償するといっても海外療養費制度で支給される金額だけでは十分とは言えません。
 
このように、健康保険・国民健康保険の海外療養費制度だけで、海外旅行中の傷害・疾病のリスクを満足のいくようにカバーすることは難しいということが分かりました。
 
ただし、次の場合は、海外療養費制度は有効です。
 
○持病・既往症を補償しない海外旅行保険に加入していた人が、持病・既往症が悪化して海外で治療を受けた場合……上記(1)(2)(3)の制約はありますが、支払った金額の一部でも回収することができます。
 
○持病・既往症を補償する海外旅行保険に加入していたが、支払った費用が海外旅行保険の限度額(例えば、300万円)を超えていた場合、まず、海外療養費制度を求償します。
 
そして、海外療養費制度で支払われない残額に対し、海外旅行保険を求償します。こうすれば、限度額を超えた分も回収できる可能性があります。
 
例として、
海外医療機関への支払い額:400万円
日本で同等の治療を行った場合の査定額:200万円
海外療養費制度で支払われる金額:140万円(200万円×0.7=140万円)
海外療養費制度で求償不可能な金額=持病・既往症を補償する海外旅行保険での求償額:
260万円(400万円-140万円=260万円)<海外旅行保険の求償限度額300万円
 
ということで、海外療養費制度と海外旅行保険を合わせれば、支払い額400万円を全額請求することが可能になります。
 

まとめ

今回は、海外旅行の大きなリスクである旅行中の傷害・疾病をどうカバーするのが適切か?についてみてきました。
 
次回のその3では、これらのリスクを、クレジットカード保険でカバーすることはできるのか?ということについて、お話をしてみたいと思います。
 
Text:浦上 登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
 

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浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
 
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
 
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
 
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。

https://briansummer.wixsite.com/summerarrow



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