寿命が延びると、皆さんの人生におけるマネープランにも密接に影響してきます。今回は特に影響が大きい生命保険との関係をひも解いていきます。
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執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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「平均寿命」と「平均余命」
まず定義のお話です。よく「平均寿命」という言葉を耳にするかと思います。この言葉、実は読者の皆さまが「今この時点から、平均であと何年生きるか? 」という可能性を示すものではありません。
「ある年齢の人がそこから何年生きるか? 」という可能性を示すデータは「平均余命」と言い、0歳児の平均余命のことを「平均寿命」と言います。
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生命表の動きと生命保険の関係
直近の完全生命表は平成29年3月1日に公表されました。
この度の改定を受け、各生命保険会社は昨年から今年にかけて、各保険商品の保険料の引き上げや引き下げ、あるいは据え置きなどを実施しました。このことはすでに報道などでご存じの方も多いと思います。
では、どのようにして保険料の引き上げや引き下げにつながるのか、仕組みを解説していきます。
■死亡保険
死亡保険は保険料引き下げの「傾向」でした。こちらのロジックは「寿命が延びる」=「1年間に死亡する人数が減る」という形になり、保険会社側からすれば保険金を払う可能性が下がるということになります。それゆえに、保険料が引き下げ「傾向」になりました。
■医療保険
医療保険は保険料引き上げの「傾向」でした。死亡保険とは逆に「寿命が延びる」=「病気にかかるリスクは上がる」となります。保険会社は保険金を払う可能性が上がるため、保険料が引き上げの「傾向」になりました。
なぜ「傾向」なのか?
これまで保険の値上がり、値下がりの「傾向」のお話をしました。なぜ「傾向」なのかを最後に簡単に説明します。
■保険料の内訳
「保険料」=「純保険料」+「付加保険料」という作りになっています。
今回の完全生命表の改定によって影響を受けるのは「純保険料」の方で、「付加保険料」の上下は各保険会社の企業努力に委ねられています。
「純保険料」が寿命の延びの影響を受ける理由は、「収支相当の原則」というものがあるからです。非常に簡略化して例えれば、ある集団(100人)の中で毎年1人が亡くなったとして、その集団の中で全員がお金を出し合って保険を作る場合
「100人×保険料1万円=1人×保険金100万円」
という計算でないと、保険が成立しなくなってしまいます。
寿命が延びることで、右側の人数が死亡保険では減少し、医療保険では増加することになります。そのため、この原則を成立させるために、保険料の増減または保険金の増減という調整がなされるのです。
一方で「付加保険料」は、各保険会社がコスト削減などのさまざまな施策で調整が可能なため、一概に「純保険料」の増減=「保険料」の増減につながらず、「傾向」としか言えないのです。
今回の完全生命表の改定においても、保険会社、保険の種類によっては、保険料引き上げや引き下げを行わなかったところもあります。今後の完全生命表の改定においても、一概に引き上げ、引き下げではなく、あくまで全体的な「傾向」でこのような形になると言えます。
寿命という視点からの保険の選び方・見直し方
寿命は今後も伸びていくと言われています。世界での研究では寿命の上限は無限という説もあります。
民間の生命保険に加入する視点から見ると、上記で解説したように死亡保険は値下がり、医療保険は値上がりする「傾向」というのは今後も当分は変わらないでしょう。
ですので、死亡保険については年齢の上昇による保険料の上昇と、平均寿命の延びによる保険料の減少の差によって、適宜見直しをしていく方がよいかもしれません。
一方、医療保険については、年齢の上昇と、平均寿命の延びによる上昇、両方の影響を受けて保険料が上昇する可能性が高くなります。すでに加入しており、保障内容が今後の公的医療保険制度の変化を加味したうえでその上乗せとして十分であれば、いわゆる「お宝保険」に変化する可能性もあると言えます。
このような仕組みがありますので、保険に加入されている方は「今の保険がどうなっているのか? 」ということを、まだ保険に加入されていない方は「世の中にどのような保険があるのか? 」ということを、一度確認してみてはいかがでしょうか。
※厚生労働省 第22回生命表(完全生命表)の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部