更新日: 2019.01.10 その他保険

『保険は保険、運用は運用、切り離して考えるのが正解』何故なのか

執筆者 : 岩永真理

『保険は保険、運用は運用、切り離して考えるのが正解』何故なのか
近年販売されている外貨建て終身保険は「最低3%の利回り保証があるため、学資保険や運用代わりになり、いざとなれば死亡保障もある」と紹介されることがあります。
本当に運用や貯金の代わりになるのでしょうか。
 
ともすると、中立な立場から見ると、現時点では今すぐ死亡保障の必要のない独身のかたにも販売の案内がされています。保険は、なぜ運用や貯蓄と切り離して考えるべきなのかを検証していきます。
 
岩永真理

Text:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

外貨建て保険のリスクとは?

保険には、終身保険のようにいつかは必ず保険金が受け取れるものと、定期保険のように一定の期間内に万一のことが起こった時のみ保険金がもらえ、何もなければ保険金がもらえない、いわゆる掛け捨てのものがあります。
 
日本がバブルの時代は、国内の預金金利も高く、保険も5~6%の金利がつく商品があったため、いつか必ず保険金が受けとれる保険商品は、運用の一環として買われることがありました。
 
しかし、低金利の現在では、保険会社もリスクをとらなければ、高利回りで運用するのは難しいのが現状です。そのため、日本より金利の高いUSドルなどでの運用をする保険商品が売られやすい環境になったのです。
 
USドル建て保険では、3%の最低金利が保証されているものもあります。一見、金利が高ければUSドル建ての保険でもよいのではないか、と思われるかもしれませんが、こうした保険は、保険料の支払いも、受け取りもすべてUSドルになります。
 
そのため、保険料を毎月支払うたびに、円をUSドルにするために、外国為替手数料がかかり、支払う金額も為替レートによって変動しますので、一定ではありません。受け取る際もUSドルになりますので、日本で使うためには円に交換するために外国為替手数料を再度支払います。
 
その際も、受取額は為替レートによって変動しますので、日本円でいくら受け取れるかは、その時の為替レート次第ということになります。留学や海外旅行でドルとして使うという人は、受取時だけは為替レートや為替手数料を免れることができるかもしれません。
 
しかし、通常日本で日本円を使って暮らしている人にとっては、USドル建て保険は、保険料支払い時は円からドル、受取時にはドルから円、と二度も外国為替手数料がとられ、保険料支払いから保険金受取までの長い期間中、ずっと為替変動リスクにさらされていることになります。
 
特に、まだ年齢も若く、今後の人生の道筋が定まっていない独身男女では、死亡した際の保障もそれほど必要ではなく、こうしたリスクをとる必要もありません。
 

掛け捨てでない保険のリスクとは?

掛け捨てでない保険は、いつかは保険金がもらえますが、それをもらうために支払う保険料は購入時に定めた予定利率で決定され、契約が終了するまで変わることはありません。
 
つまり固定金利の商品です。日本で金利が低い昨今で終身保険に入ると、将来たとえ日本の金利が上がることがあったとしても、その恩恵を受けることはできません。
 
終身保険は、途中で解約をすると解約返戻金(へんれいきん)が受け取れます。予定利率の低い終身保険を解約して、条件のよい新しい終身保険に入りなおすことも、健康状態に問題がなければ可能です。
 
ですが、解約返戻金がそれまで払い込んだ支払い保険料を上回るようになるタイミングは、多くは契約から20年~30年後など、長期間が経過した後、ようやく訪れる設定になっています。
 
これは、USドル建ての保険でも同様です。保険は短期間で解約してしまうと、多くは自分の支払った保険料を下回る金額しかもどってきません。その間、保険として死亡保障などがあったわけですから、その保障料と考えるべきなのでしょう。
 
途中で何らかの経済的事情から解約したくなっても、解約をすると損をしてしまう可能性があることが、掛け捨てでない保険の一番大きなリスクです。保険料は家計で無理のない範囲で支払うとよいのは、こうしたリスクに備えるためです。
 

保険は保険、運用は運用

かといって保険は全く必要ないかというと、そうではありません。自分に万一のことがあって、遺族の生活保障に数千万円必要なこともあるでしょう。数千万円の貯蓄をするには、とても時間がかかり、今すぐ万一のことがあると大変です。そのような時こそ保険を使うのです。
 
いつか必ず保険金がもらえるタイプの保険(終身保険など)ではなく、掛け捨てタイプの保険(定期保険など)で、比較的少ない保険料で大きな保障を買うのです。
 
掛け捨てであっても、そうでなくても、保険は保険会社が定める一定の条件(保険金支払事由)に該当しなければ、加入者が保険金を手にすることはできません。保険はもともと安心のため、万一のために入るものですので、資産を増やすために入るわけではないでしょう。
 
資産を増やす目的なら、普通に運用を始めるとよいでしょう。独自に運用をすれば、市場の動向次第で好きな時に売買をして運用益を得ることもできますし、運用益を必要なタイミングで取り崩して使うことも可能です。
 
保険は保険としてしか使えませんが、自分で運用したお金なら、必要なタイミングで子供の教育費、住宅購入など、あらゆる用途に対して使うことができるのです。
 
Text:岩永 真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
 

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