更新日: 2021.07.29 その他保険

42歳パート主婦が働く時間を増やして扶養を抜けたら働き損になる?

執筆者 : 前田菜緒

42歳パート主婦が働く時間を増やして扶養を抜けたら働き損になる?
夫の扶養に入りながら、パートで働いているものの、扶養を抜けたほうが良いのか、悩んでいる女性は少なくないでしょう。
 
今回の相談者である洋子さん(仮名・42歳)も、そのような悩みをお持ちで、自分の働き方について答えを出せないでいました。扶養を抜けるということは、自分で社会保険に加入することになります。
 
この保険に加入すべきかどうかが最も悩むポイントなのですが、加入するメリットはあるのでしょうか。洋子さんのケースを例に、お伝えします。
前田菜緒

執筆者:前田菜緒(まえだ なお)

FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士

保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)

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160万円以上稼がないと働き損になる?

洋子さんは小学校6年生のお子さまを持つパート主婦です。先日、パート先の上司から、もう少し働く時間を増やせないか相談されたそうです。
 
子どもも手がかからなくなってきたし、ちょうど洋子さんもこのままの働き方をずっと続けていくのか、考えていたところでした。
 
働く時間を増やしても良いと思う反面、気になるのは働き損にならないかということです。「よく160万円とか、170万円以上稼がないと、働き損になると聞きますが、やはりそれくらい稼がないと働き損になるのでしょうか?」と言います。
 
洋子さんの現在の年収は120万円。社会保険料は給料の約15%ですから、160万円の場合だと、社会保険料はざっくり24万円。
 
税金は所得税と住民税合わせて10万円ほどでしょうから、確かに160万円ほど稼がないと、手取りは減り、生活が苦しくなったと感じるかもしれません。これから教育費もかかってきますから、できれば手取りが減るのは避けたいですね。
 
(総合的に考えるなら、夫の税控除も計算に含めますが、今回は社会保険のみを考え、夫の税控除は割愛します)
 
しかし、160万円にするには、毎日1~2時間働く時間を増やせばクリアできそうです。それに、手取りが減るのは、働き損ではありません。なぜなら損はしていないからです。
 

社会保険に対する誤解と加入するメリット

社会保険料を納めることによって手取りが減ることを「働き損」と言われがちですが、社会保険料を納めることは決して損ではありません。
 
多くの人は、民間の医療保険や死亡保険、個人年金保険に加入していると思いますが、社会保険もそれら保険と似たような機能があります。いえ、むしろ民間の保険より手厚いのです。
 
病気やけがで仕事を休むことになったら、最長1年半、給与の3分の2を傷病手当金として支給されますし、万一のことがあった場合は、残された家族に遺族年金が支給されます。老後の年金や、一定の障害状態になったら障害年金も受け取れます。
 
年金は扶養に入ったままでも基礎年金部分は支給されますが、社会保険に加入して厚生年金の保険料を納めることで、基礎年金に加えて、厚生年金が上乗せ支給されます。
 
特に障害年金は障害状態が続く限りずっと支給されますし、老後の年金は自分が死ぬまでずっと支給されます。このような支給形態に厚生年金が上乗せされる意義はとても大きいものです。
 
また、健康組合によっては、傷病手当金の支給期間が長くなったり、付加給付を行ったりしているところもあります。社会保険に加入するということは、大きなリスクに備えて保険に加入し、保険料を納めるということです。
 
しかも、保険料の半分は会社が負担してくれます。決して損ではありません。洋子さんも、分かっているようで分かっていなかった社会保険のメリットを理解し、少しスッキリされたようです。
 

2022年から社会保険加入者は拡大する

社会保険の加入について悩んでいる洋子さんですが、2022年10月から社会保険に加入する年収ラインが変更されます。現在の年収ラインは、130万円ですが、従業員が100人超の企業は106万円に下がります。
 
さらに、2024年10月には50人超の企業まで106万円のラインが適用されます。洋子さんの会社の従業員は200人ぐらいとのことなので、遅かれ早かれ、働き方を考える日はやってきます。
 
洋子さんは、今よりも収入を減らしたくないので、106万円に抑える気はないようです。働ける環境があり、収入を増やしたいと考えるなら、2022年を待たずに、扶養を抜けて働くことは1つの選択肢となるでしょう。
 
収入に上限を設定すると、どうしてもその中でやりくりする必要がありますが、上限をとってしまえば気にせず稼ぐことができます。
 
「働き損だからと考えて収入を抑えるほうが損かもしれませんね。106万円に抑える選択肢はないので、扶養を早いうちに抜けて、働くことを考えたいと思います」と洋子さんはおっしゃっていました。
 
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ

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