更新日: 2021.08.24 医療保険

「差額ベッド代」とはどのような費用?

執筆者 : 新井智美

「差額ベッド代」とはどのような費用?
病気やけがで入院する際の差額ベッド代は、基本的には保険適用対象外となるため、自費負担です。差額ベッド代といっても部屋の広さやグレードによって金額に差があります。
 
実際の相場がどのくらいなのか、そしてその費用を実際に用意するにはどのような方法があるのかを知っておくことは大切です。
 
今回は、差額ベッド代の詳細と、医療保険における差額ベッド代の考え方について解説します。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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差額ベッド代とは?

差額ベッド代は室料差額、あるいは差額室料ともいわれ、特別な療養環境を必要とする病室を利用する際に求められる費用です。差額ベッド代は保険適用外のため、その全額が自己負担となります。
 

■差額ベッドの要件

差額ベッド室として認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。


1.病室の病床数は4床以下であること。
2.病室の面積は1人あたり6.4平方メートル以上であること。
3.病床のプライバシーを確保するための設備があること。
4.特別の療養環境として適切な設備を有すること。

つまり、原則として4人部屋以上の場合、差額ベッド代は発生しないということになります。
 
(参考:埼玉県「差額ベッド(特別療養環境室)について」(※1))
 

差額ベッド代がかからないケースもある

差額ベッド代が必要となる部屋は一般に特別療養環境室と呼ばれますが、この部屋を利用するにあたっては、患者側の了解を得る必要があります。
 
特別療養環境室を利用したいという希望があった場合、部屋の設備や構造、そして料金について説明し、患者側の同意を得たうえでないと利用してはならないという決まりがあります。
 

■病院側の都合

患者側から特に要望がなく、かつ、「他に空いたベッドがない」という理由で特別療養環境室を利用する場合は、患者側にその旨を伝え、料金がかからないという点を理解してもらったうえで部屋を利用する必要があります。
 

■治療上必要な場合

患者の免疫力の低下により、感染症に罹患(りかん)するおそれがあるなど、治療上特別な療養環境が必要な場合は、差額ベッド代を請求してはならないということになっています。
 
(参考:埼玉県「差額ベッド(特別療養環境室)について」(※1))
 

差額ベッド代の相場はどのくらい?

では、差額ベッド代について具体的にいくらかかるものなのでしょうか。
 

■部屋の人数によって異なる

厚生労働省の資料によると、2019(令和元)年の差額ベッド代の1日あたりの平均額については、以下のとおりとなっています。


・1人部屋:8018円
・2人部屋:3044円
・3人部屋:2812円
・4人部屋:2562円

ちなみに1日あたりの最低金額は50円、そして最高金額については37万8000円となっています。
 
(参考:厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」(※2))
 

気になる平均入院日数は

医療技術の進歩および患者のQOL(クオリティ オブ ライフ)向上を考え、今では入院期間を少なく、通院で治療を行うという形態が主流となっています。
 

■病気の種類によって異なる

厚生労働省の調査によると、2017(平成29)年の病院および一般診療所における平均在院日数は約30日となっていますが、病気の種類によってはそれ以上の期間に及ぶものもあります。傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数は以下のとおりとなっています。
 


(厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」より抜粋(※3))
 
この表を見ると、いわゆる3大疾病といわれる「がん」「心疾患」「脳疾患」に限ってみた場合、入院期間は脳疾患を除き、64歳までであれば10日前後であることが分かります。脳疾患となると64歳までで最大45.6日、65歳を過ぎると86.7日と2倍程度になるようです。
 

■高齢者ほど入院日数は長くなる

また、入院日数は年齢が高くなるにつれ長くなる傾向にあります。
 

年齢階級別にみた退院患者の平均在院日数の年次推移


(引用:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」(※3))
 

差額ベッド室を利用する必要性はどのくらいあるか

差額ベッド代が自己負担となるのは、自分が差額ベッド室の利用を希望した時です。
 
例えば、仕事の都合で日中も連絡を取り合わなければならない場合や、数日間はベッドから動けず、その後もトイレなどをベッド上で行わなければならないなどで、同室の人に迷惑をかけたくない、もしくはプライバシーを考慮するために個室を希望するなどのケースです。
 
自分がどのような病気で入院した時に上記の状況になるか、入院日数がどの程度になるのかを想定するのは難しいかもしれませんが、自分が求める入院環境とそれに伴う差額ベッド代を考え、医療保険の保障などを備えておくのも良いかもしれません。
 

まとめ

差額ベッド代は高額療養費制度の対象になりません。差額ベッド代を考慮して医療保険を考える時は、自分の年齢と気になる疾患、そして差額ベッド室の利用の必要性を考慮しながら、医療保険の入院給付日数を決めるようにしましょう。
 
医療保険の入院給付日数は保険会社によって異なり、60日や120日、180日というものもあります。若い世代であっても「入院日数は短くても大丈夫」とは一概に言えません。不安があるのであれば、60日よりも120日など、入院日数を少し長めに設定しておくことも選択肢の1つです。
 
出典
(※1)埼玉県「差額ベッド(特別療養環境室)について」
(※2)厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」
(※3)厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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