最終更新日:2019.02.05 公開日:2017.05.30
スペシャルインタビュー

エキスパートに聞く「仕事とお金の話」⑩

明るくパワフルな自己表現ができる人は、経済的にも成功しています

Interview Guest : 佐藤 綾子(国際パフォーマンス研究所代表)

Interview Guest

佐藤 綾子(国際パフォーマンス研究所代表)

佐藤 綾子(国際パフォーマンス研究所代表)(さとう あやこ)

ハリウッド大学院大学教授。博士(パフォーマンス学・心理学)。長野県生まれ。1969年、信州大学教育学部卒業。ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科修士課程修了。上智大学大学院博士課程満期修了。日本大学芸術学部教授などを経て、2017年より現職。国際パフォーマンス研究所代表、「佐藤綾子のパフォーマンス学講座(R)」主宰、一般社団法人パフォーマンス教育協会(国際パフォーマンス学会)理事長。日本におけるパフォーマンス学の第一人者として活躍。累計4万人のビジネスリーダーとエグゼクティブ、首相経験者含む53人の国会議員と地方議員のスピーチを指導。単行本186冊、著作累計319万部。

佐藤綾子のパフォーマンス学講座(R)
http://www.spis.co.jp

パフォーマンス学の第一人者として、政財界や医学界から信頼を集め、首相経験者を始めとした多くの政治家、経営者のスピーチ指導を行う佐藤綾子先生。グローバル化する社会の中で、日本が発展していくためには、自己表現力を鍛えることが大切だと語ります。
 
収入アップやチャンスに恵まれる機会に密接に関わり、経済的な成功にも欠かせないというパフォーマンス学について、詳しくお聞きしました。
 

日本にはなかった自己表現能力を鍛えるというコンセプト

 
——パフォーマンス学とはどのようなものか教えてください。
 
パフォーマンス学とは、自己表現のサイエンスです。それは自然に身に付くことではなく、勉強しないとできないことで、目的に合った自己表現をする必要があります。ゆっくり話さなければならないところで早く話したり、笑うべきところで真剣な顔をするなど、間違った自己表現をしている人がとても多いんですね。
 
学問的には、心理学、社会学、文化人類学者、スピーチコミュニケーション学、演劇学を土台とした体系的な理論と、豊富な実験データにより証明された、言葉と言葉以外の表現の特徴を活かす技法から成り立っています。
 
自己表現の欲求というのはあらゆる人間にあります。アメリカの心理学者のマズローが提唱した『Maslow’s hierarchy of needs(欲求5段階説)』という理論がありますが、欲求の最高次元は自己実現の欲求とされています。
 
しかし今まで日本には、自己表現能力を鍛えるというコンセプトはありませんでした。日本人は昔から自己表現が自然にできていると思い込んでいたんです。このままではグローバル化する社会に付いていけません。今、この国には自己表現力を鍛えることが求められているのです。
 
パフォーマンス学は、主に4つのエリアで活かされています。1つ目は医療です。医師が患者との信頼関係をどう作るのか。患者は医師に自分の主張をしづらいと感じることが多く、医師側には患者の気持ちを読み取る能力が求められています。2つ目は教育です。教師は表情や言葉から、生徒の気持ちを読み取る必要があります。そしてどのように言葉がけをしていくかが重要となります。3つ目が政治です。
 
政治家は有権者に自分の思いを伝えるため、どのように語ったらいいのか、そのための自己表現方法を身につけることが求められています。4つ目がビジネスです。ビジネスの世界では利益を維持しなければなりません。経営者は自分がどれだけ優秀でも一人では利益を維持できませんから、優秀な社員を集め、社員と適切なコミュニケーションを取ることが必要になります。
 
——どのような経緯でパフォーマンス学に携わるようになったのですか?
 
上智大学大学院で演劇評論の研究をしていたのですが、演劇の舞台上よりも日常生活の中の自己表現のほうが、もっと面白いドラマがあるのではないかということに気づいたんです。面白いテーマだから、世界中の大学で研究されているだろうと思ったのですが、調べてみると、翌年にニューヨーク大学大学院で、世界初の「パフォーマンス研究学科」が開設されることが分かり、教授に指導を希望する手紙を書きました。
 
でも全く返事が来なくて、結局60通近く出したと思います。今から40年程前でメールはありませんから。最後に「NOならNOで理由を教えて欲しい」と書いて出したら、OKの返事をもらって留学できることになりました。私はそこの第一期卒業生です。
 
パフォーマンス学の修士号を取得後、日本でパフォーマンス学を広めるために帰国し、玉川学園の理事長に直談判して大学の教員になりました。最初は「サーカスの研究をしているんですか?」などとよく言われたもので、周囲からは全く理解されませんでした。本を執筆し、大学で教鞭をとり、たくさんの人々を指導するなどの活動を続けてきた結果、最近ではその重要性がやっと知れ渡ってきたと感じています。
 
1997年には自己表現能力の育成や教育啓蒙活動を促進する一般社団法人パフォーマンス教育協会も設立しました。活動の中心として国際パフォーマンス研究所を運営。各界のビジネスリーダーや首相経験者を含む国会議員、地方議員などの方々も、伝える力が何より大切だと考え、「佐藤綾子のパフォーマンス学講座(R)」を受講され、パフォーマンス学を取り入れていらっしゃいます。
 

「好かれる」のではなく「好感を抱かせる」、能動的な自己表現

 
——最近では『マンガ 人から好かれる技術(宝島社)』の監修をされ、好評を博していらっしゃいます。この本で伝えたかったことを教えてください。
 
「好かれる」という表現は非常に受け身な言い方で、好かれるも嫌われるも相手が決めることだから、表現者の側はお手上げのように感じるかもしれません。でも実は、相手に「好かれる」「嫌われる」という結果の半分以上は表現者本人が決めています。ポイントは、場と関係性に合った自己表現ができているかどうかです。
 
講演などで、講師が登場する前に司会者が長々と話すことがありますが、そんな場面では聞いている人たちは不満気な顔になってきます。早く講師の話を聞きたいからです。このケースでは司会者が、司会者という社会的役割から外れてしまっており、良い自己表現ができているとは言えません。このインタビューでは私が話していますが、私が誰かに意見を聞きに行くときは、ほとんど話さずに、非言語でメッセージを送ることに徹底します。
 
聞き手なのか話し手なのか、上司なのか部下なのか、クライアントなのか売る側なのか、といった関係性に合った自己表現をすること。これがイコール好かれる技術です。
 
言葉には気を付けていても、非言語のパフォーマンスで失敗する人も多いです。例えば初対面の人との物理的な距離の取り方でも、近づきすぎると相手に不快感を抱かせることがあります。私たちのフィールドワークでは、年収によって、快適だと感じる人との距離が変わることも分かりました。
 
年収が高い人ほど、より多く距離を取りたいと感じているんです。男女でも差があり、初対面の相手であれば男女の平均値が118cm、男性の平均は108cm。男性は女性より10cmほど、初対面の相手に無意識のうちに近寄ってしまい、女性から嫌われてしまう可能性があるのです。
 
人から好かれる技術というのは、能動的に相手に好感を抱かせる技術と言い換えることができます。この感覚が日本人には少し不足しているんです。シンクにお皿を落として割ってしまったとき、日本人は「お皿が割れちゃった……」という言い方をする人がほとんどで、「私がお皿を落として割りました」とは言いません。
 
「私」という主語の意識が薄いんですよ。そのために、人間関係も「好かれる」「嫌われる」と考えてしまうのですが、そうではなくて自分が相手に「好感を抱かせるように自己表現しているか」「反感を抱かせるように自己表現しているか」だと考えてください。日本の多くの人々にそのことを伝えたくて、この本を作りました。
 

自分をブランド化して、適切な自己表現をすれば人もお金も集まる

 
——パフォーマンス学の実践は、年収を上げたい人やお金とチャンスを求めている人にもお薦めだということですが、詳しく教えてください。
 
お金とパフォーマンス学は直結します。私は今まで1000人近い経営者やトップの財界人とお会いしていますが、成功している経営者というのは、とても明るい人が多く、それを表現することができています。一つの例として、あるパーティのシンポジウムで、ジャパネットたかたの創業者の高田明さんと、エイチ・アイ・エスの創業者の澤田秀雄さんが登壇されていたときのエピソードをご紹介しましょう。
 
お二人とも負債を抱えた経験があるのですが、そのことについて会場にいた人から「負債を抱えているときは眠れなかったのではないですか?」という質問がありました。それに対してお二人は大きな声で笑って、「もちろん寝ますよ。いろいろあっても、ご飯を食べてお風呂に入って明日考えます」とお答えになったんです。
 
明るくパワフルな自己表現ができる人が成功するのか、成功しているからそうなるのかは鶏と卵でどちらが先かは分かりません。しかし、明るさがお金を連れてくることは事実です。誰しも生きたいという生命欲求があるので、生き生きしている人の近くに行きたいと思います。優秀な人材が集まれば、ビジネスも成功します。
 
私自身は特別リッチではありませんが、何かやりたいと思ったときに、お金が足りなかったことは一度もありません。それは人が集まってきて、人がやってくれるからです。私はそこにパフォーマンス学の専門知識を提供します。これからの時代、経済的に成功したい人は、自分をブランド化して適切に自己表現することが必要です。そこには人もチャンスも資本も集まってきます。それが一番スマートでしょう。
 
お金をいくら貯めても、株価や経済状況によっては損失を出してしまいます。世界経済は安定的ではありませんから、自分という資本がなによりも大切なのです。
 
これからの日本の経済が発展していくためには、交渉力が必要になります。今までのように何でも「はい」と言っていては、世界を相手にはできません。北朝鮮情勢や世界中で起っているテロの問題もあり、日本も非常に不安定な状況にあります。今の日本は有事ですから、一人ひとりが情報網を持つことが大切です。情報網とはテレビや新聞、ネットではありません。
 
本当の情報は人間が持っています。優れた人と良い関係を作っておくことが重要なのです。日本でもより多くの人が、世界の優秀な人材に負けない自己表現力を身につけ、タフネゴシエーターとなり、相手と良好な関係性をつくっていって欲しいと思います。
 

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エキスパートに聞く「仕事とお金の話」⑩

  • 1:明るくパワフルな自己表現ができる人は、経済的にも成功しています
村田保子

執筆者:村田保子(むらた やすこ)

Financial Field エディター

 

 

岩田えり

Photo:岩田えり(いわた えり)

フリーランス・フォトグラファー

日本舞台写真家協会・会員。タレント・舞台俳優など人物写真を得意とする。

 

 



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