2017.09.02 暮らし

片づけの美学⑥ 日本人はお片づけが下手? 海外の暮らしとの違いとは?

執筆者 : 奥野愉加子

 
 ヨーロッパの素敵なアパートメントの写真。見るとうっとり、こんな暮らしがしてみたいと憧れる方が多いですよね。モノがなくてスッキリというわけではなく、置いてあるものがおしゃれで、何気なく積んである本さえもかっこよくみえる。視線を写真から自室に戻したときに、ため息がでるかもしれません。日本人はモノをため込みすぎるし、お片づけが下手なんて言われることもありますが、本当にそうなのでしょうか。
暮らしの違いを知ることで、見えてくることがあるかもしれません。今回はそんな違いをご紹介したいと思います。

 

住居の賃貸内容の違い

 

 日本人とヨーロッパの人たち(一括りで表現するのは乱暴ではありますが)の暮らしで大きく違うところ、それは住宅事情かなと思います。多様化している現在でもマイホームが夢である、日本。私が住んでいたドイツを例にしてみると、都市部ではそもそも「住居を所有する」という事があまりないようで、基本は賃貸のアパートメント。日本で言う賃貸マンションです。ですが、日本の賃貸とは概念が大きく違っています。床と壁は仕上げてあるけれど、キッチン・収納・照明すべてが入居者の負担で用意するというのがドイツの一般的なスタイル。予算がある人は業者に頼み、予算のない人はDIYです。アパートに入居直後、照明用と思われる赤と青の電気コードが天井からぶら下がっていて驚きました。日本だったら照明がついていない場合はコンセントがあるはずですよね。照明をつけるために電気工事が必要だなんて!とスタートから文化の違いを楽しんでいました。その後ドイツのお隣ベルギーで暮らす人から、ベルギーは床さえも入居者が用意すると聞いたときは、ずいぶんびっくりしたのを覚えています。その分、賃貸物件でも収納スペースを自分たちに必要な大きさ・形にできるので、持ち物の量によって適切なサイズの収納をつくることができます。日本の賃貸物件で備え付け収納を使う暮らしとはずいぶん違ってくるのは当然かなと思います。もちろんドイツ方式は費用がとても掛かりますよね。それでも、備え付けの収納で足りない時に、床置きをしたり、積んだりしている方は、収納スペースを自分サイズでつくってみる。という新しい視点を持ってチャレンジしてみてもいいかなと思います。

 

ライフスタイルの違い

 

 日本人と欧米の人たちのライフスタイルで最も違うところ。私は生活するときの高さだと思っています。欧米の人たちは室内でも街歩きに使った靴を履き、椅子に座って生活しています。私たち日本人の生活にも西洋の文化が入り、椅子とテーブルを使うスタイルが取り入れられました。それでも、今も床にペタッと座ったり、畳にごろんと寝転がるのが皆さん大好きですよね。おうちにソファを置いていても、背もたれとしてソファを使っている方が多のではないでしょうか。

 欧米の人たちは寝転がるのもソファや専用の寝椅子です。床に直接座るなんてことは、小さな子ども以外は、おそらくありません。

 このように座る高さに違いがあると、生活する高さレベルも違ってきます。私たちは床に座ると極端に動作が鈍って動かずに手の届く範囲に必要なモノを置きたくなるという特徴もあります。そして、椅子に座った時に便利な高さにもモノを置いておく必要があります。そうすると、立ち作業に便利な高さを含む3種類の高さに合わせて、モノを置くスペースを用意することになります。欧米のスタイルであれば2種類ですから、この時点でモノが多くなったり、置いているモノが増えて生活感が出てしまうことは仕方のないことかもしれません。

 おうちの中に3種類の高さがある方は、どの高さにモノが1番多いかなと観察してみたり、必要不必要を区別する行動をしてみると、ずいぶん印象が変わるのではないかと思います。

 

キッチンの違い

 

 日本のおうちではキッチンがモノであふれていることが多いですね。それは、日本のお母さんがたくさんお料理を作るからだと思っています。私たちは、朝も昼も夜も調理された手作りのお料理を食べるのが当たり前だと感じているからです。

 私が生活していたイギリスとドイツは、両国ともキッチンがきれいでおしゃれなイメージですよね。特にドイツは、ピッカピカのキッチンに高性能なキッチン家電やアイテムが思い浮かびます。それを来客にお披露目することがおもてなしという風にとらえているそうです。どうしてそんなことができるのか。答えは簡単、キッチンで調理を頻繁にしていないからです。朝と夜の食事は、買ってきたパンにスライスされたハムとチーズを挟んだお手製サンドウィッチをそれぞれ自分で作って食べるのが基本。本格的なお料理を作るのは週末の昼食だけだからです。そのため洗い物は少なく、キッチンにある大きな食洗器は一週間に2度ほど稼働させれば十分というご家庭もあるそうです。そして、食事をとるのはキッチン内にあるカウンター部分。素敵なダイニングで食事をするのは週末だけなのです。これを知った時、キッチンが妙に広いなぁと疑問に思っていた謎が解けた!と思いました。

 このように見比べると、手料理が食べたい、食べさせてあげたいと思う日本人の暮らしでは、キッチンがモノであふれているのは、しょうがない部分もあるのかなと思えてきます。

 

まとめ ~暮らしの違い~

 

 これまでご紹介した点だけでも、私たちの暮らしが欧米の人たちの暮らしとずいぶん違っていることがお分かりいただけたと思います。

ですから、他と比べて日本人はお片づけが下手なんていうことは、ないと私は思っています。それでも、日本のご自宅・職場が片づいていなくて雑然としていることがあるのも事実。それは、かつてモノがない時代に1つのモノを大事に長く使うという気持ちと、新しいモノがどんどん手に入る時代に使えそうなモノがあれば欲しいと思う気持ちの両方が、整理されぬまま混在しているからだと思います。豊かさゆえの悩みですね。前回・前々回のお片づけのいい手順を読み返していただけると幸いです。

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奥野愉加子

執筆者:奥野愉加子(おくの ゆかこ)

美学のある暮らし 代表

整理収納アドバイザー認定講師。(photo:キャラバンサライ)
奈良生まれ。大学では生活環境学部にて建築やインテリアを学び、英国インターンや建築設計会社勤務を経て、2011年より愛知県で結婚生活をスタート。長男出産後、夫の赴任で2年間のドイツ生活を経験。帰国後の現在は建築家デザインの家で暮らす、5歳と2歳の男児の母。子育てがひと段落したら、建築や暮らしに関連するような仕事をしたいと考え、「一般社団法人ハウスキーピング協会」の整理収納アドバイザーの資格を取得。認定講師として資格取得のための講座を定期的に主催している。

<美学のある暮らし>

https://www.bigakurashi.jp