更新日: 2019.09.03 その他暮らし

企業の食品ロス対策に新たな試み。スーパーでは「即食」が注目

執筆者 : 毛利菁子

企業の食品ロス対策に新たな試み。スーパーでは「即食」が注目
社会問題になっている食品ロス。その量は年間621万トンもあるそうです。

これは、全国民が毎日、1人茶碗1杯分の食品を捨てていることになるのだとか。世界の飢餓人口が8億1500万人という国連の報告と重ね合わせると、何とも心が痛みます。

最近、食品ロスを減らすための企業の新たな試みが始まっています。私たちも普段の暮らしの中で、食品ロスの減少に一役買うための方法を考えてみましょう。
毛利菁子

執筆者:毛利菁子(もうり せいこ)

農業・食育ライター

宮城県の穀倉地帯で生まれ育った。
北海道から九州までの米作・畑作・野菜・果樹農家を訪問して、営農情報誌などに多数執筆。市場や小売り、研究の現場にも足を運び、農業の今を取材。主婦として生協に関わり、生協ごとの農産物の基準や産地にも詳しい。大人の食育、大学生の食育に関する執筆も多数。

食品ロスとは、まだ食べられるのに廃棄されている食品

 
環境省と農林水産省の推計によると、2014年の食品廃棄物等は2775万トンで、そのうち腐敗や変質している訳でもないのに廃棄されている食品は621万トンもあるというのです。
 
本来なら食べられるはずの食品なのに捨てられているものを「食品ロス」と呼んでいます。
 
2012年以降の3年間の比較では、毎年10万トンずつ減少してはいます。
とはいえ、2014年度分だけで、全国民が「毎日、毎日」茶碗1杯分程度の食品を捨て続けていることになるのだそうです。
 
そもそも、食品廃棄物はどこから出るのでしょうか。
やはり、量的に多いのは食品メーカーや食品小売業、飲食店などから出る事業系廃棄物です。
 
規格外品や売れ残り、返品、食べ残しなどで1938万トン出ています。このうち、食品ロスは339万トンです。
 
では、一般家庭からの廃棄物はどうでしょう。
こちらは822万トンで、食べ残しや過剰除去(青果の皮を厚くむき過ぎた、など)、直接廃棄(購入後の食品を、そのまま捨ててしまった)などが原因として上げられます。
 
このうち、食品ロスは282万トンというのが現状です。
 

企業の食品ロス対策に新たな試み。スーパーでは「即食」が注目

 
食品メーカーや卸売業、小売業、飲食業から食品廃棄物が出ることは、ある程度は仕方がないと思います。
 
しかし、食品ロスにあたる部分を減らすことは重要で、企業でも対策を練っています。
 
小売りでは残った商品を1カ所に集めて思い切った値引きをして売り切る、メーカーや卸しでは返品やパッケージ変更前の商品をフードバンクに寄付するなどで、一定の効果を上げてはきました。
 
それでも、食品ロスは企業を悩ませる大きな問題であることには変わりありません。
そうした中、新たな食品ロス対策が注目を浴びています。2つ、紹介しましょう。
 
スーパー各社は最近、「即食」に熱い視線を送っています。惣菜売り場にイートインコーナーを設け、客の注文に応じて作った熱々の、あるいは冷たい惣菜などを「すぐに、店内で食べさせる」業態を言います。
 
客は食べたいものを注文するので売れ残りの心配がないだけでなく、惣菜コーナーに並ぶ商品をもとに開発したメニューで同じ食材を使うため、食品ロスが確実に削減できます。
 
スーパーの惣菜販売に新たな流れができそうです。
 
もう1つは、メーカーや小売業で食品の賞味期間の表示を、これまでの「年月日」から「年月」に変更する動きが本格化してきたことです。
 
問題が発生しない範囲で賞味期間に幅を持たせることで、商品の廃棄や安売りを防止することが狙いです。
 
これは内閣府や文科省、農水省など6省庁が共同で、2013年から食品ロス対策を検討してきた方法の1つです。
 
すでに、飲料各社の2リットルペットボトル水などで実現していました。
今年に入ってから、味の素も70品目以上の調味料などで「年月」表示に切り換えました。
 
大手飲料メーカーやスーパーのPBブランドでも、表示変更に向けて動き出しています。
 
あまり知られていませんが、スーパーには「賞味期間の3分の1を過ぎた食品は納品させない」という商習慣があります。
 
「年月」表示に変わることで、この商習慣の見直しに結びつけば、食品業界全体での食品ロス減少につながりそうです。
 

実は企業よりも家庭の食品ロスの割合が大きい。暮らしの中での工夫が必要

 
食品ロスというと、企業の問題が大きいようなイメージがあります。
 
しかし、食品廃棄物に占める食品ロスの割合は、企業が約17%なのに家庭は約34%と2倍もあるのです。これは何とかしないといけません。
 
購入や頂き物で、賞味期限内なのに食べきれないと思う食品は、「子ども食堂」やフードバンクに寄付するという方法があります。
 
最近増えている「子ども食堂」は、日々の食事に困っている親子には頼りになる存在です。
意外に身近にあるかもしれません。ネット検索をして、支援したい食堂に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
 
その時々に必要としているもの以外は、なるべく買わないで済ませることも大切です。2007年の京都市の調査では、生ゴミの約2割強は手つかずの商品だったそうです。
 
私にも数え切れない“前科”があります。目玉商品だから、あるいはそのうちに食べようとつい買ってしまう無計画な自分。「そのうち」は来ない可能性大、ということを肝に銘じて買い物したいですね。
 
最も大切なのは料理の腕や知識を高めることかな、と感じています。冷蔵庫の中のもので作れるメニューを考える力、皮を厚くむきすぎたりしない腕があれば、食品ロスも少なくなる、と。
 
これからの季節、店頭に並ぶ葉つきダイコンやカブの葉っぱ、長ネギの青い部分は緑黄色野菜として利用できることを知って、無駄の出ない料理を考える、などできることはたくさんありそうです。
 
すぐに料理上手にはなれませんが、問題ありません。思いつかないときには、冷蔵庫に入っている食材をいくつか入力して、最後に「レシピ」と付け加えて検索すれば、パソコンがおいしい料理のヒントを教えてくれます! 
 
こうすれば、手元にあるものをうまく使い切れます。
野菜の多くは、皮のすぐ下が中心部よりやや栄養があり、おいしいと言われています。皮を薄くむく、あるいは皮まで食べ切る食品ロスの少ない生活なら、健康増進と節約が同時にできるというものです。
 
Text:毛利菁子(もうり・せいこ)
宮城県の穀倉地帯で生まれ育った農業・食育ライター。