最終更新日:2019.01.11 公開日:2017.12.11
暮らし

地球温暖化による気候変動は、私たちの食にどんな影響を与えているのか?

今年の7月から10月まで、全国的に平年を上回る気温が続きました。10月下旬には、海水温の上昇が原因とされる超大型台風が襲来。地球温暖化は徐々にではありますが、確実に進行しているようです。
私たちの食を支えている農業にも、様々な被害を及ぼしています。農業の現場、そして田畑の恵みを受けている消費者には、どんな影響があるのでしょうか。

10月下旬になっても台風が列島直撃。収穫期を迎えた作物にも被害続出

10月下旬、超大型の台風21号と、その1週間ほどあとに日本近海を通過した台風22号による大雨と強風で、九州から東北までの広い範囲で被害が出ました。秋は稔りの季節、とくに10月は稲刈り/収穫シーズンです。台風22号が去った翌日、東北に向かいました。車窓から、刈り残った黄金色の稲が倒伏している田を多く見かけました。
 
福島県と宮城県では、倒伏して濡れたままの稲穂から芽が出ている田んぼを何箇所も見ました。米は発芽すると品質が低下し、味だけでなく農家の収入にも打撃を与えます。宮城県や山形県では、収穫間近の大豆に被害が出ていました。

湿害に弱い大豆は、畑の冠水や倒伏などで2日間程度水に浸かってしまうと、さやの中で豆が腐敗したりシワがよったりして、品質も収量も低下してしまうのです。
 
もちろん、台風による農業被害は東北に限ったことではありません。関東地方でも、海に近い産地の秋出荷分のダイコンやカブ、ニンジンが、強風で飛ばされた海水による塩害で葉が枯れ、生育が大幅に遅れています。また、関東全域では植え付けたばかりの冬出荷用の葉物野菜の種や苗が流されて、種の蒔き直し、苗の植え直しなどの対応に追われています。
 
おせちに欠かせない根菜類は年明けまで影響が残りそうで、品薄や価格の上昇が懸念されます。台風には、農家も消費者も泣かされます。近年の勢力が大きい台風の襲来は、地球温暖化でインド洋やフィリピン沖の海水温が上昇していることが原因だといわれています。ですから来年以降も、稔りの秋の喜びを吹き飛ばす台風の襲来が懸念されます。

温暖化で農産物への被害は拡がっている

研究者でつくる気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2100年までに地球の平均気温は2.6〜4.8℃上昇すると予測しています。日本国内では、2016年は北日本の秋を除き、年間を通じて全国的に高温傾向が続きました。夏の平均気温は平年差+1.1℃と1946年の統計開始以降、最も高くなりました。2017年も高温傾向にあります。暑さで人間も弱りますが、農作物も同じです。
 
これまでに、温暖化による農業への被害は数多く報告されています。農水省が把握している被害を、家庭でおなじみの作物で紹介します。
 
・水稲:白未熟粒(デンプンが詰まっていない部分が白くにごる)。虫害の多発
・りんご、柿、ブドウ:着色不良、着色遅延、日焼け
・温州ミカン:浮き皮(内皮と外皮の間に隙間ができる)
・サクランボ:奇形(実がしぼむ)
・トマト:着果不良
・ネギ:生育不良
・茶:二番茶以降の生育障害
・豆類:莢(さや)数の低下
 
これらに対応策はあるのでしょうか。水稲は「にこまる」や「きぬむすめ」などの高温耐性品種への転換が進んでいますし、水が冷たい夜間にかん水する対応策も示され、一定の成果を上げています。野菜や果物では、寒冷紗で人為的に日陰を作る、施設園芸でのヒートポンプによる冷房導入、細霧冷房の導入などの対応策が出てはいます。
 
しかし、農家の平均年齢が66.8歳(2016年)とあっては、コストや労力がかかる新たな対策には及び腰にならざるを得ないというのが実情です。

温暖化で産地地図も変化。本州で熱帯果樹の栽培が始まっている

一方、温暖化を逆手にとって、新たな作物を栽培する農家や産地も各地に現れています。新潟県佐渡市では温州ミカン、高知県や神奈川県でバナナ、徳島県や愛媛県ではアボカド、神奈川県ではマンゴーなど、予想外の地域でも育っています。今や、本州でも熱帯の果物が栽培できるのです。
 
反対に、温暖化がこのまま進むと、「現在の適地が“不適地”になる可能性がある」と専門家が警鐘を鳴らしています。温州ミカンの大産地である愛媛県では、温暖化で収量が下がっている地域が出ています。暖地を適地とする温州ミカンは、約30年後には南東北あたりでも栽培できるようになるといわれています。ミカンだけでなく、ブドウやサクランボ、モモ、ナシなどの大産地でも高温障害が出ています。
 
特産地であっても、作物の転換が迫られる事態になるかもしれません。従来の産地地図が変化するような事例が、今後も増えていきそうです。
 
温暖化は水の枯渇も招くと言います。温暖化の進行を食い止める世界的な動きが本格化して欲しいし、私たちにできることをやっていかないといけませんね。私たちの命運を握る長期的に安定した食生産ができるように。
 
Text:毛利菁子(もうり・せいこ)
宮城県の穀倉地帯で生まれ育った農業・食育ライター。

毛利菁子

執筆者:毛利菁子(もうり せいこ)

農業・食育ライター

宮城県の穀倉地帯で生まれ育った。
北海道から九州までの米作・畑作・野菜・果樹農家を訪問して、営農情報誌などに多数執筆。市場や小売り、研究の現場にも足を運び、農業の今を取材。主婦として生協に関わり、生協ごとの農産物の基準や産地にも詳しい。大人の食育、大学生の食育に関する執筆も多数。

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