更新日: 2019.01.10 その他暮らし

「プレミアムフライデー」が普及しない2つの理由

執筆者 : 柴沼直美

「プレミアムフライデー」が普及しない2つの理由
2017年2月からスタートした「プレミアムフライデー」というキャンペーンですが、普及しているとはとうていいいがたい状況です。なぜでしょうか。あらためて考えてみたいと思います。
柴沼直美

Text:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

月末の金曜日? タイミングが悪すぎ

最大の理由はタイミングでしょう。
 
毎月末の金曜日の午後3時に政府や経済界が退庁・退社して夕方を買い物や旅行に当てる構想ですが、そもそも月末の金曜日という設定が不適切といわざるを得ません。
 
どんな企業や団体にも1日、1週間、1カ月、そして1年のビジネスサイクル(業務サイクル)がありますが、少なくとも一般企業に関していえば、1カ月の締めに入る月末は経理上や売り上げの追い込みになるため多忙となります。クライアント企業にとっても、当該企業のクライアントがいるわけですから、経済界全般的に繁忙期になります。
 
仮に大企業がイニシアティブをとってこの構想に乗ったとしても、日本の99%は中小企業で成り立っています。経済界がそろってこのような優雅な構想に乗るのは現実的ではないですね。一般企業で就労した経験のある人であれば、一般常識のことが政策立案者には常識でないということがこれほど明らかになった例もないでしょう。
 
筆者も4月、5月頃の月末、遅い時間の電車に乗ると、「そういえばプレミアムフライデーだった。忙しすぎて忘れていた」という声をよく耳にしましたが、最近では「プレミアムフライデー」という単語を耳にすることすらなくなってしまいました。
 

買い物をする人が増えれば、対応する側も忙しくなるという事実をスルー

2点目としては、企業活動のサイクルをまったく無視した前提のものに発案された構想であるという点でしょう。
 
買い物をする人、サービスを利用する人の行動を促すということは、それに対応する店や施設で働く人が多忙になるという結果をもたらします。対応する側も別のところでは消費者です。このサービスを提供する側の人たちが多忙になれば、そこからの新たな消費行動はしぼんでしまいます。
 
すなわち経済活動では、一方向的に物事が動いているのではなくサイクルを描いているのです。この事実が完全にない前提で打ち立てられた構想です。機能するほうが不思議といえるでしょう。
 

ピンポイントでの消費喚起は意味がない

このように考えると、ピンポイントで「月末の金曜日」という特定の日に焦点を当てて消費を喚起することは、まったく意味がないといえるのではないでしょうか。
 
消費はGDPの最大構成要素です。ここを喚起してGDPを押し上げるには、土壌をほぐして水をやり肥料をやるという、長期間かつ普遍的な構想が必要ではないかと思われます。
 
Text:柴沼 直美(しばぬま なおみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
日本証券アナリスト協会検定会員、MBA(ファイナンス)、
キャリアコンサルタント、キャリプリ&マネー代表