2018.02.14 暮らし

身近な電気の話 いるorいらない!原発3題

Text : 藤森 禮一郎

東日本大震災と津波の被害を受けて東京電力・福島第一原子力発電(1~4号機)が事故を起こして7年が経ちます。事故後、政府の指示により、運転中のすべての発電所が運転停止となりました。あれから「原発ゼロ」の長いトンネルに入ってしまいました。

その後、福島事故の教訓を生かした新しい規制基準に従って原子力規制委員会が7基の再稼働を認め、原発が電力供給の一線に復活しつつあります。しかし再稼働原発は半数に満たず、長いトンネルを抜け出したはいません。「朝の来ない夜はない」と言いますが・・・果てして。最近の原発事情を紹介します。原発、いるorいらない? どう思いますか。

1.大飯原発1,2号機廃炉に

関西電力は昨年末、2019年に「40年運転期限」を迎える大飯原子力発電所1、2号機(福井県おおい町)を廃炉とすることを決めました。
 
運転を延長しても採算が取れないと判断しました。岩根茂樹・関電社長は西川一誠福井県知事に会い、「安全を確保し、できるだけ早く更地にしたい」と伝えると同時に将来の電源構成について、「4割を原発にしたい」と原発の利用には前向きの姿勢を示しました。
 
大飯原発1,2号機は出力117・5万kWの大型機、加圧水型(PWR)軽水炉です。事故を起こした福島第一原子力以外で廃炉になった原発は6発電所8基になりますが100万キロワット級の原発は大飯が初めてです。
 
大飯原発1,2号機は原子炉格納容器に「アイスコンデンサー方式」を採用した特殊な構造をした原子炉で、世界でも珍しい発電所です。同じ出力の3,4号機と比較すると格納容器の大きさは3、4号機が高さ65メートル、直径43メートルなのに対し、1、2号機は高さ52メートル、直径37メートル、とコンパクトな設計になっています。小さくて力持ちの原発です。
 
それなのになぜ廃炉に?と思いますね。コンパクトなことが裏目に出てしまったのです。
 
非常災害時の安全対策として採用されているアイスコンデンサー方式とは、格納容器の周りに約2000本のアイスバスケット(金網の筒)を設置し1250トンのブロック状の氷が詰めています。事故時に発生する高圧の蒸気を炉内で急速に冷やして圧力を下げるシステムを世界で初めて採用しています。ただ格納容器はコンパクトになってのですが、結果として作業用の足場が狭くなってしまったのです。
 
100万kW級の原発は、同じ出力の太陽光発電に比べると何倍も、何十倍もの電気を生産できますから、稼ぎも大きいのですが、事故後の新規制基準に合わせた設備の安全対策を講じると、格納容器内の作業スペースは一層手狭になり保守が難しくなります。加えて多額の追加投資が必要です。
 
運転期間が30年近く延長されても投資の回収は難しいと判断しました。関電の場合、存続を決めている他の7基の安全対策費だけでもすでに約8300億円を投じる計画なので、これ以上の負担は経営の重荷になると判断したのですね。今後は経済性に優れた大飯、高浜、美浜の合計7基の原発運転をめざすことにしています。
 
災害時の安全対策ですが出力同一の3,4号機は原子炉格納容器にPCCV(プレストレストコンクリート)方式を採用しています。
 
格納容器のコンクリート壁内部に「PC鋼より線」を入れ、あらかじめ格納容器全体をきつく締め付けて、事故発生時に発生する大きな圧力に耐えられる設計となっています。大飯3,4号機は100%国産で、技術進歩を実感できる発電所ですね
 
原子力規制委員会によると新たに採用された40年廃炉基準により廃炉になったのは日本原子力発電の敦賀1号機(福井県)、関西電力美浜1,2号機(同)、中国電力島根1号機(島根県)、九州電力玄海1号機(佐賀県)の4原発5基で、いずれも70~75年に運転を始めた原子炉で出力は34~56万kWの規模の出力規模の小さい原発です。
 
福島事故後に廃炉になったのは、事故炉の福島原発1~4号機、日本原電東海原発1号機(茨城県)、中部電力浜岡1、2号機があり、すでに廃炉作業が進められています。
 
よく誤解されますが廃炉が決まっても、直ちにスクラップされるわけではありません。廃炉作業にはおよそ30年の歳月と一基当たり数百億円の費用が掛かるとされています。その間、事業者の放射線管理は続き、安全は確保されます。
 

2.東京電力柏崎・刈羽原発6,7号機 規制員会の審査にパス

原子力規制委員会は12月27日、東京電力柏崎・刈羽原子力発電所6、7号機の原子炉設置許可変更を許可しました。
 
新規制基準に基づいて再稼働が認められたのですね。再稼働が認められた原子炉は14基となりました。
 
これまで再稼働炉は加圧水型炉ばかりでしたが、福島原発と同じタイプの沸騰水型炉(BWR)が合格は初めてですね。柏崎・刈羽の審査では、もう一つ東京電力ホールディングス(HD)の運転能力も審査の対象になりました。事故を起こした事業者に運転能力があるのだろうか、との意見があったからです。
 
原子力規制委員会は検証した結果、「能力がないとする理由はない」との結論で「適格性あり」と認めました。しかし再稼働に必要な手続きはまだ工事認可、保安規定認可などいくつか残されているので「さあ、再稼働だ」というわけにはいきません。
 
中でも最大の難関は新潟県知「適正合格」を受けた記者会見で、「県として(原子力規制委員会の審査に)異を差し挟む立場にない。(県が独自に進める)3つの検証がなされない限り、再稼働の議論はできない」との見解を表明しています。指示就任後、県独自の事故検証を進めるために特別委員会を設けて検証を続けています。知事の諮問機関で期間はおよそ3年間だと言います。
 
「およそ3年間の期間」と言う時間が問題です。米山知事の任期ぎりぎりまで特別委員会の結論を出さない、その間は知事の判断を示さない、ということです。国の安全行政手続きが整っても、再稼働は事実上認めないと宣言しているのですね。「県民に寄り添った対応」と言うけれど、特別委員会を隠れ蓑にした知事判断の先送りに見えますが、どうでしょうか。
 

3.広島高裁、伊方3号機運転差し止め決定

広島高等裁判所(野々上友之裁判長)は12月13日、住民が四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを求めていた仮処分申請の即時抗告審で、住民側の申請を認める決定を下しました。九州・阿蘇火山の影響について、原子力規制委員会の適合性判断は、影響を適正に評価していないので「不合理」だと判断しました。
 
ただ、広島地裁で審議が継続している安全性にかかわる本訴訟で、今後異なる判断が下される可能性を踏まえて、仮処分による運転停止期間は2018年9月30日までとしました。
 
四国電力はこれを不服として28日、広島高裁に仮処分の「執行停止と異議申し立て」を行いました。異議申し立て審では、9万年前の「阿蘇4噴火」と同等規模の噴火が起こる可能性とその影響評価が焦点になりそうです。
 
そもそも「仮処分の決定」は「差し迫った危険」が存在する場合に下されるものです。裁判の判決ですから、厳粛に受け止めますが、阿蘇山の大噴火は差し迫った危険、と解されるのでしょうか。溶岩流が伊方原発の立地する愛媛県の佐多岬まで達するという大規模な阿蘇山の大噴火を想像してみましょう。その時、は別府湾を溶岩流が埋めて九州と四国が陸続きになることを意味します。
 
九州大分県の住民はどうなっているのでしょうか。温泉県おおいたの別府温泉・湯布院や九重の温泉地は無事なのでしょうか。阿蘇山の裾野に広がる町や村は生き残れるのでしょうか。九州と四国が溶岩で地続きとなり大爆発では数千の死者が出ているかも知れません。こうした状況は差し迫った危機と言えるでしょうか。
 
伊方3号機をめぐっては広島高裁のほか高松高裁、大分地裁、山口地裁岩国支部でも仮処分申請の尋問が進んでいます。また運転停止を求めた本訴訟は松山、広島、大分の3地裁で係争中です。「裁判リスク」はますます強まりますね。
 
原子力発電所の運転差し止めをめぐっては、広島高裁判決は高等裁判所レベルで初めて住民側の主張が認められた判断です。
 
九州電力川内原子力3、4号機の運転を認めた福岡高裁宮崎支部判決、関西電力高浜原発3、4号機の運転を認めた大阪高裁判決とは異なる結論で、原子力発電所の運転をめぐる「司法リスク」が新たな局面を迎えたといえるかも知れません。別の見方をすれば、脱原発運動が司法の世界に活動の拠点を移したとも言えますね。
 
Text:藤森 禮一郎(ふじもり れいいちろう)
フリージャーナリスト

藤森 禮一郎

Text:藤森 禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

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