最終更新日:2019.01.10 公開日:2018.02.16
暮らし

過去5年間で1万5千人の「奨学金破産」この連鎖は止まるのか、続くのか

新聞報道によると、日本学生支援機構の奨学金を返せず、自己破産するケースが、過去5年間に延べ1万5千人で、半分近くが親や親戚ら保証人だったことがわかりました。

「奨学金破産」の連鎖を防ぐには、どうしたらよいでしょうか。
新美昌也

執筆者:

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

詳細はこちら
新美昌也

執筆者:

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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奨学金の現状

日本学生支援機構の資料「奨学金事業への理解を深めていただくために」(平成29年11月)によると、平成28年度には131万人(うち第一種奨学金50万人)の学生に1兆465億円の奨学金が貸与されています。
 
131万人というのは、高等教育機関(大学、短大、専門学校)の学生347万人の38%にあたります。つまり、2.7人に1人の学生が日本学生支援機構の奨学金を借りていることになります。
 
学校種別の貸与状況をみると、大学37.8%(2.65人に1人)、短大44.9%(2.23人に1人)、専門学校40.8%(2.45人に1人)などとなっており、短大での奨学金貸与率が高くなっています。平均貸与総額は、平成28年3月に貸与が終了した奨学生1人あたり、第一種奨学金237万円、第二種奨学金343万円です。
 
保証制度に関しては機関保証の選択率が46.7%となっています。機関保証は、連帯保証人・保証人を立てる代わりに、保証料を支払い、保証機関に連帯保証人になってもらうものです。
 
返還者数は平成28年度末、410万人(返還期限の猶予を受けている方も含む)です。このうち1日以上の延滞者数は33万5千人(8.2%)、3か月以上の延滞者は16万1千人(3.9%)です。延滞額は866億円です。返還者に対しては、年間約1200万件の文書を郵送していますが、26万9千件が「転居先不明」等で返送されています。
 
平成28年度中に新たに個人信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に登録された方は、21,242件です。平成28年度、法的処理件数に関しては、返還者数410万人のうち、日本学生支援機構が裁判所に支払督促申立てを行った件数は9,106件(0.22%)、訴訟に移行したケースは5,845件(0.14件)です。
 

奨学金を延滞し続けるとどうなるか

口座残高の不足などで返還金の引き落としができなかった場合、延滞3か月までの間、文書や電話で、返還の督促や返還期限の猶予などの案内が行われます。延滞すると元本に5%の利息がかかります。延滞が3か月続くと個人信用情報機関に登録されます(いわゆるブラックリストに載ります)。クレジットカードなどの利用が制限されます。
 
延滞4か月目から9ヵ月は債権回収会社に回収業務が委託されます。債権回収会社は、電話、文書および自宅等への訪問により督促を行います。延滞が9か月を超えると法的措置(裁判所への督促の申立て)が取られる可能性があります。この時点で、未返還残高の一括返還を請求されます。
 
本人が支払うことができない場合、保証制度で人的保証を選択している場合、連帯保証人(親)や保証人(叔父など)に請求が行きます。本人が自己破産しても、連帯保証人・保証人の責任は免かれません。一括返還を請求されれば、親や親族へも自己破産が連鎖する可能性があります。
 

自己破産をするとどうなるか

免責許可決定を受けると、税金など一部を除いて奨学金などの借金を返還しなくてよくなります。
 
また、弁護士等に破産手続きを依頼し、弁護士等が日本学生支援機構などに、本人から債務整理の依頼を受けた旨の通知(受任通知)を送ると、本人に督促が来なくなり、心理的に楽になります。
 
自己破産のデメリットとしては、
(1)一定の財産(自由財産)を除いて、財産を手放なさなくてはならない
(2)官報に氏名が掲載される
(3)破産したという事故情報が個人信用情報機関に記録される
(4)破産手続き中、一定の職業や長期の旅行等が制限される
(5)弁護士費用等がかかるなどが挙げられます。
 
ただし、(4)の制約は破産手続きが終了し、免責許可決定が出ればなくなります(復権)。
 
このように自己破産のデメリットよりもメリットのほうが大きいと言えます。また、自己破産をしたからといって会社を辞めなければならないわけではありませんので、生活の再建のために、早めに専門家に自己破産の相談をしましょう。
 

自己破産を防ぐには

奨学金を借りるときは将来の返済の見通しを考えて借入額を決めましょう。とはいっても、社会人と異なり、収入がわからない状態で借入額を考えるのは難しいと思います。
 
専門学校へ進学する場合は、将来の職業がある程度決まりますので、その職業の手取り額を調べてみてから借入額を決めましょう。
 
大学進学であれば平均的な初任給を目安に考えてみてはいかがでしょうか。大卒の初任給は20万円程度です。税金や社会保険料を除いた手取り額は18万円程度になります。毎月8万円を4年間借りる場合、卒業後毎月21,531円(金利3%)を20年間返還する必要があります。18万円から2万円を返還するのはどうでしょうか。
 
厳しいようであれば、アルバイトを増やして借入額を減らす、あるいは、アルバイトはできるかどうかわからないので、借入額は変更せず、アルバイトができたときに貯めておき、まとめて返還(繰上げ返還)する、卒業後の返還の原資にするなどいろいろ考えてみましょう。
 
このように無理のない返済計画を事前にシミュレーションするなどよく考える必要があります。
 
卒業後、収入が低くて返還が困難な場合には、返還期限猶予制度、減額返還制度などのセーフティーネットを活用しましょう。返還期限猶予は、返還期限を先延ばし(最長10年)にしてもらえる制度です。減額返還制度は、月々の返還額を1/2または/13にして返還する制度(最長15年)です。
 
返還を長期間延滞すると先に説明したように一括返還を請求され、返還が出来なくなるリスクが一気に高まります。日本学生支援機構から延滞のお知らせが届くように、転居先などの連絡先が変更になった場合は、必ず、日本学生支援機構に連絡しましょう。
 
ただ、これらのセーフティーネットは返還を免除するものではありませんので、この間に生活を建て直すことができなければ、最終的には本人の自己破産は避けられない点は留意しましょう。
 

自己破産の連鎖を防ぐには

自己破産の連鎖を防ぐには、保証制度を機関保証にする必要があります。機関保証にすれば、最悪、本人の自己破産で済みます。連帯保証人や保証人には責任は及びません。保証料はかかりますが、自己破産の連鎖を防ぐためには機関保証をおすすめします。
 

Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー

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