更新日: 2019.01.10 ライフプラン

最終的には自己判断!ただ考えておきたい専業主婦のリスクと備え

執筆者 : 當舎緑

最終的には自己判断!ただ考えておきたい専業主婦のリスクと備え
女性の年代別の労働力を表すグラフは「M字カーブを描く」といわれています。

これは女性が結婚前に働き、結婚後に子どもが小さいうちは家事育児に専念し、子どもが少し大きくなった時点でまた働きだすという形です。小さい子どもを持つ年代の女性は、労働力としては落ち込むのです。

ところが、このM字カーブの底は年々上昇し、かなり米欧に近づいてきています。といっても、待機児童の問題もあり、子どもを預けられなければ、いったん専業主婦にならざるを得ないケースもあるでしょう。

今回はそんなときにぜひ覚えておきたい、リスクとその備えをお話しましょう。
當舎緑

Text:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

一番怖いのはキャリアがなくなること

それまでバリバリ働いてきた人が、育児等でいったん家庭に入ると、しばらくするとほとんどの場合「早く働きたい」と言います。
 
ただ、これは戻れるところがある人の話です。退職してしまうと、果たして次に再就職が見つかるのかどうか、不安は尽きないでしょう。
 
専業主婦になって、夫の収入で一生不自由なく過ごせれば一番よいでしょう。しかし今の世の中、安定企業が買収される、職場が縮小される、夫がガンになり働けない、など収入の道が閉ざされてしまうことも珍しくありません。
 
専業主婦になるのなら、退職しても、すぐに働ける準備があるけど必要性がないから働かないだけ、というのが理想的といえるでしょう。
 
もし、自分のキャリアに自信がない人は、雇用保険の職業訓練も考えておきましょう。
 
一定の要件を満たせば、退職後も補助を受けて受講できる講座がありますし、その間、支援給付として手当が給付されるケースもあります。近くの通学できる講座や通信講座など、気軽に検索することができますので、今は働かないけど、働ける「技術」を持っていることは心強いはずです。
(参考)
http://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/SCM/SCM101Scr02X/SCM101Scr02XInit.form
 

今の得か将来の得なのか、自分のお得を見定めておくこと

専業主婦になるとたくさんのメリットがあります。夫の会社から「家族手当」が給付されるケースもあるでしょうし、健康保険や国民年金の保険料は、社会保険に加入している夫の扶養家族でいる限り、1円も支払わなくて済みます。
 
さらに、配偶者控除として夫に38万円の所得控除がされますので、税制上のメリットもあります。
 
ただ、厚生労働省が発表している標準的な年金(モデル年金)は、厚生年金加入の夫と専業主婦の妻の年金合計は月23.8万円、共働きで夫婦とも厚生年金に40年加入の年金合計は月29.9万円。6.1万円の差をどう考えるかは個人しだいですが、私も社労士としてさまざまな人とお会いして感じるのは、やはり年金は「若いころからの準備が大事」ということです。
 
子育てが終わったから、急に老後資金の準備をしようといってもすぐに貯められるわけではありません。今の「得」をとるのであれば、しっかりと将来の老後資金を考える必要があります。
 

税制上の改正には注意しておくこと

働く妻には「壁」があると思っている人が多いものです。103万円の壁、106万円の壁、そして130万円の壁とさまざまな壁を気にしていると、働きだしても壁が気になって働き方をセーブすることもありますし、壁の意味を取り間違えると、あとで税金や保険料を計算し直す羽目になることもあります。
 
平成30年から適用となるのは、配偶者控除、配偶者特別控除改正です。
 
これまで妻のみの収入で見ていた配偶者特別控除が、夫の収入によっては逓減、消失します。収入のない専業主婦であれば、夫の給与収入が1220万円以上(所得1000万円以上)のとき、これまで受けていた38万円の配偶者控除が受けられなくなる、すなわち税負担が増えるということです。
 
これまでより手取りが減る分をどうやりくりするのか、そして、平成30年には所得税、平成31年には住民税にこの改正が適用されます。今後は専業主婦の税制上のメリットが減っていく方向性となることから、手取りが少なくなる分、改正に注意しながら家計管理を厳しくせざるを得ないでしょう。
 
今後も一生専業主婦でいる人は少なくなる傾向でしょうが、いったん家庭に入るという場面はなくならないのではないかと思います。
 
そんなときに、目先のメリット・デメリットだけでなく、長いライフプランを通して損得とリスク管理を考えられる目を養うことが必要となるでしょう。
 
Text:當舎 緑(とうしゃ・みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP

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