最終更新日: 2019.01.11 公開日: 2018.03.23
暮らし

身近な電気の話㉚ 政府が洋上「風力発電」を後押し

再生エネルギー開発を加速するため、政府は洋上風力発電開発に本腰を入れることになりました。

沖合の一般海域で洋上風力発電の開発を推進する新しい法案を今国会に提出する方針です
 
藤森禮一郎

Text:

Text:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

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藤森禮一郎

執筆者:

Text:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

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洋上風力開発の基本方針を策定

現状では都道府県が定める条例で、3〜5年で海の占用利用期限が切れてしまうほか、統一的な海域利用ルールも整備されていないので、風力発電事業者にとっては事業の先行きに見通しが立てにくく、洋上風力発電は太陽光発電に比べ事業化が遅れているのが現状です。
 
沖合の風力発電について新法では、政府が洋上風力開発の基本方針を策定して、「導入促進区域」を指定します。
 
指定区域内では事業者に長期間にわたって占用利用を認めることにより、事業化に弾みをつけることにしています。
 
占用期間は、およそ30年を見込んでいます。プロジェクトは公募によるとし、発電コストの低さなどを考慮して事業者を選定して、発電設備の設置認可をする仕組みを作ることにしています。
 
現在、沖合で風力発電事業を行う場合、一般海域の利用に関しては都道府県の条例に従う必要があり、自治体によっても異なりますが、事業の占用認定期間は3〜5年と短く、延長するには複雑な手続きが必要です。
 
漁業関係者や地域住民との調整も必要で、事業者にとっては事業化への最大の障壁になっていました。
 
港湾内の風力発電については2016年に港湾法が改正され、公募によって事業を選定する制度ができており、すでに6つの計画が進められています。
 
経産省と国土交通省との間で、電気事業法と港湾法に基づく統一技術基準の策定についても、検討が進められています。
 
欧州では洋上風力発電が盛んになってきており、国が適地を決め事業を支援する制度を設け導入を加速しています。国の主導によりコスト低減などで成果を上げているといわれています。
 
わが国でも、欧州のように、国が導入区域を指定し、事業者に長期間の占用利用権を付与する枠組みが整えば、手続きの簡素化が進み資金調達もしやすくなります。
 
こうした国の支援制度があれば洋上風力発電も太陽光のように導入が加速するのでと期待されます。
 

開発が遅れている日本の風力発電

政府は再生可能エネルギーの発電割合を、現在の15%から30年には22〜24%にまで高める目標を掲げていますが、その実現が危ぶまれています。太陽光発電に比べ風力発電等の開発が遅れているからです。
 
そこで、洋上風力後押し政策に注力することになったのです。沖合の洋上風力は騒音や景観への影響も少なく、何より陸上に比べて風況が優れているので、大型発電所の建設が期待できます。
 
世界の風力発電市場が洋上風力に向かうなか、海洋国日本としても洋上風力発電を、再生可能エネルギー利用拡大の切り札とすることで、風力発電産業を強化したい狙いもあります。ただ技術的課題もあります。水深が深いのです。
 

世界の電力の4%は風力で賄われており、さらに加速が!

世界の風力発電は2016年末時点で約33万台、4億8700万kWに達しています(日本風力発電協会資料より)。設備規模で単純比較すると、この規模は日本のすべて発電設備(約2.9億kW)を上回る数量です。
 
16年には約3万台、5500万kWが新たに建設されました。世界の電力の4%は風力で賄われています。かなり早いペースで建設が進んでいます。
 
風力発電の市場は欧州が先行していましたが、近年は米国、中国、アジアが追い上げ、さらに新興国へと市場は広がりを見せています。
 
欧州市場ではすでに陸上の風力発電はピークを過ぎており、洋上風力へとシフトしつつあります。この流れをリードしているのがイギリス、ドイツ、オランダです。
 
いずれの国も、環境上の理由により陸上風力の適地がなくなり、建設が困難になってきていることが背景にあります。
 
北海やバルト海は水深がおよそ20〜30mの大陸棚で、数キロ先まで続く遠浅で「ウインドファーム」型の大規模な集中立地に適しています。
 
これが日本近海と異なるところです。遮る構築物のない海洋は、陸上部より風況が良いのも魅力的です。大出力発電所を建設できるからです。
 
しかし別な見方をすると、欧州地域は日射量が少なく太陽光発電に向いていない地域でもあるのです。また、大きく高い山もありませんから、水力発電開発にも向いていません。
 
ですから、これらの地域にとって風力傾斜は当然の選択でしょう。欧州における洋上風力は累計で1300万kWに達しており、さらに2000万kWを上回る計画が進められているようです。
 
うらやましく思う人もいますが、再生可能エネルギー開発は地域事情によるのです。
 
Text:藤森 禮一郎(ふじもり れいいちろう)
フリージャーナリスト



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