最終更新日: 2019.01.11 公開日: 2018.04.07
暮らし

身近な電気の話㉛ 太陽光発電「電気お預かり」制度

東京電力ホールディング(HD)の電力小売り会社・東京電力エナジーパートナー(EP)は、太陽光発電をもつ家庭を対象に、余剰電力を有効活用できる「電気お預かり」制度の実証試験に取り組むことになりました。

これは、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)による太陽光の価格が引き下げられてきていることや、第一期の固定価格買取の終了期限が迫ってきていることに対応するための措置です。
 
藤森禮一郎

Text:

Text:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

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藤森禮一郎

執筆者:

Text:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

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ノウハウを蓄積する実証実験

実証実験は、トヨタウッドユーホーム(TWH 宇都宮市)と共同で、同社が栃木県小山市、宇都宮市、群馬県玉村町で開発する新規分譲地550区画でモニターを募集し、IoT(モノのインターネット)技術を活用して18年度末まで、スマートタウンプロジェクトを実施します。
 
太陽光パネルを持ち東電EPから電気を購入する家庭が対象になります。
 
具体的な方法としては、スマートメーター(次世代電力量計)を通じて、昼間に自家消費で使いきれずに余った太陽光の余剰電力を計測し、その余剰電力を東電EPが一時的に預かったものとみなし、夜間などほかの時間帯で消費することができる(実際には料金で充当する)ようにするものです。ほかの家庭とシェアする方法も合わせて検討するそうです。
 
実証実験では、モニター家庭から太陽光発電量と自家消費電力量のデータ提供を受け、サービスを実施した場合の運用のノウハウを蓄積するとともに、サービスに伴う料金水準などを検討することにしています。
 

直面する「2019年問題」

太陽光発電をめぐっては、導入量の増大に伴いさまざまな課題が浮上してきています。その一つが「2019年問題」です。
 
これは、FIT制度に先駆けて2009年度からスタートした余剰電力買取制度で、10年間の期限が設定された住宅用太陽光発電が、19年11月から順次期限終了を迎える問題です。
 
期限内は電力会社に買い取り義務が課されているので、高額な料金(1kWhあたり48円)で安心して引き取ってもらっています。しかし、期限が終了すると買い取り義務もなくなり、自由な市場での売買に切り替わります。
 
資源エネルギー庁によると、期限切れ案件の量は19年中に約40万件・120万kWになると予想されています。19年度で区切ると56万件・300万kWに増えると見込まれています。
 
その後も数量は毎年増え続け、12年にスタートしたFIT制度対象電源になると、その数量はさらに増大します。
 
電力会社の電気を受電しながら太陽光発電をしている需要家は、現行の仕組みでは、①自家用蓄電池か電気自動車(EV)の蓄電池と組み合わせて自家消費する、②どこかの小売り電気事業者か電力売買仲介事業者(アグリゲーター)と売電契約を結んで売電するかの、いずれかの方法を選択することになります。
 

問題解決に期待される「電気お預かり」

そこで気になるのが買取価格です。09年の制度入当初の、48円の高値は期待できないのは勿論です。FIT制度も40円台で始まりましたが、その後制度改正もあり買取価格は値下がりを続けています。
 
制度当初、買取価格が売電料金より高く、売電により利益が見込めたので、自家消費より売電量を最大にしようとする、需要家が多く見られました。
 
ところが、その後発電コストも下がり、19年度は24円と電力会社からの売電価格とほぼ同額になってきました。その結果、自家消費のほうが大きくなってきそうなのです。
 
もう一つ、売電契約もそう簡単ではありません。小売事業者や仲介事業者が契約切り替えを渋ることもありますし、契約先の小売事業者が倒産するなどして、一時的に余剰電力に買い手がつかない事態も予想されます。
 
また、一般電力との系統接続に不具合が出ると、太陽光発電の停止と同時に住宅内の電力供給も遮断(停電)される事態も想定されます。実際に取引しようとすると、電気は取り扱いが難しい商品なのです。
 
こうした問題を解決してくれると期待されるのが「電気お預かり」の仕組みです。蓄電池にしても電気自動車(EV)の蓄電池にしても、太陽光発電余剰電力の受け皿として簡便に利用するにしては、技術面で課題が残されています。
 
コスト問題もあります。電力市場で取引するにはリスクがあります。
 
「電気お預かり」サービスが実用化されれば、銀行の普通預金口座のような使い方ができ、おつり貯金のような感覚で便利になります。住宅用発電をしている需要家にとっては安心です。
 

課題も残る太陽光発電

それでも太陽光発電には課題が残ります。パネルの製品寿命がくることです。
 
買取期間を過ぎても、5〜10年間は自家発電などで使えますが、その後は産業廃棄物として自らで処分しなければいけません。処分費用は結構かかります。
 
FIT制度料金では資本費の5%を処分費用として計上しなさいとなっていますが、実際に処理費用を積み立てている事業者はほとんどいないのが実情です。
 
パネルの廃棄対策について、経産省は現在専門家による検討を進めています。CO2排出がない環境対策上の長所がある太陽光発電は、天候に左右される運転上の難しさや、廃棄物対策の難しさなどの短所も併せ持っています。運転期間が長くなり発電量が増大すると、いやでも短所との付き合いが始まります。
 
Text:藤森 禮一郎(ふじもり れいいちろう)
フリージャーナリスト



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