更新日: 2019.01.10 その他暮らし

絶景を見る、グルメを楽しむ、観光列車の魅力

執筆者 : 黒木達也

絶景を見る、グルメを楽しむ、観光列車の魅力
列車の旅を楽しんでもらうために、最近では鉄道会社がいろいろなタイプの観光列車を走らせています。
 
豪華な内装と最高級の食事、数日かけて旅をする高額な列車旅は、予約が取れないほど人気になっています。
 
しかし比較的低価格で、日常を離れて楽しい思い出を満喫できる観光列車がいくつもあります。
黒木達也

Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

豪華列車でなくても十分楽しめる

JR九州が始めた豪華列車「ななつ星」は、最高クラスは100万円以上かかります。魅力溢れる豪華な車内を満喫し、由布院、阿蘇など九州各地をゆったり回遊する企画が人気を博し、なかなか予約が取れない列車として有名になりました。
 
これに倣って、JR東日本は「四季島」、JR西日本は「瑞風」という同じコンセプトの列車運行を開始、高額でも予約が取れないほどの人気を博しています。
 
これら豪華列車に乗るためには、海外旅行より高い予算が必要です。しかし、こうした豪華な列車旅でなくても、比較的安く魅力ある列車旅を楽しむことができます。
 
特急料金が必要な列車は少なく、多くの観光列車は快速扱いで、指定券だけ購入すれば気軽に乗車できます。列車によっては、指定券が要らない席もあります。
 
観光列車にも、いくつかのタイプがあります。
 
具体的には、1.座席など車内が工夫され絶景を楽しむ列車、2.人気の高いSL(蒸気機関車)を復活させ乗車を楽しむ列車、3.沿線の食材を利用したグルメを楽しむ列車、などでそれぞれ魅力溢れる列車旅を提供してくれます。
 
どの観光列車も、家族旅行やグループ旅行に適しています。ただし、休日だけの運行、観光シーズンのみの運行が多く、いつでも乗れるわけではありませんので、事前にダイヤを確認してください。
 

絶景の旅を楽しむ観光列車

外の風景を楽しむために、座席が窓側を向いている、窓が大きいか窓自体がない、といった車両に工夫がされ絶景を満喫できます。
 
北海道を走る「釧路湿原ノロッコ」(釧網線)、「富良野・美瑛ノロッコ」(富良野線)、東北を走る「リゾートしらかみ」(五能線)、「きらきらうえつ(羽越線)」、山陰を走る「奥出雲おろち」(木次線)、四国を走る「しまんトロッコ」(予土線)などがあります。
 
ほとんど座席指定券だけで乗車できます。
 
この中では、秋田・青森にまたがる五能線で運行されている「リゾートしらかみ」が、絶景を楽しむタイプの観光列車の先駆けでもあり、運行本数も多く有名です。
 
秋田を起点に能代を経由して弘前・青森を結んでおり、日本海の絶景を間近に見ながら、世界遺産の白神山地へもアクセスできる観光列車です。
 
通常の気動車を改造したもので、グループ用のボックス席もあり、津軽三味線の実演なども行われます。比較的運行期間も長く、1日3~4往復も運転される日があります。
 
行きたい観光地で途中下車して観光し、後発の列車に乗車できるダイヤが組まれています。
 

普段は乗れない人気のSLに乗車

子どもから大人まで、SL人気は衰えていません。とくに定期運行をする列車から引退して久しく、シニア世代に郷愁を感じる人が多いと思います。
 
機関車自体が定期運行を終え保存されていたものを、実際に動かせるように整備し、観光列車として全国で復活してきました。どのSL列車も座席指定券を購入するだけで乗車できます。
 
JRでは、釜石線を走る「SL銀河」、磐越西線を走る「SLばんえつ物語」、上越線を走る「SLみなかみ」、山口線を走る「SLやまぐち」、肥薩線を走る「SL人吉」などが有名で、各地で運行されています。
 
客車は新しく製造された車両で冷暖房完備です。この中では「SLやまぐち」が運行の開始は早く、山口線の始発駅である新山口(旧小郡)から観光地の津和野を結び、観光シーズンの週末を中心に1日1往復運行されます。
 
JR以外の路線でもSLは健在です。静岡県の大井川鉄道は、SL運行の歴史も古く、実際に数多くのSLが在籍しているほか、国鉄時代に使われた客車も所有しています。
 
観光シーズンには「SL川根路」を1日に3往復程度運行し、時期によっては、子どもに人気のある「機関車トーマス」のヘッドマークを付けた列車が走ります。
 
埼玉県の秩父鉄道でも週末を中心に「SLバレオエクスプレス」を運行しています。最近では、東武鉄道が栃木県の今市・鬼怒川周辺で「SL大樹」の運行を始めました。
 

車窓を見ながらグルメを楽しむ

風景を楽しむだけでなく、2万円もしくはそれ以下の料金で、グルメ旅を満喫できる列車もあります。新幹線や長距離の特急の多くが食堂車を廃止したため、こうした食堂車を懐かしむ人の心も捉えているのがこの観光列車です。
 
本格的なランチを提供することが、このグルメ列車のコンセプトですが、運行時間帯によっては、軽食中心となり低料金で乗車できるタイプもあります。
 
東北ではJR八戸線の「東北エモーション」、長野県・しなの鉄道の「ろくもん」、九州・肥薩おれんじ鉄道の「おれんじ食堂」などが、ランチタイムに合わせた食事付きのグルメを提供しています。
 
しなの鉄道、肥薩おれんじ鉄道は、新幹線と平行する旧JRから分離された第3セクターの路線で、自社路線をPRするためにこの列車を走らせています。
 
いずれの路線も2時間に満たない乗車時間ですが、そのほとんどを寛ぎながら、おいしい食事を楽しむことができます。そのため、どの列車もできるだけ地場の食材を準備し、本格的なランチを提供しています。
 
列車の内装も、専門デザイナーに依頼し豪華な内装に仕上げられています。価格的に見ても満足感がかなり高く、予約を取るのは結構大変です。
 
変わり種としては、新潟県の上越妙高(北陸新幹線停車駅)を起点に、県内の酒どころを回る日本酒と食をテーマにした「越乃Shu*Kura」が運行されています。
 
文字どおり、新潟のお酒を楽しむ酒好きにはたまらない観光列車です。
 
比較的安い予算で楽しむことができる観光列車が多いので、夏休みなどに、家族やグループで、自分たちの好みにあったプランを選び、乗車されることをお勧めします。
 
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職