最終更新日:2019.01.11 公開日:2018.06.23
暮らし

身近な電気の話 ㊵太陽光の「2019年問題」 

わが国の電力市場で、太陽光発電の「2019年問題」に関心が高まっています。メディアで取り上げられることも多くなりました。
 
「えっ それって何のこと?」ご存じない人も多いかと思います。
 
「2019年問題」とは、2009年11月に開始した余剰電力買取制度(余った太陽光発電の電気を電力会社が高い値段で買い取ってくれる制度、旧FIT制度)の固定価格買取期間10年が、2019年に最初の満了を迎えることを指しています。
 
期間限定の制度ですから、いずれこの日が来ることは当初からわかっていたことです。それがなぜ?
 
この夏にも決定される第5次エネルギー基本計画で、政府は太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギーを「主力電源化」する方針だと聞いています。
 
そんな矢先、太陽光発電の何が問題なのでしょうか。
 

期間終了で、見込み違いの売電価格?現FIT制度では契約に問題はなし

消費者からすると価格が下がることは悪いことではありませんが、市場に混乱が生じるかもしれません。多少の不安はあります。
 
政府の第5次エネルギー基本計画では、「再生エネルギーの主力電源化」を目指していて、2030年の電源ミックスでは再生可能エネルギーの比率を22〜24%としたい考えです。
 
現在は10%程度ですから、3倍増を目指す勢いが必要です。
 
「主力電源を目指す再エネの主力電源」は実は太陽光発電です。現在は再エネの90%が太陽光に依存しています。風力が本格導入されるまでは、この傾向は変わりません。
 
ですから、期間満了発電の価格と引き取り先は市場にとっても不安材料になるのです。場合によっては、再エネ導入のブレーキにもなりかねません。
 
現行FIT制度下で契約した太陽光は、最初から価格問題には厳しく対応しており、心配はないと思います。20年間の買取期間終了後の売電価格は1kW時11円程度と織り込んで事業認可を受けています。
 
今回対象となるのは、2009年11月〜2015年1月までの間に家庭用太陽光発電を設置し、電力会社と売電契約(電力会社に余剰電力の買取を義務付けている)を結んでいる人たちです。
 

いずれ行く道、さまよえる太陽光

期間終了の対象者は、初年度(19年度)で約53万戸と見込まれています。制度満了の23年度までだと160万戸に達するそうです。住宅用発電ですから、一戸一戸の発電能力は微々たるものです。
 
しかし、ちりも積もれば……で総計の発電設備能力は700万kWに達します。
 
単純には比較できませんが、大型の火力発電所7基分相当ですから、その動向は今後の価格動向などの面で市場へ影響が懸念されます。
 
自由化されている電力市場ですから、従来のように電力会社に法的な買取義務はなくなっています。選択は太陽光発電を所有している家庭、ということになります。
 
市場に開放される家庭用太陽光発電は、どこに行くのでしょうか。太陽光発電家庭の選択肢は大きく3つ考えられます。
 
1.契約が満了となった時点で、それまで契約していた電力会社に余剰電力を無償で引き取ってもらう。
2.極安価格でもいいから、新しい電気事業者と売電契約を結び、引き取ってもらう。
3.余剰電力を蓄電池などに蓄電し、自家消費を拡大する。
   
それぞれ詳しく見てみましょう。
 
1.については、満了時には減価償却を終えていますから、太陽光家庭では電力会社からの買電より安く使えます、余剰電力を無償で引き取ってもらっても損はありません。手続きだけで済みます。
 
2.については、太陽光発電の「環境価値」に着目し、買電契約を希望する電気事業者も出てきています。価格で折り合えば「相対で売電契約」を結ぶことが可能です。ただし契約のリスクもありますが自己責任です。
 
3.の自家消費拡大策は複数の方法があります。電気自動車の蓄電池(バッテリー)を活用、昼間の余剰電力を蓄えておき、夜間など必要な時に引き出して使えるように工夫することです。
 
このニーズに対応した新しいタイプの電気自動車も販売されるようになりました。調べてみると良いでしょう。
 
次は「余情電力お預かりサービス」の活用です。家庭の電力需要は昼間少なく夜に多いのが一般的です。そこで、東京電力は昼間の余剰電力を預かるサービスを新しくスタートさせました。
 
自宅で蓄電システムを持つのは面倒だしコストもかかる、という人にお勧めです。電力会社が余剰分を蓄電して出し入れ自由なサービスですから便利ですね。
 
そして「ヒートポンプ型電気温水給湯機」の活用です。電気温水器は通常、安価な夜間の電気で温水を蓄えるサービスですが、契約を変更して昼間の余剰も活用できるように契約を変更する方法です。
 
契約の変更だけで技術的問題もないので、電気自動車の活用と同様、実現しやすいですね。
 
たかが160万件の話ですが、太陽光発電が普及してくると多様な活用方法が出てきますから、さまよえる太陽光の行方は大いに参考になりますね。
 
地域単位で多数の太陽光発電をネットワークして、地域単位の新しい電力供給システムを目指す事業者も登場してきています。
 
太陽光発電に風力、バイオマス発電等と組み合わせ「地産地消」のビジネスで地域活性化を目指そうというわけです。すでに欧州などで実用事例が出てきています。
 
Text:藤森 禮一郎(ふじもり れいいちろう)
フリージャーナリスト

藤森禮一郎

執筆者:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

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