最終更新日:2019.08.30 公開日:2018.10.10
暮らし

貧困のクローズアップ?児童養護施設退所者の困難。高校卒業後の進学を後押しするお金

児童養護施設退所者など社会的養護を必要とする子どもはさまざまな困難を抱えています。そのひとつに大学等進学があります。
 
大学等進学する場合には、学費のみならず生活費も自力で工面しなければなりません。
 
ここ数年、貧困の子供がクローズアップされるようになり、児童養護施設退所者等の進学を後押しする奨学金等が創設等されています。
 
新美昌也

執筆者:

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

詳細はこちら
新美昌也

執筆者:

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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児童養護施設ってどんなところ?

児童養護施設は保護者のいない児童、父母から虐待を受けている児童、父母から養育を放棄されている児童等が入所する児童福祉施設です。できるだけ一般的な家庭生活を提供し、退所後に自立した生活を営めるように支援しています。
 
概ね2~18歳の子どもたち約2.7万人が共同で暮らしています。入所児童の平均在籍期間は4.9年ですが、10年以上の在籍期間の児童が13.8%となっています(平成28年10月1日現在)。
 
児童養護施設には日々の養育を担う児童指導員や保育士、栄養面や食生活を支援する栄養士や調理師、虐待を受けた子どもたちを心理的にサポートする心理療法担当職員など様々な専門職が子どもたちの生活を支えています。
 

児童養護施設退所者の困難

児童養護施設では、原則18歳(措置延長の場合は20歳)になると退所しなければならず、高校卒業後、就職して自立を余儀なくされていました。施設で暮らす子どもたちは、多くは保護者に頼れないため、高校卒業前に住む場所探しや電気やガスなどの手続きなど、自立して生活する準備を自らしなければなりません。
 
しかし、18歳は未成年ですので、就職やアパートの賃貸、大学等へ進学する際などの保証人を施設長などに頼らざるを得ません。経済的な問題から、いきなり1人暮らしをして仕事をするのは厳しいため、住み込みや寮がある仕事を選ばざるを得ないといった現実もあります。大学等進学は生活費も学費も自力で工面しなければいけない困難を抱えています。
 
平成29年4月1日より児童擁護施設等への施設入所措置を受けていた子どもで18歳(延長措置の場合は20歳)到達により装置解除された子どものうち、自立のための支援を継続して行うことが適当な場合には、原則22歳の年度末まで、個々の状況に応じて引き続き支援を受けることができるようになりました。
 
また、就職やアパート等の賃貸、大学等へ進学する際に支障がないように「身元保証人確保対策事業実施要綱」が定められ平成29年4月1日から実施されています。これに伴い、従来の「身元保証人確保対策事業の実施については」廃止されました。新しい「身元保証人確保対策事業」では、保証範囲に、大学等入学時の身元保証が加わりました。
 

高校卒業後の進路

全高卒者の進学率は大学等53.2%、専修学校等23.7%であるのに対して、児童養護施設の子どもの進学率は大学12.3%、専修学校等10.3%となっています(平成25年5月1日現在)。
 
先輩に大学等進学者が少ないので、退所したら就職するものと思っている、大学等進学をイメージできないなど理由は様々だと思いますが、大学等進学を希望しても経済的な問題で諦めざるを得ない現実があります。この問題を解決すべく、国や大学等では大学等進学を後押しする支援制度を設けています。
 

大学等進学を後押しする支援策

児童擁護施設等の子どもの大学等進学を後押しする支援策をいくつか紹介します。
 
●日本学生支援機構の給付型奨学金
月額給付額(返済不要)は、自宅通学の場合、国公立2万円、私立3万円、自宅外通学の場合、国公立3万円、私立4万円です。「社会的養護を必要とする人」には、「自宅外通学」の月額が支給されます。さらに、一時金として24万円が振り込まれます(初回の振込時に1回限り)。貸与型との併用が可能です。進学前の申込みのみとなり、進学後の申込みはできませんので注意しましょう。
 
●日本学生支援機構の貸与奨学金
無利息の第一種奨学金(予約採用)の学力基準(5段階評価で3.5以上)が実質的に撤廃されました。
 
●児童養護施設退所者等に対する自立支援資金
社会福祉協議会が運営しています。就職や進学又は資格取得を希望する児童擁護施設等を退所した方等に必要な資金を無利子で貸してくれます。家賃や生活費の貸付は就職後5年間、資格取得の貸付は就職後2年間、引き続き就業した場合は、貸付金の返還が免除されます。生活支援費は月額5万円以内、家賃支援費は1か月当たりの家賃相当額(生活保護制度の額)、資格取得支援費は25万円以内です。
 
●児童養護施設退所者等を対象にした大学独自の奨学金
入学金や授業料の減免などが受けられます。経済援助学費減免奨学金制度(日本福祉大学)、コミュニティー福祉学部田中孝奨学金(立教大学コミュニティー福祉学部)、チャレンジ支援奨学金制度(日本社会事業大学)、沖縄大学後援会支援特別奨学金(沖縄大学)、紺碧の空奨学金(早稲田大学)、至誠館大学学生奨学制度(至誠館大学)、児童福祉スカラシップ(静岡福祉大学)、全国児童養護施設推薦入学(青山学院大学)、児童養護施設・里親家庭等奨学生(奈良佐保短期大学)などがあります。
 
例えば、紺碧の空奨学金(早稲田大学)では、入学検定料および入学金の免除、授業料・実験実習費等・その他諸経費の全額免除、月額9万円の給付(返済不要)を受けられます。
 
●児童養護施設退所者等を対象にした民間団体等の奨学金
全国児童養護施設協議会が「就学・就労等に係る奨学金等各種支援制度等一覧」を公開しています。全国児童養護施設協議会のホームページをご参照ください。
 
●高等教育等の無償化
世帯年収380万円未満の世帯を対象に、収入に応じ段階的に大学等の入学金、授業料の減免の他、生活費についても返済不要の給付型奨学金を支給することが検討されています。2020年度に実施予定です。
 
<参考・参照>
社会的養護の現状について(厚生労働省/平成26年3月)
児童擁護施設等について(厚生労働省「第14回新たな社会的養護のあり方に対する検討会/平成29年5月26日」)
社会的養護自立支援事業等の実施について(雇児発0331第10号/平成29年3月31日)
児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業のご案内(東京都社会福祉協議会)
就学・就労等に係る奨学金等 各種支援制度等一覧[平成29年度調査](全国児童養護施設協議会/平成30年5月)
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
 

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