更新日: 2019.06.28 その他暮らし

同棲を解消したAさんとBさん。離婚時のように財産分与が発生するのか

執筆者 : 柘植輝

同棲を解消したAさんとBさん。離婚時のように財産分与が発生するのか
離婚して配偶者と別れるとき、財産分与が行われることがあります。
では、婚姻には至らないものの、同棲をしていたカップルが同棲を解消したらどうなるのでしょうか。
同棲の解消時にも離婚の場合と同様、財産分与が行われることがあるのでしょうか。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

同棲を解消したAさんとBさん

AさんとBさんは3年少々同棲していましたが、つい最近別れて同棲を解消しました。2人は同棲していたものの、婚姻の意思についてはまったくなく、お金もお互い別々に管理していました。
 
また、生活についても一般的な夫婦のように「協力して営んでいる」というほどのものではありませんでした。
そのような状況にあったため、AさんとBさんは特に財産分与などすることなく、お互いに自分の荷物だけを持って同棲を解消しました。
 
ところが、少ししてからAさんは、離婚時に財産分与が行われることを知りました。そして、Bさんと同棲していた期間について次のように考えるようになりました。
 
「私たちは婚姻届こそ出していませんでしたが、3年も同棲していました。一緒に住んでいた以上、財産分与してもらえないのでしょうか?」
 
さて、AさんとBさんの同棲解消は、離婚のように財産分与の対象となるのでしょうか。
 

ただの同棲では財産分与は発生しない

結論を先に述べると、この事例において、Aさんが財産分与を受けられる可能性は低いと考えていいでしょう。
 
なぜなら、財産分与とは離婚時に行う、婚姻中に築き上げた財産の精算のことを指すからです。(民法768条)
 
基本的に財産分与が発生する関係と認められるには、婚姻届を提出し、法律上、婚姻関係になければなりません。
 
ただし、法律上の夫婦となっていなくとも、お互いが協力して生活を営んでおり、婚姻届を提出してないないだけで、そのほかの点については普通の夫婦と何ら変わらないような状況においては、婚姻に準ずる関係(いわゆる内縁)として財産分与の対象となる可能性があると、例外的に判断されることもあります。(最判昭33・4・11など)
 
ところが、AさんとBさんの間には婚姻の意思も存在しなれば、夫婦のように協力して生活を営んでいたといえるほどの実績も存在しません。そのような点を考えると、AさんとBさんの関係は、婚姻に準ずる関係にあるとまではいえず、単なる同棲にとどまっています。以上のような理由から、本事例におけるAさんが同棲の解消時に、財産分与を受けられる可能性は低いと考えられるのです。
 
ときどき、「○年同棲していれば同棲の解消時に財産分与が発生する」といわれることがありますが、実際にはそうではありません。
 
もちろん、財産分与の判断について同棲の期間が、まったく関係ないとまでは言い切れませんが、基本的には生活の様子などから「実態がどうであるか」によって、判断されることになります。
一概に、期間の長短だけで判断されるわけではない、ということに注意してください。
 

同棲は婚姻とは異なる関係です

同棲して一緒に生活していても、お互いが夫婦である、あるいはそうありたいと意志を持ち、協力して生活を営んでいるような状況でもない限り、それは単なる同棲にとどまり、財産分与の対象とはなりえません。婚姻によって認められる権利や義務などは、基本的に婚姻届を提出し、法律上夫婦として扱われる場合に発生します。
 
同棲は婚姻とは異なる関係であり、一緒に生活しているからといって、婚姻と同様の法律関係が生じるものではないと理解しておいてください。
 
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
 

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