公開日: 2019.12.10 暮らし

生活保護世帯の子どもは大学進学を諦めなければならない?進学支援策はないの?

執筆者 : 新美昌也

厚生労働省の資料によると、生活保護世帯の子どもの大学等進学率は35.3%と、全体の進学率73.0%と比べて半分以下です。生活保護世帯の子どもが大学等に進学するには、経済的に大きなハードルが存在します。
 
大卒と高卒では生涯賃金も大きく異なり、子どもの進学にも大きな影響をおよぼします。生活保護世帯の子どもが成人しても生活保護を利用する可能性が高い、という調査結果もあります。国は「貧困の連鎖」を断ち切るためにさまざまな施策を講じています。
 
 
新美昌也

執筆者:

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

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新美昌也

執筆者:

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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生活保護世帯の子どもが大学等に進学するには

現在の生活保護制度では、生活保護を受けながらの大学等進学は認められていません。18歳となり高校を卒業すると「稼働能力がある」(生活保護法4条1項)とみなされ、自立を目指して、働いて収入を得ることが求められます。
 
生活保護世帯の子どもが、大学等に進学をする場合には、「世帯分離」という手続きを取り、生活保護世帯から離れ、自立して生活する必要があります(必ずしも別居する必要はありません)。学費のほか、生活費、国民健康保険料、国民年金保険料なども全て子どもの自己負担になります。
 
一方、「世帯分離」によって、当該世帯の保護費も大きく減り、親の生活もより苦しくなります。このことから大学等への進学を断念する子どもが多くいます。
 

生活保護世帯の子どもの大学等進学率の低さ

厚生労働省が平成30年6月25日に公表した「生活保護世帯出身の大学生等の生活実態調査」の結果によると、生活保護世帯の子どもの大学等進学率は35.3%。内訳は、大学・短期大学が19.0%、専修学校・各種学校が16.3%となっています。
 
一方、全世帯の大学等進学率は73.0%。このうち大学・短期大学が52.0%、専修学校・各種学校が20.9%となっています。このように、生活保護世帯の子どもの大学等進学率は、全世帯の進学率と比べて半分以下となっています。
 

受験や入学にかかった費用と準備方法

同調査によると、受験や入学にかかった費用(項目ごとに聞き取り)をみると、平均金額は、「受験の教材」1万7600円、「受験料」4万4800円、「受験のための交通費・宿泊費」4800円、「入学金」27万8700円、「入学時の準備経費(入学時の衣類・鞄等)」9万7300円となっています。
 
受験や入学に要する費用の準備方法は、「奨学金を利用した」が60.0%ともっとも多く、「すべて家庭(親等)が準備した」25.6%、「家庭(親等)と自分で準備した」25.2%、「生活福祉資金(就学支度費)を利用した」21.5%、「すべて自分がアルバイトなどをして用意した」13.0%、「金融機関から借り入れた」4.9%などとなっています。
 

生活保護世帯の大学生等の生活実態

生活保護世帯の子どもが、大学等に進学をする場合には、「世帯分離」という手続きを取り、生活保護世帯から離れ、自立して生活する必要があります。自ら奨学金やアルバイトで学費や生活費を賄わなければなりません。
 
同調査によれば、進学後の生活状況について、生活保護世帯出身者の年間収入状況は、「奨学金」107万7000円、「アルバイト」63万7000円となっています。JASSO調査(日本学生支援機構「平成28年度学生生活調査」)では、それぞれ、38万5000円、35万6000円となっています。
 
奨学金を利用している割合は86.5%で、JASSO調査の48.9%と比べて高くなっています。ただし、本調査は大学等の自宅生を対象としていますが、JASSO調査の値は、自宅生と自宅外生を含めた大学昼間部の学生の平均値のため、単純な比較はできません。アルバイトに従事している割合は、本調査(83.3%)とJASSO調査(83.6%)に違いは見られません。
 

生活保護世帯の子どもの大学等進学支援

生活保護世帯の子どもが、大学等に通うことには経済的に大きなハードルが存在します。現在の日本は基本的に学歴社会です。大卒でなければ取得できない資格や応募できる企業も限定されます。また、平均的に生涯賃金も大きく異なります。
 
学校卒業後フルタイムの正社員を続けた場合の60歳までの生涯賃金(退職金を含めない)は、男性は高校卒で2億1000万円、大学・大学院卒で2億7000万円、女性は高校卒で1億5000万円、大学・大学院卒で2億2000万円となっています(労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2018」)。
 
生活保護世帯の子どもが、大学等に通うことができないことは「貧困の連鎖」につながります。これを断ち切るため、国はさまざまな進学支援策を講じています。主な支援策をみてみましょう。

(1)高校生のアルバイト代等の収入認定除外

生活保護世帯に生活保護費以外の収入があった場合、原則、当該収入の分だけ保護費が減らされます。
 
しかし、高校生が奨学金やアルバイトで稼いだお金に関しては、使途によって収入から除外されています。学習塾や家庭教師の授業料、教材費、交通費などに充てた場合や大学等の受験料や入学金に充てる場合です。ただし、将来の大学等入学後の授業料に使う場合には収入から除外されません。
 
奨学金を受給する場合やアルバイトをする場合には、福祉事務所の生活保護担当者(ケースワーカー)に事前に相談してください。

(2)進学準備給付金・住宅扶助の減額なし

生活保護世帯の子どもが大学等に進学する場合、新生活の立ち上げ費用として、自宅通学生に10万円、自宅外通学生に30万円支給されます。また、「世帯分離」しても引き続き出身の生活保護世帯と同居して通学する場合は、生活保護費の子どもの分の「住宅扶助」の減額は行われません。

(3)給付型奨学金と授業料等減免

高等教育の修学支援新制度により、日本学生支援機構の給付型奨学金と大学等の授業料減免を受けることが可能です。大学等進学後も、引き続き生活保護世帯の父母等のもとから通学する場合は、国公立の大学・短大・専門学校では月額3万3300円、私立では月額4万2500円が給付されます。
 
自宅外生の場合は、国公立の大学・短大・専門学校では月額6万6700円、私立では月額7万5800円が給付されます。
 
授業料等の減免に関しては、例えば、国公立大学の入学金約28万円・授業料約54万円、私立大学の入学金約26万円・授業料約70万円が減免(年額・上限)になります。そのほかの学校種に関しては、高等教育の修学支援新制度でお確認ください。
 
なお、全ての学校が新制度の対象となっているわけではありません。特に、専門学校に関しては全体の約6割しか高等教育の修学支援新制度の対象校になっていませんので留意しましょう。
 
また、日本学生支援機構の貸与奨学金との併用が可能ですが、無利子の第一種奨学金は住民税非課税世帯の場合、基本的に利用できませんので、第二種奨学金を借りることになります。

(4)都道府県社会福祉協議会「生活福祉資金貸付制度(教育支援資金)」

高等教育の修学支援新制度は進学前には利用できません。入学前に必要な入学手続時納付金等の不足は、都道府県社会福祉協議会「生活福祉資金貸付制度(教育支援資金)」の就学支度費(50万円以内)の貸し付けを受けることが可能です。詳しくは、お住まいの市区町村の社会福祉協議会にお問い合わせください。
 

ひとり親家庭なら民間団体の給付型奨学金も活用しよう

生活保護世帯にはひとり親家庭も少なくないと思います。ひとり親家庭を対象にした民間団体の給付型奨学金を調べ活用しましょう。
 
例えば、公益財団法人明光教育研究所では、ひとり親家庭の子ども等を対象に「中学生等」最大30万円、「高校生等」最大50万円、「大学生等」最大70万円の返済不要の奨学金を支給しています(原則1年間、継続支給可)。学力基準もなく、ほかの奨学金との併用も可能です。
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー

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