更新日: 2020.11.10 その他暮らし

年収が低いシングルマザー(ファーザー)の実情と支援策

執筆者 : 新美昌也

年収が低いシングルマザー(ファーザー)の実情と支援策
シングルで子どもを育てる家庭が多くあります。シングルがゆえに、子どもの病気等で欠勤が増えるなどして、思うように収入が増えない家庭もあり、経済的にも精神的にも苦しい状況が続いています。
 
また、「身勝手に離婚するからだ」と理解が得がたいという悲しい実情も・・・。年収が低いシングル家庭の実情を確認した上で支援策を紹介します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

離婚件数・原因

離婚件数は、平成15年からおおむね減少傾向ですが、約20万8000件(平成30年)あります。離婚率(人口千対)は1.68です。これは、韓国、アメリカ、フランス、ドイツ、スウェーデン、イギリスよりは低く、イタリアよりは高い水準です。
 
母子以外の同居者がいる世帯を含めた全体の母子世帯数は約123万世帯、父子世帯数は約19万世帯あります。
 
母子世帯になった理由は、離婚が79.5%と最も多く、次いで未婚の母8.7%、死別8.0%となっています。一方、父子世帯になった理由は、離婚が75.6%と最も多く、次いで死別が19.0%となっています。前回の調査に比べ未婚の母が増加しています。
 
厚労省の調査時点での母子世帯の母の平均年齢は41.1歳、父子世帯の父の平均年齢は45.7歳となっています。末子の平均年齢は、母子世帯で11.3歳、父子世帯で12.8歳となっています。

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働いているのに低収入

母子家庭の81.8%、父子家庭の85.4%が就労しており、他の先進国に比べると高い水準にあります。
 
就労母子家庭のうち、「正規の職員・従業員」は44.2%、「パート・アルバイト等」は43.8%、就労父子家庭のうち、「正規の職員・従業員」は68.2%、「パート・アルバイト等」は6.4%となっています。母子家庭は一般の女性労働者と同様に非正規の割合が高いです。
 
母子家庭の母自身の平均年収は243万円(うち就労収入は200万円)です。
 
これは、「全世帯」の50%、「児童のいる世帯」の38%程度の水準です。父子家庭の父自身の平均年収は420万円(うち就労収入は398万円)となっています。なお、生活保護を受給している母子世帯及び父子世帯はともに約1割あります。
 
養育費の取り決めをしている離婚母子家庭は42.9%、離婚母子家庭は20.8%です。「協議離婚」は「その他の離婚」と比べて、養育費の「取り決めをしている」割合が低くなっています。養育費を現在も受給している離婚母子家庭は24.3%、離婚父子家庭は3.2%で、平均月額(養育費の額が決まっている世帯)は4万3707円となっています。
 
子どもの最終進学目標については、「大学・大学院」とする親は、母子世帯で46.1%、(同38.5%)、父子世帯で41.4%(同35.5%)となっています。
 
住居について、母子世帯では、「持ち家」に居住している世帯は35.0%となっており、「母本人の名義の持ち家」に居住している世帯は15.2%となっています。 父子世帯では、「持ち家」に居住している世帯は68.1%となっており、「父本人の名義の持ち家」に居住している世帯は49.4%となっています。

ひとり親家庭への経済的支援

上記で見たように、日本のシングルマザーの就業率は高いにも関わらず、非正規の割合が高いため就労収入は決して高くありません。子どもが小さいと、急に熱を出して、保育園から緊急の電話が入り、職場からの帰宅を余儀なくされたり、残業が難しいなどの理由から非正規で働かざるを得ないといった事情があります。
 
就労収入以外に養育費、遺族年金、児童扶養手当などの収入がありますが、養育費は確保が難しく、養育費の取り決めをしていない母子家庭も多く、取り決めをしている場合も養育費の金額は十分ではありません。そのため、子どもを大学等に進学させたいと思っていても、実際の進学率は全世帯の半分程度にとどまっています。
 
このような状況を踏まえ、国や自治体はひとり親家庭に対する支援として、「子育て・生活支援」「就業支援」「養育費の確保」「経済的支援」を推進しています。

子育て・生活支援

ひとり親家庭等が直面するさまざまな課題に対応するために相談に応じたり、ひとり親家庭の子どもに対し、放課後児童クラブ等の終了後などに、基本的な生活習慣の習得を支援。
 
学習支援や食事の提供等を行ったり、修学や疾病などで家事援助、保育等のサービスが必要となった際には、家庭生活支援員の派遣などを行っています。母子生活支援施設や公営住宅(当選確率が高い)などの支援も行っています。

就労支援

ハローワーク等との連携による自立支援プログラム策定や就業支援、能力開発等の給付金の支給などを行っています。給付には、自立支援教育訓練給付金、高等職業訓練促進給付金、高等学校卒業程度認定試験合格支援金などがあります。
 
例)
・自立支援教育訓練給付金
地方公共団体が指定する教育訓練講座(雇用保険制度の教育訓練給付の指定教育訓練講座など)を受講した母子家庭の母等に対して、講座終了後に、対象講座の受講料の6割相当額(上限、修学年数×20万円、最大80万円)を支給する。
 
・高等職業訓練促進給付金
看護師・保育士など、経済的自立に効果的な資格を取得するために1年以上養成機関等で修学する場合に、生活費の負担軽減のため高等職業訓練促進給付金(月額10万円(住民税課税世帯は月額7万500円)、上限4年、課程修了までの最後の12カ月は4万円加算)を支給する。
 
・高等学校卒業程度認定試験合格支援金
ひとり親家庭の親または児童が高卒認定試験合格のための講座を受け、これを修了した時及び合格した時に受講費用の一部(最大6割、上限15万円)を支給する。

養育費の確保

養育費の取得に関わる裁判費用の貸付、離婚届出時等における養育費取り決めの促進、養育費相談機関の創設・拡充などを行っています。なお、民事執行法等の一部改正(令和2年4月1日施行)により、債務者以外の第3者からの情報取得手続きの新設や財産開示手続きの見直しが行われました。

経済的支援

児童扶養手当、児童育成手当、ひとり親家庭等医療費助成、母子父子寡婦福祉資金などがあります。税金の優遇制度としては寡婦控除(所得控除)があり、所得税・住民税が軽減されます。国の教育ローンでは、金利・返済期間・保証料が優遇されます。
 
前年中の合計所得金額が125万円以下の方は住民税が非課税です。金融機関で預貯金、公社債などの預入、購入をする際に一定額までの利子が非課税になる利子非課税制度があります。その他、水道・下水道料金の免除、粗大ごみの処理手数料の免除、JR通勤定期の割引などが受けられます。
 
例)
・児童扶養手当
18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(障害児の場合は20歳未満)を監護する母、監護し、かつ生計を同じくする父または養育する者(祖父母等)に対し、手当を支給する。児童1人の場合、月額4万3160円(全部支給の場合・令和4月以降)。年6回支給。所得制限あり。
 
・母子父子寡婦福祉資金
児童を扶養しているひとり親に、(1)事業開始資金、(2)事業継続資金、(3)修学資金、(4)技能習得資金、(5)修業資金、(6)就職支度資金、(7)医療介護資金、(8)生活資金、(9)住宅資金、(10)転宅資金、(11)就学支度資金、(12)結婚資金を無利子または低利子で貸し付ける。

まとめ

ひとり親家庭にはさまざまな支援策がありますが、知られていない支援策も多く、利用されていない現実があります。長時間労働と育児で疲れていて、調べる暇もないのが実情でしょう。しかし、支援策は申請など自らがアクションを起こさないと利用できません。
 
多くの市区町村では、ひとり親家庭や低所得者(ひとり親家庭に限らない)が利用できる支援策や相談窓口などの情報をまとめた「ひとり親家庭のしおり」などの小冊子を発行していますので、入手し活用することをお勧めします。
 
(参照)平成28年度全国ひとり親世帯等調査
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー