更新日: 2021.05.24 その他暮らし

「OEM」って何のこと? 実はこんな身近にもあります

執筆者 : 上野慎一

「OEM」って何のこと? 実はこんな身近にもあります
フレーズの一部を抜き出した略語は、あちこちで見られます。例えば「なるべく、はやくして」が「なるはや(で)」になり、英語ならば「As Soon As Possible」が「ASAP」といったところです。
 
ちなみに、ASAP(A.S.A.P)と聞いて松任谷由実のヒット曲をカバーした女性コーラスグループが思い浮かんでしまうのは、筆者のノスタルジーかもしれません。
 
では、「OEM」はどうでしょうか。何だか堅苦しそうで親近感もないイメージの言葉ですが、実は身近な事例だってあるのです。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

「OEM」とは

OEM(オーイーエム)とはビジネス・経済用語で、「Original Equipment Manufacturer」の略語です。製造メーカーが他社から委託されて、その相手先の名前やブランドの製品を製造すること、あるいはそうしたメーカーのことを意味します。
 
A社ブランドの商品だけど、実はB社が製造して納入したもの。例えば、クルマでも結構あることです。商品の企画や開発を共同で行っているかどうかなどの違いはありますが、日産「デイズ」(三菱自工が製造)、トヨタ「パッソ」(ダイハツが製造)、三菱自工「デリカD:2」(スズキが製造)ほか、事例はたくさん挙げられます。
 
クルマのような高額の消費財だけではなく、家電、アパレル、化粧品、食品などでも見られます。では、どうしてこのようなやり方をするのか。委託する企業のメリットは、工場などの生産設備に資金や人員を投じなくて済み、在庫リスクも減少して、納入された完成品の販売に専念できることなどです。
 
一方、製造を受託するメーカーにとっては、「買い手」が必ずいる状態です。在庫や販売に関するリスクや手間などを気にせず、生産に専念できるメリットがあります。
 

実は「カップ麺」もOEMだらけ

こんなOEMですが、身近な事例だってあります。例えば「カップ麺」もそうです。スーパーなどで、オリジナルの商品がメーカー商品に比べて安価で売られているケースは珍しくありません。
 
こうした商品は「プライベートブランド(PB)」と呼ばれ、スーパー等が商品企画したものですが、製造はまさにOEMでされています。中小の無名メーカーや海外に製造を委託しコストを抑えて安価を実現しているようなイメージもありますが、実は、国内有名メーカー製造のケースも少なくないのです。
 
そして、同じメーカーがプライベートブランドと自社商品の両方で似たようなものを製造しているケースも珍しくはありません。スーパー等の店頭で実際に購入してみた事例を、少しご紹介します。(価格は、2021年5月の税込販売価格事例)
 
(注)西友商品で「みなさまのお墨付き」の表記は省略(以下同)

<事例1> 

A   西友「京風白だし きつねうどん」 (日清製) 94円
B   日清「どん兵衛 きざみ揚げうどん」 120円

 

<事例2>

A   TOPVALU(イオン)「NOODLE しょうゆ」 (明星製) 95円
B   明星「チャルメラ しょうゆ」 120円

 

<事例3>

A-1 西友「特製ブレンド ソース焼そば」 (東洋水産製)94円
A-2 SEVEN&I PREMIUM「ソース焼そば」(東洋水産製)105円
B   東洋水産「マルちゃん ごつ盛りソース焼そば」110円

 
まずお断りしておきますが、それぞれのAとBはまったく同一の内容ではありません。容器の外観や形状、内容量、具材やトッピング材なども少し違いますし、味や麺の食感も人によって同じではないかもしれません。
 
しかし、カップ麺としてのトータルの味わいで大差はないと割り切るとすれば、それぞれAのプライベートブランドの安価さには、一定の魅力度がありませんか。
 
しかも、先述の「中小の無名メーカーや海外に製造を委託してコストを抑え安価を実現している」イメージに反して、パッケージの片すみにひっそりと記載されている「製造者」を実際に確認すると国内有名メーカーが多く、結構な意外感があります。
 

まとめ

OEMのメリットは先述しましたが、もちろんデメリットもあります。例えば、製造と販売のどちらかを「アウトソーシング」してしまっているので、委託側もメーカー側も企業として総合的な成長が期待しづらい面があるでしょう。また、メーカーが力をつけて将来的に委託企業のライバルになってしまうかもしれません。
 
しかし、販売サイドが商品を企画・開発するパワーと、製造サイドの技術や効率化の能力、この2つがうまくコラボレーションすれば、製造工程のアウトソーシングだけにとどまりません。
 
良いものを手頃な価格で手に入れられる。つまり、買い物の選択肢を豊かにしてくれることにもつながるのです。
 
今回は「カップ麺」での事例にほんの少し触れただけでしたが、いろいろな商品で見られるOEMには、かなりの奥深さが感じられます。
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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