更新日: 2021.07.06 子育て

ひとり親世帯の教育費はどう用意すれば? 母子世帯への支援で利用できるもの

執筆者 : 黒澤佳子

ひとり親世帯の教育費はどう用意すれば? 母子世帯への支援で利用できるもの
日本におけるひとり親世帯の経済的な困窮のニュースを見かけるたびに、胸が苦しくなります。
 
国や地方自治体の支援は整備されつつありますが、それでも問題なく生活が送れるレベルにはほど遠い状況の方がいらっしゃいます。なかでも、人生の3大資金(※1)の1つとされる教育費が、家計の困窮が影響をおよぼすことがあり、ひとり親世帯の大きな悩みとなる場合があります。
 
子どもの将来に影響を与えるとなると、そのために離婚に踏み切れない方も一定程度いると思われます。公的支援には限界があり、離婚協議中や別居状態では支援が受けられなかったり、支援を受けるまでの手続きが複雑であきらめてしまったりすることもあるでしょう。
 
高等教育無償化をはじめ、奨学金や各種貸付、児童手当等の公的支援だけでなく、大学等進学先の免除制度の利用などさまざまなパターンを考えてみましょう。
 
(※1)人生の3大資金=住宅資金、教育資金、老後資金
黒澤佳子

執筆者:黒澤佳子(くろさわよしこ)

CFP(R)認定者、中小企業診断士

アットハーモニーマネジメントオフィス代表
栃木県出身。横浜国立大学卒業後、銀行、IT企業、監査法人を経て独立。個別相談、セミナー講師、本やコラムの執筆等を行う。
自身の子育て経験を踏まえて、明日の子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現を願い、金融経済教育に取り組んでいる。
また女性の起業,事業承継を中心に経営サポートを行い、大学では経営学や消費生活論の講義を担当している。

https://www.atharmony-office.jp/

ひとり親世帯の実態、特に就労状況が大きな格差の要因に

ひとり親世帯といっても、父子世帯・母子世帯、離婚・死別、就労状況によって大きな差があります。
 
厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果」によると、父子世帯になった背景は、離婚が75.6%、死別が19.0%なのに対し、母子世帯になった背景は、離婚79.5%、未婚の母8.7%、死別8.0%です。
 
昭和58年当時は、父子世帯、母子世帯ともに離婚が約5割、死別が約4割であったことと比較すると、離婚によるひとり親世帯の割合が増加しており、なかでも死別以外の母子世帯が増加し、経済的困窮の原因の1つになっていると考えられます(※2)。
 
死別の場合は、遺族年金や生命保険(加入していれば)等は大きな保障となりますが、離婚・未婚による母子世帯の場合は養育費が受け取れないなど不確定要素が存在します。
 
養育費を現在も受給している母子世帯は24.3%であり、離婚時に養育費の取り決めをした母子世帯の、約半数が養育費を受け取れていないという実態があります(※3)。
(注)離婚時に養育費の取り決めをした母子世帯は42.9%
 
さらにDV被害などの場合は、相手と接触したくないこともあり、養育費の交渉すらできないこともあります。これらを踏まえると、ひとり親世帯といってもそれぞれ求められる支援内容が異なってきます。
 
また、経済的困窮の最大の要因は、母子世帯における低所得です。平成27年の母子世帯の平均年収は243万円にとどまります(※4)。
 
父子世帯の父の就労形態は、正社員・自営業が86.4%、パート・アルバイト(含む派遣社員)が7.8%なのに対して、母子世帯の母は、正社員・自営業が47.6%、パート・アルバイト(含む派遣社員)が48.4%と、非正規の割合が高くなります(※5)。
 
これが収入の差を生む要因となっており、母子世帯に対する正規雇用等の促進が非常に重要になるでしょう。
 
一方で、小さな子どもを抱えてフルタイムで働くのは容易ではなく、特に日本の労働環境ではまだまだ改善を要する問題が山積みなのも事実です。
 

公的支援:児童手当、奨学金、教育資金貸付等も利用する

国のひとり親世帯の支援策は、「子育て・生活支援」「就業支援」「養育費確保支援」「経済的支援」の4つの柱で行われています。
 
このうち「経済的支援」では児童扶養手当の支給や母子父子寡婦福祉資金の貸し付けが行われています。都道府県や市区町村には、自治体独自の制度が設けられている場合もあります。
 
その他にも、


(1)まずは児童手当をきちんと受け取れるようにする
(2)高等教育無償化を申請する
(3)進学先の授業料免除制度や特待生制度を利用する
(4)奨学金を利用する
(5)教育資金の貸し付けを利用する

などが考えられます。
 
(1)児童手当は、中学卒業まで支給され、子どもを養育するすべての保護者が対象となる手当なのですが、世帯主が申請した口座に振り込まれるので、別居や引っ越し等に伴い、手続きが必要になります。
 
毎月の金額は多くはないものの、所得制限にかからずに15歳まで受け取った場合は約200万円になりますので、大学進学などの際に役立てることができます。
 
(2)~(5)を考える上で重要なのは、教育資金としていくらかかるか、いつまでに用意すればよいかを計画することです。それには子ども本人の希望を踏まえ、早期の話し合いが必要になります。
 
ネット等で情報を収集するだけでなく、学校の先生や自治体窓口に問い合わせたり、進学先の学校にたずねたりするなど、情報の信頼度を上げていきましょう。
 
また、(4)奨学金は給付型と貸与型があり、貸与型を利用し、将来返済(※6)するのは学生本人です。
 
一方で(5)教育資金の貸し付けは、親の借り入れです。(4)奨学金を優先して利用する方は多いのですが、学生本人が将来返済する自覚をもち、返済可能な額を借りるようにしましょう。
 
(※6)国の奨学金である日本学生支援機構(JASSO)では、「返済」ではなく「返還」といいます。
 
離婚時に養育費を取り決め、最低限履行してもらうことが一番なのですが、それが問題なくできるくらいであれば離婚には至らなかったかもしれないわけで、二の手・三の手を考えておくことで、少しでも子どもの将来を守ってあげたいですね。
 
出典
(※2)厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果/1 ひとり親世帯になった理由別の世帯構成割合」
(※3)厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果/17 養育費の状況」
(※4)厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果/16 ひとり親世帯の平成27年の年間収入」
(※5)厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果/7 調査時点における親の就業状況」
 
執筆者:黒澤佳子
CFP(R)認定者、中小企業診断士

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