更新日: 2021.07.15 暮らし

【おさらい】安い時期は長続きしなかった。ガソリン価格はどんな構造になっているの?

執筆者 : 上野慎一

ガソリン価格が2年8ヶ月ぶりの高値となった。今年7月8日にこうした報道がされました。
 
コロナ禍で世界中のヒトやモノの動きが大きく制限され「コロナショック」といわれる状況のもとで、原油価格が史上初めてマイナスを記録したと騒がれたのが、昨年4月のことでした。
 
それから、わずか1年数ヶ月。コロナ禍の収束もまだまだ見通せない中で、こうした高値更新の話は何となくしっくりきませんが、ガソリン価格はどんな構造になっているのでしょうか。
 
上野慎一

執筆者:

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

上野慎一

執筆者:

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

コロナショックで大きく変動した原油価格

まずは、原油価格の大きな変動のおさらいです。
 
国際市場の代表的な指標「ニューヨーク原油」(テキサス産軽質油=WTI)の先物価格(1バレル≒159リットル当たり、米ドル表示)は、2018年と2019年、そして2020年3月6日までは高値70ドル台、安値40ドル台の幅の中で推移していました。
 
ところが、コロナショックによる経済の大低迷と需要大幅減のため、その後は30ドル台、20ドル台、10ドル台と急落し、ついに4月20日はマイナス37.63ドル(終値)を記録。
 
消費の激減に原油減産が間に合わず、在庫が急増して貯蔵施設が切迫し、「おカネを付けるから持っていって」という投げ売りになったのです。こうした異常事態は、一時的なものでした。
 
その後は落ち着きを取り戻し上昇基調に転じて、今年7月6日には一時77ドル近い高値を記録しています。
 

ガソリン価格の構造は、どうなっているの?

このように原油価格は大きく変動しましたが、生活に身近な石油製品のガソリン価格はどうだったのか。資源エネルギー庁の「給油所小売価格調査」(※1)を見てみましょう。
 
レギュラーガソリンの価格(全国集計、1リットル当たり)はここ数年で、最低が124.8円(2020年5月11日調査)。先述の「2年8ヶ月ぶりの高値」は157.5円(今年7月5日調査)で、5週連続の値上がりとなっています。
 
一時は、以前の3分の1や4分の1といった水準まで短期間に急下落していた原油価格。一方、原油から作られるガソリンの価格のふれ幅はそこまで大きくはありません。どうしてでしょうか。
 
先述のふれ幅も参考に、レギュラーガソリン小売価格を仮に高値154円、安値121円(いずれも消費税込み)としてみた場合の価格構成を示したのが、【図表1】です。
 


 
消費税課税前の段階でも、3種類の税だけで56.6円。消費税も含めて税金が占める割合は、小売価格154円のうち約46%、121円ならば実に約56%にもなるのです。
 
また【図表1】に示す本体価格のうち「原油コスト」が、海外原油価格の影響を直接受けます。その価格変動をまとめた財務省貿易統計の公表値をビジュアルに図表化した東京都の資料(※2)が、【図表2】です。
 

 
原油価格の2020年の底値は5月から6月で、1キロリットル当たり1万7000円弱(つまり1リットル当たり17円くらい)の水準でした。また、最近の原油価格の上昇が反映された数値は、1リットル当たり45円から46円くらいであることが分かります。
 
【図表1】で、右側の高値=1リットル当たり小売価格154円(消費税込み)の原油コストを仮に上記の46円にすると、精製と流通の各マージンが37円ほど加わって、各課税前の本体価格が83.4円となります。
 
一方、左側の安値=同121円での原油コストを仮に上記の17円とすると、原油コストが30円弱減った結果が、小売価格約30円の下落とほぼ一致します。
 
つまり、原油価格が3分の1くらいに急落したとしても、ガソリン小売価格はせいぜい数十円しか下がりません。
 
3種類の税金が定額でかかり、精製や流通のマージンも原価に比例するよりも定額に近いかかり方なのでしょう。消費税抜き価格のうち(大きく変動することもある)原油価格が占める割合は、そもそもかなり少ないのです。
 
また、【図表1】を見ると3種類の税金が含まれる消費税抜き価格に対して、さらに消費税が課税されています。酒税やたばこ税もそうですが、“税金に対してさらに税金がかかる”という二重課税のような状態なのは、以前にも指摘したとおりです。
 

まとめ

ガソリン価格がコロナ禍以前の高値水準を超えたというニュースは、ワクチン接種が進んでいってヒトやモノの動きが今後活発になっていくという、コロナ禍収束に向けた歩みの先取りなのかもしれません。
 
しかしそれ以上に、ガソリンは原油価格相場にはあまり左右されずに重層的な課税で“高止まり”したような価格構造なのだ。こちらのほうを改めて強く思い知らされます。
 
[出典]
(※1)経済産業省資源エネルギー庁「石油製品価格調査」~<調査結果一覧>のエクセルファイルを参照
(※2)東京都「東京くらしWEB」~「原油価格の推移」
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士