更新日: 2021.06.28 子育て

子どもの養育はいくらかかる? 教育費とは別で考えよう!

執筆者 : 岩永真理

子どもの養育はいくらかかる? 教育費とは別で考えよう!
子どもの教育費を準備するために学資保険などに加入する親が多い一方、子どもの養育(生活)にかかる費用を念入りに準備する家庭は、意外と少ないのではないでしょうか。
 
同じ子どもにかかる費用でも、生活にかかる費用は教育費に比べて少額と思われがちですが、実はそうではありません。子どもが1人増えると生活費はどれだけ増える可能性があるのかを認識したうえで、準備をしていくと安心です。
岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

子どもの養育にかかる費用とは?

内閣府「インターネットによる子育て費用による調査報告書 平成22(2010)年3月」おおよび日本学生支援機構「平成30(2018)年度 学生生活調査結果」によると、未就園児から大学までの間で、教育費や子どものための貯蓄などを含めた1年あたりの子ども1人にかかる子育て費用(全国平均)は、平均133万9741円です。
 
ここから、未就園児から大学までの1年あたりの学校関連費用などの70万3051円を差し引くと、1年あたりの子ども1人の養育費概算は63万6691円になります(表章単位未満を四捨五入しているため、総数の内訳の合計とは必ずしも一致しない場合があります)。
 
ただし、内閣府のデータは2010年と古いものなので、総務省統計の消費者物価指数をもとに、データ取得時の2010年から2020年までの物価上昇率を5.3%として加味する(※1)と、1年あたりの子ども1人の養育費概算は、67万435円になります。
 

 
大学生になると、教育費が上昇しているにもかかわらず、養育費が中・高校生時より下がっているのは、違うデータを用いていることもありますが、アルバイトなどにより、おこづかい等を自分で賄えることも想定されます。
 
内閣府調査の養育費に含まれる費目は、以下のとおりです。
 

A.衣類・服飾雑貨費
B.食費
C.生活用品費
D.医療費
E.子どもの携帯電話料金
F.おこづかい
G.お祝い行事関係費
H.レジャー・旅行費

 
(参考:内閣府「インターネットによる子育て費用に関する調査 報告書(平成22年3月)」(※2)、日本学生支援機構「平成30年 学生生活調査結果」(※3))
 

東京23区在住者や高年収世帯は、より多くの子育て費用がかさむ傾向あり

内閣府の同調査では、未就園児から中学生までのどの就学区分でも、東京23区の年間子育て費用(学校関係費用や子どものための貯蓄を含む)が突出しており、就学区分が高くなるほどその差が広がる傾向があります。
 
東京23区の1年あたりの子ども1人の子育て費用は、概算で162万7379円となります。東京23区の学校関連費用は調査で公表されていないので、仮に全国平均と同程度の学校関連費用がかかるとすると、東京23区の1年あたりの子ども1人の養育費はおよそ104万円になります。したがって、物価上昇率調整後の1年あたりの子ども1人の養育費は、およそ110万円になります。
 
また、世帯年収が高くなるにつれて、子育て費用(学校関係費用や子どものための貯蓄を含む)を多くかける、あるいはかかる傾向があります。例えば、「中学生」1人あたりの年間子育て費用は、年収400~500万円未満の世帯では121万8401円ですが、年収1000万円以上の世帯では、228万7276円になっています。
 
(参考:内閣府「インターネットによる子育て費用に関する調査 報告書(平成22年3月)」(※2))
 

22年間の1人あたり養育費の合計は?

以下の表は、就学区分別養育費の合計です。
 

 
物価上昇率を加味した1人あたりの養育費を、それぞれの就学年数で掛けると、未就園児から大学(自宅通学と仮定)卒業までの22年間の養育費合計は、約1463万となります。これは、保育園から大学まですべて公立の学校へ通う学費(約1017万円)や、中学まですべて公立で、高校、大学のみ私立に行く学費(約1388万円)すら上回る金額です。
 
学費に関しては、文部科学省の平成30(2018)年度のデータ(参考資料として下記掲載)を参照しています。
 
したがって、子どもの養育費は教育費以上にかかるといっても過言ではありません。教育費であれば、通う学校をできるだけ公立学校にするなど、節約する方法も考えられます。万一家庭内ですべて準備できない場合には、奨学金や教育ローンを利用する方法もありますが、借り入れを前提として何も準備しないというわけにもいきません。
 
また、養育費は子どもの生活にかかる費用なので、仮にレジャー・旅行費用を削減するなどしても限界があるかもしれません。養育費は予想以上にお金がかかるということを留意しましょう。

(参考:文部科学省「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」(※4)、文部科学省「平成30年度子供の学習費調査の結果について」(※5))
 

まとめ

子どもにかかる費用は、教育費を準備できれば安心しがちですが、実際にはそれで済むわけではありません。子どもにかかる養育費(生活費)は、教育費以上にかかるということを認識しておかなければなりません。
 
養育費もかなりの金額がかかることを認識していないまま過ごしていると、教育費を準備できていたはずなのに、なぜか毎月家計が赤字になってしまうという悪循環に陥りかねません。深刻な赤字家計になる前に、場合によっては、教育費とは別枠で準備や分離をしておく必要もあるかもしれません。
 
例えば、給与天引きなどで着実に貯金をしていけば、子どものためのお金を作る手段になるでしょう。
 
出典
(※1)総務省「2015年基準 消費者物価指数」
(2015年を100とした際に、2010年が96.5、2020年は101.8、その差が5.3%)
(※2)内閣府「インターネットによる子育て費用に関する調査 報告書(平成22年3月)
(※3)日本学生支援機構「平成30年 学生生活調査結果」
(※4)文部科学省「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
(※5)文部科学省「平成30年度子供の学習費調査の結果について」
 
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士

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